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「カタログギフト」倒産の裏に葬儀の簡素化あり

結婚式で急成長の吉田、需要の変化に対応できず
 かつては引き菓子や食器などの現物が主流だった結婚式の引き出物だが、返礼用のギフトカタログが増え始めた。ほとんどの方が、結婚式で一度はもらったことがあるだろう。吉田は、その需要に目をつけ売り上げ規模を伸ばしてきた。

 もともとはベルトメーカーとして百貨店や量販店向けに販売してきたが、25年ほど前にカタログギフト向けにも販売を開始、吉田の主力事業となっていった。

 取扱商品は、ベルトを中心に手袋、バッグなどの革小物や、サングラスなどの有力ブランドのライセンシーアイテムのほか、自社ブランドも展開。2006年2月期に売上高約16億7000万円を計上した。

 しかし、ここ数年はカタログギフトにおける商品の需要に変化がみられるようになった。それまでの主流だったファッション・雑貨に代わり、食品や体験型ギフトが人気を集めるようになった。少子化によるウエディングの減少もあり、想定以上に需要が急減した。

 高齢化が進む中で葬儀市場の拡大も期待されたが、逆に葬儀の簡素化により市場が縮小。17年2月期には売上高が約10億7800万円に減り、滞留在庫の廃棄損・評価損などから最終赤字に転落していた。

 厳しい業況が続く中で資金繰りは悪化。年末年始には決済に支障を来す事態となり、信用不安は瞬く間に広まった。こうした状況から事業の継続を断念し1月18日に東京地裁へ自己破産を申請、翌19日に破産手続き開始決定を受けた。

 いち早くカタログギフトの需要を捉えて成長を遂げたが、その後の変化への対応が遅れた。かつての成功体験に縛られていなかったか。

 カタログギフト部門の売上比率は年々下がっていたものの、それでも17年2月期末時点で約66%と売り上げの半分以上を占めていた。事業のバランスが取れていたなら結果はもう少し違っていたかもしれない。
(文=帝国データバンク情報部)
<会社概要>
吉田(株)
住所:東京都台東区元浅草2−3−4
代表:吉田仁之氏
資本金:4000万円
年売上高:約10億7800万円(17年2月期)
負債:約14億6000万円
債:約11億1400万円
日刊工業新聞2018年2月20日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
返礼ビジネスのニーズはあるはず。逆に新しいビジネスも生まれそう。

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