女性管理職「想定より消極的。げたを履かせるのはポリシーに反する」(日本電産会長)
20年までに8%へ“現実路線”に下方修正
日本電産の永守重信会長兼社長は24日、京都市南区の本社で会見し、外部から女性の管理職を積極的に採用する方針を示した。2020年までに女性管理職比率を、現在の3倍弱程度となる8%を目指す。従来の数値目標からは下方修正したが、社員から意見を積極的に取り入れ現実路線で目標を見直した。女性活躍の推進をはじめとした働き方改革に正面から向き合う考えだ。
16年末に働き方改革を掲げた際は、女性管理職比率の目標を20年に15―20%としていた。実際に改革を進めると、管理職を目指すことをためらう女性社員が多いことが分かった。
永守会長は「思っていたよりも消極的。でもげたを履かせる(数値を引き上げる)のはわが社のポリシーに反する」と話した。
従業員301人以上の企業に女性管理職割合などの数値目標や行動計画の策定を義務づける女性活躍推進法の施行から半年余り。計画の届出率は全国で99%に達する一方で、地方の上場企業や中堅企業の間では管理職を目指す人材層が薄く、達成の道筋を見いだせないケースが少なくない。「ロールモデル」がそもそも少なく、社外ネットワークを通じた「刺激」も受けにくい地方特有の実情が背景にある。実情を打開しようと「地域発」の動きがじわり広がり始めている。
「女性社員のうち1割程度しか管理職を希望していない」―。兵庫県の上場機械メーカーの人事担当者はこう話す。8月に実施したアンケートで管理職を希望しないと回答した理由のうち、予想以上に高かったのは「イメージがわかない」との声。
同社では女性の係長は誕生しているものの、課長職以上の女性管理職はゼロ。こうした社内の実情が意欲の低さにつながっているのではないか―。経営側はこう考えている。
別の広島県内の上場企業の執行役員も「女性の活躍推進を掲げる政府方針は理解できる」としながらも当事者である女性社員がそれを希望しないと嘆く。
この企業では、育児休業期間の延長や時短勤務制度といった環境整備を通じ、女性社員の定着率は上がったが、「管理職を目指す女性が増えたわけではない」(執行役員)。「細く長く働く」ための支援と「管理職になる」とは、別問題ということが浮き彫りになった。
管理職としての可能性を秘めながらも、当事者が登用や昇進を望まない裏には、地元出身比率が高く、転勤を望まないことや近隣に住む両親の助けを借りて仕事と育児を両立しているケースが多いことなどが考えられる。
「あえて現状を変えたくない」との意識に拍車をかけるのが身近なロールモデルに乏しく「自身の姿がイメージできない」との声だ。
経営側からは「女性社員の深層意識をどう把握すればいいのか」といった戸惑いも聞かれる。管理職のなり手がいないことから「他社で活躍する人材をスカウトすることを視野に入れている」との声さえある。
懸念されるのは、他企業との交流機会やロールモデルに恵まれる都心部の先進企業との格差拡大だ。「活躍」に対する意識の向上やそれに向けた環境整備は、1社で進められる取り組みに限界があるため、同じ課題を抱える企業間の連携が欠かせない。
16年末に働き方改革を掲げた際は、女性管理職比率の目標を20年に15―20%としていた。実際に改革を進めると、管理職を目指すことをためらう女性社員が多いことが分かった。
永守会長は「思っていたよりも消極的。でもげたを履かせる(数値を引き上げる)のはわが社のポリシーに反する」と話した。
日刊工業新聞2017年8月25日
「イメージがわかない」との声
従業員301人以上の企業に女性管理職割合などの数値目標や行動計画の策定を義務づける女性活躍推進法の施行から半年余り。計画の届出率は全国で99%に達する一方で、地方の上場企業や中堅企業の間では管理職を目指す人材層が薄く、達成の道筋を見いだせないケースが少なくない。「ロールモデル」がそもそも少なく、社外ネットワークを通じた「刺激」も受けにくい地方特有の実情が背景にある。実情を打開しようと「地域発」の動きがじわり広がり始めている。
「女性社員のうち1割程度しか管理職を希望していない」―。兵庫県の上場機械メーカーの人事担当者はこう話す。8月に実施したアンケートで管理職を希望しないと回答した理由のうち、予想以上に高かったのは「イメージがわかない」との声。
同社では女性の係長は誕生しているものの、課長職以上の女性管理職はゼロ。こうした社内の実情が意欲の低さにつながっているのではないか―。経営側はこう考えている。
女性活躍に地域格差
別の広島県内の上場企業の執行役員も「女性の活躍推進を掲げる政府方針は理解できる」としながらも当事者である女性社員がそれを希望しないと嘆く。
この企業では、育児休業期間の延長や時短勤務制度といった環境整備を通じ、女性社員の定着率は上がったが、「管理職を目指す女性が増えたわけではない」(執行役員)。「細く長く働く」ための支援と「管理職になる」とは、別問題ということが浮き彫りになった。
管理職としての可能性を秘めながらも、当事者が登用や昇進を望まない裏には、地元出身比率が高く、転勤を望まないことや近隣に住む両親の助けを借りて仕事と育児を両立しているケースが多いことなどが考えられる。
「あえて現状を変えたくない」との意識に拍車をかけるのが身近なロールモデルに乏しく「自身の姿がイメージできない」との声だ。
経営側からは「女性社員の深層意識をどう把握すればいいのか」といった戸惑いも聞かれる。管理職のなり手がいないことから「他社で活躍する人材をスカウトすることを視野に入れている」との声さえある。
懸念されるのは、他企業との交流機会やロールモデルに恵まれる都心部の先進企業との格差拡大だ。「活躍」に対する意識の向上やそれに向けた環境整備は、1社で進められる取り組みに限界があるため、同じ課題を抱える企業間の連携が欠かせない。
日刊工業新聞2016年11月15日の記事から抜粋