東芝やタカタだけじゃない!注目企業のリーダーが「株主総会」で語ったこと
*日産「ゴーン会長のようなリーダーを」
日産自動車が、資本提携する仏ルノー、三菱自動車との3社連合(アライアンス)での協業推進とともに、将来の経営人材の育成に力を入れている。各社で技術・事業基盤を共有化して、電動化など先進技術を導入した商品戦略を拡大。将来のリーダー育成のための環境整備も進める。持続的成長に向け、アライアンスの成果をより発揮できる地盤を強固にし、持続的成長への布石を打つ。
「アライアンスの今後の成否は、3社が持つ力を余すことなく発揮できるかにかかっている。その中で日産は中心的存在となる」。カルロス・ゴーン会長は27日に横浜市内で開いた株主総会で、今後の協業に気を引き締めるとともにアライアンスにおける日産の位置付けを強調した。
2016年に日産・ルノー連合に三菱自が加わったことで、3社の合計販売台数は16年に996万台まで増えた。事業規模の拡大に伴い、調達や生産などさまざまな部分でスケールメリット(規模効果)を得られる基盤を構築。日産として今後は自社が強みとする電動化などの先進技術に加え、三菱自との協業による商品開発も進める。西川広人社長は「『日産インテリジェント・モビリティ』を着実に進展させ、日産の“顔づくり”を進める」と意気込みを示した。
17年後半には、自動運転機能を搭載した新型電気自動車(EV)「リーフ」を投入するほか、電動駆動技術「eパワー」の導入車種も今後拡充する。将来は、三菱自動車の技術を活用したプラグインハイブリッド車(PHV)も商品群に追加するなどし、「電動化のパイオニアの座を強固にする」(ゴーン会長)方針だ。
また西川社長は、「日産の多様性を今後持続可能な強みとする」と強調。現在は役員の約半数が外国籍だが、外国籍社員のリーダー層が今後さらに活躍できる環境作りに取り組む。日本人に対しても、多様なマネジメント層をまとめるリーダーシップの醸成に力を注ぐことで「日本人の中から次、あるいは次の次の世代のゴーン会長のようなリーダーが育つ環境をつくる」とした。
(文=土井俊)
三菱自動車が、燃費不正問題に伴う社内改革と業績回復に向けて新たなステップを踏み出そうとしている。23日付で益子修社長兼最高経営責任者(CEO)が社長の肩書を外し、役職をCEOに統一。2016年に資本提携した日産自動車と仏ルノーを加えた3社アライアンス(連合体)による協業を加速する。問題再発防止に向けた企業風土の改善も一層進めて、国内市場での信頼回復につなげる。
「意識を新たにし、アライアンスの一員として改革とV字回復を成し遂げることに全力で取り組む」。益子CEOは23日に都内で開いた株主総会でCEOとしての決意を述べた。
同社は16年に燃費不正問題が発覚。それに伴い軽自動車の販売停止などの影響を受け、17年3月期業績は営業利益が前期比96・3%減の51億円、世界販売台数が同11・6%減の92万6000台に落ち込んだ。18年3月期は一転、V字回復の絵を描き、営業利益700億円、世界販売台数102万9000台を見込む。カルロス・ゴーン会長は「業績は来年、再来年にさらに改善する」と意気込み、20年3月期目標の営業利益率6%以上(17年3月期は0・3%)、世界販売台数125万台の確保につなげる。
目標達成への原動力となるのが、アライアンスの相乗効果の追求だ。既に日産と物流や購買、販売金融で協業しており、18年3月期は相乗効果として250億円を見込む。今後は両社の技術を相互活用して新技術・商品の開発に乗り出す。
益子CEOは日刊工業新聞社などの取材で、「(商品開発などの)進化したアライアンスにチャレンジできることは持続的成長を実現する上で大きな力になる」と力を込めた。ゴーン会長も今後のEV開発で「共通のモーターとバッテリーを採用する」と、幅広い分野での協業に意欲を示した。
