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15年におよぶ粉飾決算で倒産した広告代理店、その意外な内部告発とは?

ディー・エム・シー、顧客の販促品を無断で廃棄
  ディー・エム・シーは、1984年1月創業の広告代理業者。マーケティング事業やポスティング事業、プロモーション事業を手がけていた。中でも街頭、店頭で宣伝活動を行うプロモーション事業は、代表が以前に勤務していた企業の人脈により築き上げたもので、たばこ大手や洗剤・家庭用品メーカーに営業基盤を有する基幹事業だった。

 2009年からは地上デジタル放送移行に伴うキャンペーンの受注を得て売り上げは急拡大し、12年6月期に売上高約17億円を計上。その後は加熱式たばこの販売促進キャンペーンを受注することで一定の売り上げ規模を維持していた。

 優良企業に見えた同社だったが、内情は大きく異なっていた。破産申立書によると、同社の経営は役員報酬を含む人件費の負担が重く営業損失が常態化、これを隠すため粉飾決算に手を染めた。粉飾決算の期間は15年におよび、売り上げの前倒しや架空計上、貸付金残高の過少計上などを行っていた。13年ほど前からクライアントのコスト意識の高まりから1―2年ごとに再コンペ、競争入札が行われることが通例となり、利益率は年々低下していた。

 ただ、最終的な倒産の直接的な要因は大口顧客の取引解消だ。17年に入り、突如として得意先に発注を打ち切られた。代表から関係者への説明によると、一部社員が本来はプロモーションとして配布すべき販促品を無断で廃棄。その廃棄現場の証拠を別の社員が押さえ取引先に告発したことで信用は失墜した。

 販促品の廃棄は契約違反と言われても仕方ない事態であり、取引解消は当然と言える。長年にわたる収益悪化を粉飾決算でしのいできたものの、最後は内部告発により自己破産申請を余儀なくされ、17年11月27日に破産手続き開始決定を受けた。長年にわたり粉飾決算を続けてきた隠蔽(いんぺい)体質が生んだ結末だった。
(文=帝国データバンク情報部)
<企業情報>
(株)ディー・エム・シー
住所:大阪市中央区内淡路町2−1−7
代表:筒井康博氏
資本金:3000万円
年売上高:約10億1700万円(17年6月期)
負債:約11億1400万円
日刊工業新聞2018年2月6日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
本件に関係なく広告代理店、受難の時代。口をそろえて「コンサル強化」と言っているがそんな一朝一夕にはカルチャーは変わらないのではないか。それはオールドメディアや企業の宣伝部も同じことが言える。

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