【2018】経営者たちが新成人に薦めるこの一冊
**『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・L・カーソン著
●筑波大学名誉教授・白川英樹氏
『沈黙の春』を書いたレイチェル・L・カーソンの遺作だ。自然の美しさや、その感動を描いており、自然を感じる心が養われる。これから社会に出る新成人への教訓めいたものはない。叙情的で感性を育てる一冊だ。
レイチェル・L・カーソンの作品は現役の頃から読んでいたが、ノーベル賞受賞後にこの本に出会い、皆に薦めている。今も毎年、子どもへの接し方に生かしてもらうため、ソニー教育財団の科学教室「科学の泉」の指導員に読んでもらっている。
写真が美しく、文章は易しい。スラスラと読め、10分とかからない。新成人にはぜひ原書を読んでほしい。
●三菱地所社長・吉田淳一氏
上杉鷹山は若くして藩主の立場になり、古い慣習に縛られた年上の人間に囲まれた中で自分なりに賛同者を増やし、困難を乗り越えていった。その姿は若い人たちがいろいろな困難に接した時、すごく参考になると思う。有名な言葉「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」も示唆に富む。
我々の若い頃は欧米の成功例に近づくことを目指した。ある意味で成長ロードを築きやすかった時代だったが、これからの時代は新たな形で目標を定め、突き進んでいかなければならない。若い人には失敗を糧にするという意味でも参考にしてほしい。
●明治安田生命保険社長・根岸秋男氏
テニスプレーヤーの松岡修造氏が、中小企業の営業部長に就任し会社を再建するというフィクションだ。選手としての経験に基づくピンチの克服方法やモチベーションの上げ方を周囲に伝え、業績改善をリードしていく。諸課題に立ち向かうに当たり、「情熱」だけでなく「理性」の裏打ちを求めていることに強く共感した。
私の座右の銘は「有情活理」。理屈が正しくても情がなければ人は動かない。情があることで理屈は活きると言う意味だ。本書はこの「有情活理」をうまく表現している。社会との関わりが深まる新成人にとって、リーダーシップを学ぶ一冊になればうれしい。
●三井造船社長・田中孝雄氏
「SFの父」と称される著者が、忙しい現代人に向けて書き下ろした作品。生物の起源から1960年代までを物語風につづり、文明の変遷を俯瞰(ふかん)的にとらえている。複雑な世界史をかみ砕き、読みやすさにこだわった一冊だ。
我々は歴史を検証することで知識を習得、未来を生きる糧としている。まずは歴史を概観し、人類発展の経緯を理解することが肝要ではないか。若い人にも、一度は歴史をひもといてもらいたい。
一度の人生で得られる経験はそんなに多くはない。他人の経験を疑似体験できる読書は、自身の人生をより豊かなものにしてくれるだろう。
●ジーテクト社長・高尾直宏氏
一代で松下電器産業(現パナソニック)グループを創り上げ、経営の神様と呼ばれた故・松下幸之助氏の言葉をまとめた本。氏の長年の経験に裏打ちされた仕事哲学は30年以上経た今もなお色あせず、読み返すたびに新たな発見を与えてくれる、私の座右の書だ。
「何事もやる以上は精魂をこめて身につくようにやる」「基本となるのは熱意」など、若い社会人の心得としても学ぶべき部分は多い。新成人にもぜひ読んでほしい一冊だ。
人生の局面でどう考え、どう行動すべきか迷ったときに読み返してみてほしい。状況を打開するヒントが随所にちりばめられているはずだ。
●アプライドマテリアルズジャパン社長・中尾均氏
夏目漱石やドストエフスキーといった古今東西の作家や思想家ら100人の著書の一節に対する、哲学者である中村雄二郎氏の考察が並べられている。それぞれの本の要約ではないため、自分で考える力や物事への探究心を学び取ってほしい。
例えば、技術に関する部分が印象に残っている。世の中に役立つ技術を突き詰めると、必ずしも全てがよい方向に行くのではなく、デメリットが生じてしまう場合もあるといった内容だ。エンジニアは技術を開発するだけでなく、その結果どのようなことが起こるかまで見据えることが求められる。ぜひ若手技術者に読んでほしい一冊だ。
●JSR社長・小柴満信氏
さらに発達したインターネットがもたらす“もう一歩先の世界”を、足元にある12の潮流から読み解いた一冊だ。「物事の価値はモノからコトに変わる」「シェアが当たり前になり、所有という概念は時代遅れになる」など、技術の進化を感じ取ることができる。共感する部分も多い。
これからやってくるであろう社会の姿を、具体的なイメージとして描き出す材料にしてほしい。その上で社会との大きなつながりも意識し、それぞれの位置付けにも思いを巡らせてもらえれば。今の20代は発想が柔軟で、社会で役立ちたいという意識も高い。その感性や個性が生きるよう私たちも努めていく。
●東京都中小企業振興公社多摩支社長・小池喜春氏
主人公は15歳の旧制中学の少年。純粋な目で世の中を見ており、学友や叔父との交流を通してさまざまな人たちの痛みを知り、考え、成長していく。
初めて読んだのは小学生の時。以来、20歳、30歳と人生の節目で再び手に取ることが多かった。その度に書籍を通して自分は本当に何をやりたいのか、生き方を考えるきっかけになった。
戦前の1937年に発刊されたが、2017年には漫画化され若い世代にも読まれている。時代が変わっても共通する普遍的な価値があるのではないだろうか。若い人たちには書籍を通し、自分の生き方を考えるきっかけにしてほしい。
●筑波大学名誉教授・白川英樹氏
『沈黙の春』を書いたレイチェル・L・カーソンの遺作だ。自然の美しさや、その感動を描いており、自然を感じる心が養われる。これから社会に出る新成人への教訓めいたものはない。叙情的で感性を育てる一冊だ。
