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ヤマハ発“四重苦”からV字回復、立役者の引き際

「趣味の製品を主力とする会社は同じ人が長くやらない方がいい」
ヤマハ発“四重苦”からV字回復、立役者の引き際

会長に就任した柳氏

 ヤマハ発動機の柳弘之社長は2018年1月1日付で社長職を退き代表権のある会長に就任した。リーマン・ショックの影響で過去最大の赤字に陥った経営危機から再建した功労者。17年12月期は各利益が過去最高となる見込みで花道を飾る。一方、18年12月期の目標とした売上高2兆円は為替影響などで達成困難な見通し。後任の日高祥博新社長を中心とする新チームに託す。

 「四重苦だった」と10年の就任時を振り返る。リーマン・ショックの影響で先進国市場は絶望的。インド事業は赤字続きで米国では訴訟問題も抱えた。為替も“超円高”の逆風が吹き荒れていた。

 就任後、開発から調達、製造のプロセスを全面的に見直した。国内外の工場を集約、製品のプラットフォーム化を進め「損益分岐点型経営」を徹底した。この結果、14年12月期の営業利益は中期経営計画の数字を1年前倒しで達成、業績はV字回復した。

 16年スタートの新中期経営計画では「ひとまわり・ふたまわり大きな『個性的な会社』」を掲げ、ブランド力の強化を推進。成長戦略に1300億円の投資枠を設けるなど攻めに転じた。モビリティやマリン、ロボティクスなど同社が持つ多彩な技術を融合した新規事業の種をまいた。

 その新中計半ばでの社長交代には、社内外から驚きの声があがった。ただ柳会長本人は「当社のように趣味の製品を主力とする会社は同じ人が長くやらない方がいい」と3年前から周到に後継者選定を始めていた。会長として今後はブランドを高める活動に力を入れる。
日刊工業新聞2017年12月27日の記事を一部修正
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「ラグビーを超一流チームにしたい。サッカーもよくなってきた」と企業スポーツの応援にも一層の熱が入る。 (日刊工業新聞浜松支局・田中弥生)

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