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アトピー性皮膚炎の平均診察時間が2分以下という深刻度

悩みを伝えられない患者が多いのは医者に問題あり
 良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を主な病変とするアトピー性皮膚炎。厚生労働省の2014年患者調査によると患者数は45万6000人で、2番目に多い皮膚疾患とされる。昨今は生物学的製剤の開発が進み、治療薬の選択肢は増える見通しだ。だが専門医は、患者の抱える悩みを医師が十分にくみとれておらず、治療満足度が低くなっていると警鐘を鳴らす。

 「ラーメンも食べられない時間ですよ」。日本医科大学千葉北総病院皮膚科の幸野健教授は、アトピー性皮膚炎患者の31・3%が、平均診療時間が2分以下にとどまっているとの調査結果を嘆く。

この調査はサノフィ(東京都新宿区)が16年5―6月、インターネットを使って1万300人の患者を対象に実施。17年7月に結果を公表した。症状に伴う精神的な悩みを医師に伝えているかについても調べており、その割合は約38%だった。特に、恋愛・結婚への不安や、自分に自信が持てないといった悩みは伝えられていない例が多かったという。

 幸野教授によると、「アトピー性皮膚炎患者はそうでない人に比べ、抑うつ、不安、睡眠障害などメンタル関連の有病率が高い」。皮膚疾患の症状は他人の目につきやすく、患者の心理的な影響や負担が大きいことが一因と考えられる。「診療は限られた時間だが、医師はその中でメンタル面のサポートも積極的に行っていく必要がある」(幸野教授)。

アトピー性皮膚炎の治療薬としてはステロイド外用薬が知られるが、99年には免疫抑制外用薬「タクロリムス軟膏(こう)」が登場。現在は複数の生物学的製剤の開発も進んでいる。ただ医療関係者はそうした進歩に慢心せず、患者視点で診療のあり方を改善し続けることが求められる。
                

【日本医科大学千葉北総病院皮膚科教授・幸野健氏】


 アトピー性皮膚炎の患者さんには「かゆくて皮膚を引きちぎりたい」とまで言う人もいる。結婚したいと思っている人、老後に向けて人生設計を組み立てていかねばならない人など、人生で重要な時期にある方々がこの疾患で非常に不幸な目に遭っている。アトピー性皮膚炎は度々取りあげるべき問題だ。

 サノフィの調査についてだが、インターネットを使っていて面談をしたわけではない、本当に意味があるデータなのか、などと言う人もいる。だが面談では言いにくい事がネットでは言える面もあるし、手間がかかるのにわざわざやる患者は問題意識が高いのでは。医師とのコミュニケーションに関する満足度は40%程度との事だったが、遠慮して書いてくれており、本当はもっと悪いと思う。医者に問題がある。(談)
幸野健教授
日刊工業新聞2017年7月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
もちろん医師側の問題もあるが、患者によっては診察時間が意外と苦痛に感じる人も多い。薬だけさっさともらえればいいとか。長く話せば話すほど自分がその病気だということを再認識する思考が働く。単に診察時間だけでなく、コミュニケーションの質、医師との信頼関係をどう築くか。事前にネットでコミュニケーションしておくなど医師、患者の負担が減るさまざまな手法があっていい。

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