伊藤園の“茶殻自販機”は廃棄物を富に変える

茶殻リサイクル、多様に。自販機を冷ます「打ち水」の原理

 7月、お湯を注いだ後の茶殻入り樹脂をはりつけた自動販売機が、横浜情報文化センター(横浜市中区)に設置された。自販機は日差しを受けると表面温度が60度Cを超えるが“茶殻自販機”は上昇を10度C以上も抑える。茶殻が取り込んだ水分が少しずつ蒸発して熱を奪い、自販機を冷ますためだ。道に水をまいて涼をとる「打ち水」と同じ原理だ。

 伊藤園はワンウィル(横浜市中区)、サンロック工業(大阪市中央区)と共同開発した「茶殻配合シート」を、自販機の表面に採用した。温度上昇の緩和以外に、カテキンによる抗菌効果もあり、病院や介護施設への設置が期待される。

 伊藤園は約15年前から緑茶飲料の生産で排出される茶殻を再利用した商品づくりに取り組んでいる。自販機以外に100点の茶殻リサイクル製品がある。

 もともと茶殻は堆肥や飼料として農家に販売していた。80年代に発売した「お〜いお茶」の生産が増えるにつれ、茶殻も増加。開発一部の佐藤祟紀課長は00年の入社後、すぐに茶殻リサイクル品の開発を任された。

 初めに思いついたのが畳だった。手作りながら畳内部の建材ボードへの茶殻の配合に成功。しかし、生産を依頼した建材ボードメーカーに茶殻を運ぶとトラブルが起きた。

 「緑のはずの茶殻が雪山のように真っ白くなっていた」(佐藤課長)という。伊藤園の工場から運ぶ途中でカビが繁殖したためだ。水分を取り除けばカビは防げるが、乾燥にコストがかかり採算が合わなくなる。試行錯誤し、カビを発生させない保存・輸送方法を確立した。具体的な方法は今でも「企業秘密」という。

 完成した茶殻配合建材ボートは、北一商店(東京都世田谷区)が採用を決定。03年に第1号の茶殻リサイクル品となる畳を発売した。消臭効果への期待もあるが、旅館、料亭など“和”を意識した顧客からの引き合いが多く、今では茶殻配合建材ボードは年10万枚を生産している。

 その後、樹脂への茶殻の練り込みにも成功し、プランターやサンダルなどに商品を拡充。名刺や封筒など紙製品も豊富になった。

 佐藤課長は「茶殻リサイクル品の活用が社内だけだと長続きしない。販売しているから続いている」と強調する。消臭や抗菌、温度上昇の緩和、「和」に合うなど、茶殻は付加価値がある。茶殻リサイクル品は価値を購入者に認めてもらえているから、資源循環が成り立っている。

日刊工業新聞2017年7月25日

松木 喬

松木 喬
07月29日
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サーキュラーエコノミーの議論で、「廃棄物を富に変える」というキーワードが出てきます。茶殻は堆肥にしていたので廃棄はしていませんでしたが、伊藤園は技術開発によって畳やプラスチック製品、封筒など他の価値ある商品に変えています。ちなみに将来の農家減少も念頭に商品開発に取り組んだそうです。堆肥の需要が減ってしまい、廃棄することになる茶殻の発生を防ぐためです。

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