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メガバンクのデジタル化、顧客にとって良いこと悪いこと

三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)国部毅社長インタビュー
 少子高齢化や低金利の長期化のほか、金融とITを融合したフィンテックが台頭する金融業界。経営環境は厳しさを増し、既存のビジネスモデルからの脱却を迫られている。環境認識や経営課題などを三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の国部毅社長に聞いた。

 ―経営環境の現状認識は。
 「国内では少子高齢化が進み、マイナス金利による低金利が長期化している。国際金融規制の強化もあって今後も厳しい収益環境が続く。加えてデジタル化の流れがある。人工知能(AI)やロボティックプロセスオートメーション(RPA)はすべての産業を大きく変えるインパクトを持つ。当社としてもビジネスモデルを変えないと生き残れない」

 ―ビジネスモデルをどう変えますか。
 「新規ビジネスの創出と業務の効率化を進める。新規ビジネスでは収益化できるものと新たなプラットフォームの構築につながるものに力を入れる。既に生体認証サービスと、スマートフォンによる電子バーコード決済サービスを提供する子会社をそれぞれ設立し事業化している。外部の力も取り入れながら新たなサービスを次々生み出していく」

 ―業務の効率化は。
 「業務を技術に置き換えられる時代になった。RPAで(2019年度までに)1500人分の業務量が削減できる。生産性が高くない業務が一部である。浮いた余力は付加価値の高い仕事に充ててもらう。従業員の働きがいを高める。働き方改革にもつなげる」

 ―中期計画では資本・資産・経費の効率性向上を掲げています。
 「業務の効率化は悪化傾向にある経費率を反転させるという側面もある。効率性と収益性が高いグループにするのが中期計画の考え方だ。そのツールとして技術を活用する」

 ―昨年4月に事業部門制を導入しました。
  「グループとしての事業展開力を強化しようと事業部門制を導入した。グループ各社の役職員にグループ目線がかなり浸透した。一部で成果も出ている。手応えはかなりある。ただ道半ばだ。より高いレベルのグループ経営をするにはグループ会社間で互いの業務の理解を深めないといけない。そのために人材交流を深める」

 ―今年の経済見通しは。
 「日本も世界も緩やか回復過程をたどるだろう。地政学リスクや各国の金融政策当局のかじ取りによって市場が短期的に変動するリスクはある」

【記者の目】
 今年のキーワードは「デジタルトランスフォーメーション」という国部氏。昨春に傘下の銀行頭取からSMFG社長に就任して以降グループ経営をけん引し、グループ内再編など矢継ぎ早に手を打った。デジタル化はあらゆる金融グループにとって重大な経営マターとなっており、グループ経営だけでなくデジタル戦略の実行力にも注目したい。
(文=池田勝敏)

 
日刊工業新聞2018年1月5日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
 メガバンクは長年、いわゆるユニバーサルバンクを夢見てきた。今はオプトアウト方式で顧客情報が銀行・証券・信託などで共有できるようになり、営業力は増した。そのため、子会社間での協働を効果的に進めるための管理会計や業績評価制度、そして人材交流などに磨きをかけるだろう。しかし、逆に顧客から見ると、一つの銀行グループに全てを握られてしまい、他の金融機関の門を叩きにくい状況になってしまったことを意味する。この利益相反構造をどう考えるかこそ、金融機関の経営環境を云々する前に議論されるべき点の筈だ。

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