また燃費不正問題の再発防止については、4月1日までに全31項目の不正防止策を実施。ただ益子CEOは「一応のけじめはつけたが、社会からの信頼回復はまだ長い期間を要する。継続的にフォローしたい」と強調。問題を風化させないために国内拠点に関連の展示物を設置するなどし、社員教育に生かす方針だ。
一方、株主総会では燃費不正問題に関して株主から「益子さんは責任を取って辞任すべきだ」などの厳しい声が相次いだ。益子CEOは「持続的成長に向けて最大限の努力をすることと、信頼回復を目指すことが私の責任」と説明し、カルロス・ゴーン会長も「三菱自動車が自分たちで再生する上で適した人物。結果を評価してほしい」とした。
三菱重工業は22日、都内で定時株主総会を開き、株式併合など5議案を決議した。株主からは国産小型ジェット旅客機「MRJ」の開発動向や、日立製作所と協議している南アフリカ共和国での火力発電所建設の損失問題などの質問が出た。
5度の納入延期となったMRJ事業について宮永俊一社長は、「国際的なルールがどんどん変わり、世界に通用する安全性の証明に大変苦労している」と説明。その上で「MRJ事業を伸ばしていけば、日本全体の宝になる」と強調した。
日立に対して7600億円の請求をしている南ア案件については「詳細なデータの調査や整理に時間がかかっているが、今後も誠実に話をして解決に向けて努力する」(小口正範取締役常務執行役員)とした。株主総会は所要時間1時間55分、入場株主は1102人。発言株主は11人で、質問は21だった。
日本郵政は22日、横浜アリーナ(横浜市港北区)で定時株主総会を開いた。傘下の豪物流大手のトール・ホールディングス(HD)の業績不振で、「のれん」代など計4003億円を一括減損処理し、2017年3月期に民営化後初の連結最終赤字に転落したことについて、長門正貢社長は「大きな損失を招き大変重く受け止めている」と陳謝した。その上で「負の遺産を一掃した」とし、業績回復に努める意気込みを示した。
質問した株主は13人。野村不動産HDの買収計画について、原口亮介専務執行役は「現時点で(買収計画を)検討している事実はない」とした。その上で「有効活用できる土地は持っており、今後、不動産事業を柱の一つに育てたい」と回答するにとどめた。
議案は、植平光彦かんぽ生命保険社長ら新任2人を含む取締役15人の選任に関する議案1件で原案通り承認・可決された。出席者は前年比356人減の838人、所要時間は同16分短い1時間33分だった。
ソフトバンクグループは21日、都内で株主総会を開き、孫正義社長は半導体設計の英ARMホールディングスの買収について「後に人生を振り返り、カギになった買収を1社だけあげるとすればARMになるだろう」と述べた。IoT(モノのインターネット)の進展などにより「ARMはすごい勢いで伸びる」と強調した。また、11人の取締役選任など全議案を承認した。
株主からは孫社長の後継者問題について質問があった。孫社長は「私とともに5―10年重要な経営の役割を担っており、同じ方向で経営を引っ張ってくれる能力や人格に優れた者を指名する。10年かけて課題として取り組む」と説明した。出席者は2189人。所要時間は1時間53分。
また、総会後に21日付で孫社長が会長職を兼任すると発表した。
シャープは20日、台湾・鴻海精密工業の傘下に入って初めての株主総会と株主向けの経営説明会を堺市内の本社で開いた。戴正呉社長は株主との質疑応答で「来年は必ず配当できるよう頑張る」と述べ、2018年3月期の当期黒字化、復配に意気込みを示した。
東証1部復帰については「6月29日か30日に申請する予定」と明かした。復帰時期は未定だが「復帰後は社長を辞めるが、(20年3月期までの)中期経営計画は責任を取る。会長になって日本人の次期社長を育てる可能性もある」とした。中国や米国で同時に投資計画を進める液晶事業は「技術開発や亀山工場の設備に投資する」として積極姿勢を改めて強調。海外拠点では賞与体系を見直し国内同様に「信賞必罰」の報酬制度導入を進める。
