2018年は生産性改革元年?労働生産性の課題とは
キッコーマン茂木名誉会長が語る
日本生産性本部の茂木友三郎会長(キッコーマン名誉会長)は10日、年頭にあたり記者会見し、2018年を「生産性改革元年と位置づける」と決意を示した。中でも高い成長余力を持ちながら、国際的には低迷するサービス産業の労働生産性向上を重視する姿勢を鮮明にした。神津里季生副会長(連合会長)は春闘本番を目前に「(経済の)好循環に向けた生産性が本来の姿」と指摘し、3年目となる“底上げ”春闘に挑む考えを示した。
一方、“安倍一強”の政治に対して茂木会長は「自民党の中でもう少し議論があってもいい」と苦言を呈した。神津副会長も政権交代可能な責任野党の登場を渇望。民主党政権を振り返り「掲げた理念の方向性は正しく(税と社会保障の一体改革で一致した)3党合意は国のあり方を決める第一歩を踏み出したはずだが結果、それが引き金となって民主党がばらばらになったツケはあまりにも大きい」と嘆いた。
その上で、神津副会長は「(議論は必要だが分散しては元も子もないという)厳しい視線が民主党が民進党に至る過程や昨年の衆院解散前夜でも、改まらなかったことは痛恨の極み」と珍しく語気を強めた。
―大型減税を決めた米トランプ政権の今後をどう見ていますか。
「今回の法人減税が景気刺激策となる一方で、トランプ大統領の熱狂的な支持層にどう作用するかは不透明。共和党の政権運営も含め、秋の中間選挙までは注視が必要だ」
―国内に目を転じると、安倍晋三政権は「人づくり革命」と「生産性革命」を柱とする2兆円規模の経済政策を決定しました。
「重視しているのはサービス産業の生産性向上。我々が調査した日米比較によると、個人向けサービスの多くの分野で日本は米国に比べサービス品質が高いにもかかわらず、価格差として反映されていない。『おもてなし』に象徴されている高い品質をそれに見合った価格で提供することが生産性向上につながる」
―宅配業界の値上げの動きは象徴的だと思います。
「経営者として立派な判断だと思う。ユーザーの反応を過度に恐れるのではなく、きちんと説明し理解を求める努力を経営者は怠ってはならない」
―一定の品質やサービスには、それに見合った対価を支払うという消費者側の意識転換も問われます。
「まさにこうした機運を醸成したい」
―労働生産性のカギを握る付加価値向上にはどう取り組むべきですか。
「米国では価格競争を『カット・スロート・コンペティション』(喉をかき切るような熾(し)烈な競争)と表現するように最終手段と位置づける。他方、日本では安易に価格競争に陥りすぎではないか。かつてダイエーの中内功さんが『価格破壊』を打ち出し、流通コストの削減を値下げの形で消費者に還元したことは正しかった。だが時代は変わった。経営者は自らが生み出した付加価値を毀損(きそん)することにもっと慎重になるべきだ」
―「プレミアムフライデー」は特別感のある消費を促す官民キャンペーンです。
「集客が見込めるとなるとつい、安売りに走るのは日本の悪いところだ。価格優位性だけでなく購買意欲を刺激するような魅力ある商品開発やサービスにもっと知恵を絞りたい」
「消費喚起から生産性向上に至るあらゆる施策を政府に主導される現状は、あまりにだらしない。2018年は民間の奮起に期待する」
一方、“安倍一強”の政治に対して茂木会長は「自民党の中でもう少し議論があってもいい」と苦言を呈した。神津副会長も政権交代可能な責任野党の登場を渇望。民主党政権を振り返り「掲げた理念の方向性は正しく(税と社会保障の一体改革で一致した)3党合意は国のあり方を決める第一歩を踏み出したはずだが結果、それが引き金となって民主党がばらばらになったツケはあまりにも大きい」と嘆いた。
その上で、神津副会長は「(議論は必要だが分散しては元も子もないという)厳しい視線が民主党が民進党に至る過程や昨年の衆院解散前夜でも、改まらなかったことは痛恨の極み」と珍しく語気を強めた。
日刊工業新聞2018年1月11日
【茂木会長インタビュー】価格競争より知恵絞れ
―大型減税を決めた米トランプ政権の今後をどう見ていますか。
「今回の法人減税が景気刺激策となる一方で、トランプ大統領の熱狂的な支持層にどう作用するかは不透明。共和党の政権運営も含め、秋の中間選挙までは注視が必要だ」
―国内に目を転じると、安倍晋三政権は「人づくり革命」と「生産性革命」を柱とする2兆円規模の経済政策を決定しました。
「重視しているのはサービス産業の生産性向上。我々が調査した日米比較によると、個人向けサービスの多くの分野で日本は米国に比べサービス品質が高いにもかかわらず、価格差として反映されていない。『おもてなし』に象徴されている高い品質をそれに見合った価格で提供することが生産性向上につながる」
―宅配業界の値上げの動きは象徴的だと思います。
「経営者として立派な判断だと思う。ユーザーの反応を過度に恐れるのではなく、きちんと説明し理解を求める努力を経営者は怠ってはならない」
―一定の品質やサービスには、それに見合った対価を支払うという消費者側の意識転換も問われます。
「まさにこうした機運を醸成したい」
―労働生産性のカギを握る付加価値向上にはどう取り組むべきですか。
「米国では価格競争を『カット・スロート・コンペティション』(喉をかき切るような熾(し)烈な競争)と表現するように最終手段と位置づける。他方、日本では安易に価格競争に陥りすぎではないか。かつてダイエーの中内功さんが『価格破壊』を打ち出し、流通コストの削減を値下げの形で消費者に還元したことは正しかった。だが時代は変わった。経営者は自らが生み出した付加価値を毀損(きそん)することにもっと慎重になるべきだ」
―「プレミアムフライデー」は特別感のある消費を促す官民キャンペーンです。
「集客が見込めるとなるとつい、安売りに走るのは日本の悪いところだ。価格優位性だけでなく購買意欲を刺激するような魅力ある商品開発やサービスにもっと知恵を絞りたい」
「消費喚起から生産性向上に至るあらゆる施策を政府に主導される現状は、あまりにだらしない。2018年は民間の奮起に期待する」
日刊工業新聞2018年1月9日