大田区の総力結集!下町ボブスレー最新機公開
部品加工、組み立て・・・夏の格闘経て、いざ冬の本番へ
東京都大田区の町工場を中心に冬季五輪に出場するソリを製造している下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会は5日、平昌(ピョンチャン)五輪シーズンに向けてジャマイカチームに4台のソリを提供すると発表した。今後ジャマイカチームが同ソリで公式戦を転戦し、2018年2月の平昌五輪出場を目指す。
新たに製造した10号機のほか、従来のソリを改良した3台を提供する。10号機は部品の薄型化などで9号機比35%の軽量化に成功した部品もあるという。
同日、飛行機の機体にソリをデザインしたスカイマークのラッピング機「下町ボブスレージェット」もお披露目された(写真)。
東京都大田区の町工場を中心に結成された「下町ボブスレーネットワークプロジェクト」が作るボブスレーのソリは、設計、説明会による図面の配布を経て、各企業が部品を加工する。冬に間に合わせるべく熱い戦いが繰り広げられている。
有坂弁栓工業(大田区)では、ステアリング機構の一角で使う部品を汎用旋盤で加工している。担当はベテラン職人の島村茂夫さん(67)だ。島村さんは「普段扱う材料はステンレスだが、当社で加工するボブスレーの部品は鉄製。やわらかいため、刃物などを変えて削っている」と明かす。有坂知則社長は「説明会で図面を選ぶ際、汎用旋盤で加工できるモノを選んだ。当社の実力をアピールしたい」と張り切る。
一方で若手社員に任せて人材育成の一環とする会社もある。山小電機製作所(大田区)では、レーザー加工機でフロントフレームに使う部品を加工する。担当する小谷英稔さん(26)は入社8年目の若手社員。同加工機を使った加工全般を任されている。小谷さんは「普段加工する部品はどこに使われているか分からない。ボブスレーという分かりやすいモノの部品を加工するのはうれしい」と熱意を見せる。小湊清光社長は「五輪に出れば社員のモチベーションが上がる。ボブスレーの協力企業として注目してもらうことで、採用活動にもつながるのでは」と期待を込める。
またボブスレーの中には、完成までいくつかの会社でいくつかの加工を経る部品も多い。製造を取り仕切るエース(大田区)社長の西村修副委員長は各社から各社へ、橋渡し役として飛び回る。加工期間の約1カ月半、どこに行くにも全部品の図面を持ち歩き、常に問い合わせに対応できるようにしているという。調整役として重要な役割を果たす。
こうして完成し、集まった部品は、設計者であるマテリアル品質保証開発設計課の鈴木信幸部長を中心に、協力企業の希望者が組み立てる。1日で大まかな部分を仕上げ、2―3日は細かい精度の調整に充てる。そしてついに、ボブスレーのソリが完成する。
ただ、完成後も仕事は終わらない。ソリに乗った選手から要望があれば、部品の修理からステアリングの強弱修正まで即座に応える。鈴木部長は「試合にメカニックとして帯同した経験から、調整しやすく設計している。できれば五輪にも帯同したい」と笑顔だ。
こうして大田区の総力を結集して作られたソリは、ジャマイカチームが公式ソリに採用している。10月には完成した10号機がお披露目される予定だ。2018年2月の平昌(ピョンチャン)五輪での出走を決め、世界に技術力をアピールできるか。大田区が一丸となり、“熱い”夏を駆け抜けた。
新たに製造した10号機のほか、従来のソリを改良した3台を提供する。10号機は部品の薄型化などで9号機比35%の軽量化に成功した部品もあるという。
同日、飛行機の機体にソリをデザインしたスカイマークのラッピング機「下町ボブスレージェット」もお披露目された(写真)。
日刊工業新聞2017年10月5日
冬めがけた熱い戦い
東京都大田区の町工場を中心に結成された「下町ボブスレーネットワークプロジェクト」が作るボブスレーのソリは、設計、説明会による図面の配布を経て、各企業が部品を加工する。冬に間に合わせるべく熱い戦いが繰り広げられている。
ベテランVS若手
有坂弁栓工業(大田区)では、ステアリング機構の一角で使う部品を汎用旋盤で加工している。担当はベテラン職人の島村茂夫さん(67)だ。島村さんは「普段扱う材料はステンレスだが、当社で加工するボブスレーの部品は鉄製。やわらかいため、刃物などを変えて削っている」と明かす。有坂知則社長は「説明会で図面を選ぶ際、汎用旋盤で加工できるモノを選んだ。当社の実力をアピールしたい」と張り切る。
一方で若手社員に任せて人材育成の一環とする会社もある。山小電機製作所(大田区)では、レーザー加工機でフロントフレームに使う部品を加工する。担当する小谷英稔さん(26)は入社8年目の若手社員。同加工機を使った加工全般を任されている。小谷さんは「普段加工する部品はどこに使われているか分からない。ボブスレーという分かりやすいモノの部品を加工するのはうれしい」と熱意を見せる。小湊清光社長は「五輪に出れば社員のモチベーションが上がる。ボブスレーの協力企業として注目してもらうことで、採用活動にもつながるのでは」と期待を込める。
飛び回る調整役
またボブスレーの中には、完成までいくつかの会社でいくつかの加工を経る部品も多い。製造を取り仕切るエース(大田区)社長の西村修副委員長は各社から各社へ、橋渡し役として飛び回る。加工期間の約1カ月半、どこに行くにも全部品の図面を持ち歩き、常に問い合わせに対応できるようにしているという。調整役として重要な役割を果たす。
こうして完成し、集まった部品は、設計者であるマテリアル品質保証開発設計課の鈴木信幸部長を中心に、協力企業の希望者が組み立てる。1日で大まかな部分を仕上げ、2―3日は細かい精度の調整に充てる。そしてついに、ボブスレーのソリが完成する。
出走まで入念に
ただ、完成後も仕事は終わらない。ソリに乗った選手から要望があれば、部品の修理からステアリングの強弱修正まで即座に応える。鈴木部長は「試合にメカニックとして帯同した経験から、調整しやすく設計している。できれば五輪にも帯同したい」と笑顔だ。
こうして大田区の総力を結集して作られたソリは、ジャマイカチームが公式ソリに採用している。10月には完成した10号機がお披露目される予定だ。2018年2月の平昌(ピョンチャン)五輪での出走を決め、世界に技術力をアピールできるか。大田区が一丸となり、“熱い”夏を駆け抜けた。
日刊工業新聞9月28日