レイチェル・L・カーソンの作品は現役の頃から読んでいたが、ノーベル賞受賞後にこの本に出会い、皆に薦めている。今も毎年、子どもへの接し方に生かしてもらうため、ソニー教育財団の科学教室「科学の泉」の指導員に読んでもらっている。
写真が美しく、文章は易しい。スラスラと読め、10分とかからない。新成人にはぜひ原書を読んでほしい。
『小説 上杉鷹山』童門冬二著
●三菱地所社長・吉田淳一氏
上杉鷹山は若くして藩主の立場になり、古い慣習に縛られた年上の人間に囲まれた中で自分なりに賛同者を増やし、困難を乗り越えていった。その姿は若い人たちがいろいろな困難に接した時、すごく参考になると思う。有名な言葉「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」も示唆に富む。
我々の若い頃は欧米の成功例に近づくことを目指した。ある意味で成長ロードを築きやすかった時代だったが、これからの時代は新たな形で目標を定め、突き進んでいかなければならない。若い人には失敗を糧にするという意味でも参考にしてほしい。
『修造部長 もし松岡修造があなたの上司になったら』松岡修造監修
●明治安田生命保険社長・根岸秋男氏
テニスプレーヤーの松岡修造氏が、中小企業の営業部長に就任し会社を再建するというフィクションだ。選手としての経験に基づくピンチの克服方法やモチベーションの上げ方を周囲に伝え、業績改善をリードしていく。諸課題に立ち向かうに当たり、「情熱」だけでなく「理性」の裏打ちを求めていることに強く共感した。
私の座右の銘は「有情活理」。理屈が正しくても情がなければ人は動かない。情があることで理屈は活きると言う意味だ。本書はこの「有情活理」をうまく表現している。社会との関わりが深まる新成人にとって、リーダーシップを学ぶ一冊になればうれしい。
『世界史概観』H・G・ウェルズ著
●三井造船社長・田中孝雄氏
「SFの父」と称される著者が、忙しい現代人に向けて書き下ろした作品。生物の起源から1960年代までを物語風につづり、文明の変遷を俯瞰(ふかん)的にとらえている。複雑な世界史をかみ砕き、読みやすさにこだわった一冊だ。
我々は歴史を検証することで知識を習得、未来を生きる糧としている。まずは歴史を概観し、人類発展の経緯を理解することが肝要ではないか。若い人にも、一度は歴史をひもといてもらいたい。
一度の人生で得られる経験はそんなに多くはない。他人の経験を疑似体験できる読書は、自身の人生をより豊かなものにしてくれるだろう。
『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下幸之助著
●ジーテクト社長・高尾直宏氏
一代で松下電器産業(現パナソニック)グループを創り上げ、経営の神様と呼ばれた故・松下幸之助氏の言葉をまとめた本。氏の長年の経験に裏打ちされた仕事哲学は30年以上経た今もなお色あせず、読み返すたびに新たな発見を与えてくれる、私の座右の書だ。
「何事もやる以上は精魂をこめて身につくようにやる」「基本となるのは熱意」など、若い社会人の心得としても学ぶべき部分は多い。新成人にもぜひ読んでほしい一冊だ。
人生の局面でどう考え、どう行動すべきか迷ったときに読み返してみてほしい。状況を打開するヒントが随所にちりばめられているはずだ。
『知の百家言』中村雄二郎著
●アプライドマテリアルズジャパン社長・中尾均氏
夏目漱石やドストエフスキーといった古今東西の作家や思想家ら100人の著書の一節に対する、哲学者である中村雄二郎氏の考察が並べられている。それぞれの本の要約ではないため、自分で考える力や物事への探究心を学び取ってほしい。
例えば、技術に関する部分が印象に残っている。世の中に役立つ技術を突き詰めると、必ずしも全てがよい方向に行くのではなく、デメリットが生じてしまう場合もあるといった内容だ。エンジニアは技術を開発するだけでなく、その結果どのようなことが起こるかまで見据えることが求められる。ぜひ若手技術者に読んでほしい一冊だ。
『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』ケヴィン・ケリー著
●JSR社長・小柴満信氏
さらに発達したインターネットがもたらす“もう一歩先の世界”を、足元にある12の潮流から読み解いた一冊だ。「物事の価値はモノからコトに変わる」「シェアが当たり前になり、所有という概念は時代遅れになる」など、技術の進化を感じ取ることができる。共感する部分も多い。
これからやってくるであろう社会の姿を、具体的なイメージとして描き出す材料にしてほしい。その上で社会との大きなつながりも意識し、それぞれの位置付けにも思いを巡らせてもらえれば。今の20代は発想が柔軟で、社会で役立ちたいという意識も高い。その感性や個性が生きるよう私たちも努めていく。
『君たちはどう生きるか』吉野源三郎著
●東京都中小企業振興公社多摩支社長・小池喜春氏
主人公は15歳の旧制中学の少年。純粋な目で世の中を見ており、学友や叔父との交流を通してさまざまな人たちの痛みを知り、考え、成長していく。
初めて読んだのは小学生の時。以来、20歳、30歳と人生の節目で再び手に取ることが多かった。その度に書籍を通して自分は本当に何をやりたいのか、生き方を考えるきっかけになった。
戦前の1937年に発刊されたが、2017年には漫画化され若い世代にも読まれている。時代が変わっても共通する普遍的な価値があるのではないだろうか。若い人たちには書籍を通し、自分の生き方を考えるきっかけにしてほしい。
日刊工業新聞2018年1月8日