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長野高専、「高専」タイ輸出へ新組織 現地技術校と協働教育探る

長野高専、「高専」タイ輸出へ新組織 現地技術校と協働教育探る

長野高専の教員(左)から指導されるタイの教員

 長野工業高等専門学校は、日本独自の高専教育モデルをタイに「輸出」する担当組織を同校内に新設した。現地の技術系専門校の教育カリキュラムを調査・研究する。交流を促進しながら環境を整える。優れた技術者を早期に育成する同モデルは海外から注目され、国立高等専門学校機構が海外展開を目指している。長野高専が開設した組織は同機構の窓口機能も併せ持ち、他の高専とも連携し具体的な取り組みを進める。

 新組織「タイ協働センター」は2014年に設置した国際交流センターから切り分ける形で8月発足した。センター長は、電子制御工学科教授で国際交流センター副センター長の堀口勝三氏が兼務。副センター長、委員を合わせ11人で構成する。

 英語を使った教材を開発するほか、日本とタイで相互に教員を派遣して実験実習や英語による授業を実践する。最終的には単位を相互に交換する教育システムを導入するほか、協働教育を確立して高専教育の国際化、教員、学生それぞれのグローバル化を進める。

 全国51校の高専を統括する高専機構は、日本独自の実学教育として蓄積した高専型教育を各国のニーズに応じて輸出する支援事業を推進。16年末にはタイ・バンコクのタイ教育省職業教育委員会事務局(OVEC)内にリエゾンオフィスを設置している。長野高専のタイ協働センターも同オフィスと連携。タイと日本の他の高専の交流についても橋渡し役を担う。

 長野高専は、08年にタイ教育省とタイ・オーストリアンテクニカルカレッジを教員が訪問したのを契機に交流を開始。12年にはタイ教育省傘下のテクニカルカレッジ8校と国際交流協定を結んだ。
日刊工業新聞2017年8月30日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
産業現場での即戦力の養成校として、国内外で評価の高い高専システム。一方で国立高専からの進学率は、大学(高専専攻科含む)へは40.0%、高専専攻科から大学院へは34.9%(いずれも2015年度)。学卒より速く現場に優秀な人材を送り込むという、本来の趣旨とはややかけ離れている。学ぶ機会と意欲のある人が、より高いレベルで学ぶこと自体は大歓迎。だが、高専の位置付けやあり方を国としてどうするかは、産業界ももっと関与して議論すべきではないか。

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