下町ボブスレー、製作山場
平昌冬季五輪まであと120日あまり
冬季五輪・パラリンピック出場を目指すチームや選手をモノづくりでサポートするプロジェクトが東京都大田区と北海道でそれぞれ進められている。大田区ではボブスレーのソリを製造する「下町ボブスレーネットワークプロジェクト」の10号機製造が佳境を迎えている。北海道では道内の産学官が連携し、地元出身選手向けに競技用シットスキーを開発中だ。両地域のプロジェクトの現況を探った。
下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会ではこれまで冬季五輪競技ボブスレーのソリを9台作ってきた。「カーボンと接合することを計算しながら設計していく」。マテリアル(大田区)品質保証開発設計課の鈴木信幸部長はボブスレー設計のこつを明かす。ソリの製造は鈴木部長の設計から始まる。10台目となる今では1週間あれば大方の設計を終えられるという。
ボブスレー全体の設計はステアリング、フロントフレーム、リアフレーム、フロントアクスル、リアアクスル、ブレーキと6ユニットに分けて構造を考える。ボディーを製造する東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)とも相談しながら、ボディーに合ったフレームの形状を設計。その後、部品一つずつを設計する。部品は130点以上に及ぶ。協力企業が作れるよう図面にし設計の仕事は完了だ。
1号機の設計は既存のソリをばらして参考にした。安全に走りきれることが目標だったが、2号機以降は勝てるソリを求められた。今ではオリジナリティーを生かしつつ、ソリを採用したジャマイカチームの要望を取り入れることが重要だ。
鈴木部長は「動力を内蔵する機械ではないため、どうやって速くするのか考えるのは大変だ。協力企業の技術が高く、どんな形状にしても削ってくれるという信頼にいつも助けられている」と柔らかい表情を見せる。
図面ができると全体説明会を開く。全部品の図面を協力企業に公開し、加工できる部品の図面を持ち帰ってもらう。各企業は無償で各部品を加工する。
ここからの製造をとりしきるエース(同)社長の西村修副委員長は「各企業に配る前に、当社、関鉄工所、五城熔接工業所、三陽機械製作所、設計者の鈴木さんで各企業が加工しやすいように図面を手直しする。企業の負担を減らすようにしている」と胸を張る。
説明会では、各企業の代表者が加工する部品を選ぶだけでなく、積極的な議論も交わされる。協力企業の一つであるカシワミルボーラ(同)の柏良光代表は「持っている機械も技術も違う企業同士で加工方法を提案し合うため、新たな技術を学べる。想像もつかないような加工方法の提案もある」と実感を語る。大田区の技術底上げにもつながっている。
10号機の説明会は、ほぼ全ての部品の図面がそろい、余った図面もなかったが、これまでは誰も持ち帰らず加工する企業のない部品もあった。これらの加工手配や追加で必要な部品や治具の加工先を探すのも西村副委員長の仕事だった。
西村副委員長は「大田区には“職人魂”のようなものがある。『簡単すぎると恥ずかしくて堂々と手が上げられない』と言われたこともある。日々技術の高さを実感する」と笑顔を見せる。こうして全部品の加工先が決まり、各社が加工にとりかかる。
下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会ではこれまで冬季五輪競技ボブスレーのソリを9台作ってきた。「カーボンと接合することを計算しながら設計していく」。マテリアル(大田区)品質保証開発設計課の鈴木信幸部長はボブスレー設計のこつを明かす。ソリの製造は鈴木部長の設計から始まる。10台目となる今では1週間あれば大方の設計を終えられるという。
ボブスレー全体の設計はステアリング、フロントフレーム、リアフレーム、フロントアクスル、リアアクスル、ブレーキと6ユニットに分けて構造を考える。ボディーを製造する東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)とも相談しながら、ボディーに合ったフレームの形状を設計。その後、部品一つずつを設計する。部品は130点以上に及ぶ。協力企業が作れるよう図面にし設計の仕事は完了だ。
1号機の設計は既存のソリをばらして参考にした。安全に走りきれることが目標だったが、2号機以降は勝てるソリを求められた。今ではオリジナリティーを生かしつつ、ソリを採用したジャマイカチームの要望を取り入れることが重要だ。
鈴木部長は「動力を内蔵する機械ではないため、どうやって速くするのか考えるのは大変だ。協力企業の技術が高く、どんな形状にしても削ってくれるという信頼にいつも助けられている」と柔らかい表情を見せる。
図面ができると全体説明会を開く。全部品の図面を協力企業に公開し、加工できる部品の図面を持ち帰ってもらう。各企業は無償で各部品を加工する。
ここからの製造をとりしきるエース(同)社長の西村修副委員長は「各企業に配る前に、当社、関鉄工所、五城熔接工業所、三陽機械製作所、設計者の鈴木さんで各企業が加工しやすいように図面を手直しする。企業の負担を減らすようにしている」と胸を張る。
説明会では、各企業の代表者が加工する部品を選ぶだけでなく、積極的な議論も交わされる。協力企業の一つであるカシワミルボーラ(同)の柏良光代表は「持っている機械も技術も違う企業同士で加工方法を提案し合うため、新たな技術を学べる。想像もつかないような加工方法の提案もある」と実感を語る。大田区の技術底上げにもつながっている。
10号機の説明会は、ほぼ全ての部品の図面がそろい、余った図面もなかったが、これまでは誰も持ち帰らず加工する企業のない部品もあった。これらの加工手配や追加で必要な部品や治具の加工先を探すのも西村副委員長の仕事だった。
西村副委員長は「大田区には“職人魂”のようなものがある。『簡単すぎると恥ずかしくて堂々と手が上げられない』と言われたこともある。日々技術の高さを実感する」と笑顔を見せる。こうして全部品の加工先が決まり、各社が加工にとりかかる。
日刊工業新聞 2017年9月27日