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はれのひ、てるみくらぶに見る「前金ビジネス」勘違いの怖さ

月次決算を行うことは、毎月きちんと健康診断を行うようなもの
 はれのひ株式会社による被害総額は2億円以上と言われている。2018年の成人式の被害のみならず、19年以降に成人式を迎える利用者ですでに支払いを済ませた方も多くいるようだ。成人式を楽しみにしていたお客さんのことを考えるとやり切れない気持ちになる。

 はれのひの財務状況だが、16年9月期の決算は約3億6000万円の赤字、約3億2000万円の債務超過であったと言われている。また取引先の1社は、「17年から売掛金が滞留してきたため取引縮小に努めていた」とコメントしているそうだ。資金繰りが相当悪かったことは予想がつく。

 株式会社てるみくらぶの時もそうだが、前金でお金をもらうビジネスは経理がしっかりしていないととても危険だ。前金でもらうことによって「たくさんお金がある」と勘違いしてしまうからである。

 ここで資金繰りについて、単純化された例を出して考えてみたいと思う。

 売掛金回収も買掛金支払いも月末締め翌月末、というような会社の場合。売掛金額300万円、買掛金額100万円だとすれば、200万円の「使えるお金」が得られる。その200万円で従業員給与を払ったり、経費を精算したり、借入金を返済したり、設備投資をしたりする。資金の流れは読みやすい。

 しかし、前金ビジネスの場合、2か月前に300万円を前金でもらったとして、無計画に役員賞与を出したり交際費を使いすぎたりベンツやマンションを買ったりすれば、買掛金100万円を支払ったり、従業員に給与を払ったりすることができなくなる。

 「たくさんお金がある」という錯覚は浪費に結びつく。債務はあっという間に積もる。

 はれのひは、恐らく月次決算や資金繰りを行ってこなかったのではないだろうか?

 月次決算を行い、きちんと数字の分析ができていれば、このような事件を起こさなかったのではないだろうか?

 中小企業では、日々の仕事に追われて、経理が後回しになっている会社も少なくない。しかしながら、それはとても危険なことであると言わざるを得ない。

 月次決算を行うことは、毎月きちんと健康診断を行うようなものだ。健康的な経営を目指してみませんか?

(文=日本経営士会 堺剛)
日刊工業新聞2018年2月1日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
経営状況は消費者からは容易に見えず、まして未成年が自分で選ぶ場合が多いような振袖レンタルサービスでは見極めは非常に難しいと思います。

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