総会は経営陣や鴻海への不信感が噴出した昨年と打って変わり、終始穏やかな雰囲気で進行。株主からは業績を大幅改善させ、株価を5倍近くに上げた戴社長の手腕を評価する声が多く「一日でも長くシャープにいて下さい」「他社にない商品(の発売)を大いにやってほしい」との声も上がった。
総会の所要時間は1時間7分で過去最長だった昨年の3時間23分から大幅に短縮。元堺ディスプレイプロダクト取締役の王建二氏や元NHK理事の西山博一氏を含む新任取締役5人の選任などを決議して終了した。
日本電産は京都市内で開いた定時株主総会で、車載事業を統括する吉本浩之副社長執行役員と、家電産業事業を統括する大西徹夫副社長執行役員の2人を新たに取締役に選任した。成長の柱に位置付ける2事業の責任者を取締役に加えて経営体制を強化。総会後の会見で永守重信会長兼社長は「副会長2人と(事業担当の)副社長4人の全員がボード(取締役会)メンバーになった。これで(2020年度の売上高)2兆円体制が出来上がった」と力を込めた。
永守会長は30年度に売上高10兆円とする目標について触れ、同年度に「車載」「家電・商業・産業用」の2事業で7兆円を目指すと示した。
吉本副社長の選任理由では「若い頃から全体の経営もやっている。車載事業を引っ張っていく」と説明。日本電産トーソクを短期間で再建した手腕を高く評価した。大西副社長についてはシャープで経理畑を歩んだ経歴を評価した。
出席者は1037人で前回より79人増加。株主20人から質問があり、所要時間は2時間11分だった。
トヨタ自動車は14日、愛知県豊田市の本社で定時株主総会を開き、取締役報酬額改定など4議案を決議した。過去最多だった昨年を上回る5227人の株主が出席した。手元資金の活用法を株主に問われて豊田章男社長が「M&A(合併・買収)なども含めあらゆる選択肢を考える」と答えるなど今後の事業戦略を説明した。
取締役の報酬は月額から年額に改め、従来の月額1億3000万円以内から賞与を含めて年額40億円以内に大きく増額した。報酬総額が高い外国人取締役が将来増えても、支障が出ないようにする。
競争が激しい自動運転技術の質問には、伊勢清貴専務役員が他社との協業例も挙げつつ「この世界では絶対に負けないつもり」と強調した。
シェアの低い欧州についてはディディエ・ルロワ副社長が「市場環境は厳しい。一歩一歩成長していく」と発言した。モノづくりでは技能職出身の河合満副社長が「課題は匠の技能の伝承」と認識を示した。
質問は9人の株主から14問あった。所要時間は昨年と同じ1時間53分だった。
豊田章男トヨタ自動車社長の株主総会での発言から、背景にある危機感やメッセージを探った。
「グーグルやアップル、アマゾンに共通するのは『世の中をもっとよくしたい』というベンチャー精神だ」。
豊田社長はIT大手の社名を挙げ「新しいライバル」と表現。その上で「トヨタらしいやり方で未来に向けた取り組みを進める」とした。具体的には人工知能(AI)開発子会社の設立や社内カンパニー制、他社との連携を挙げた。
「来年の株主総会で、少しでも『明日を生き抜く力を備えることができました』と言いたい」。
トヨタは競争力確保に向け、設備投資や研究開発投資、株主還元をいずれも年1兆円規模で続ける。一方「それだけでは十分ではないかもしれない」と話し、M&A(合併・買収)を含む大きな事業再編も示唆した。
「自動織機を作った佐吉も自動車事業を興した喜一郎も、始まりはイミテーション(模倣)。謙虚に学び、自分たちの手で必死にカイゼンした」。
トヨタが創立80年を迎えることを念頭に、イノベーションにも言及。模倣に始まり、カイゼンし、技術革新につなげるとの持論を語った。「新事業を『攻め』とすると、80年間鍛えてきたビジネスは『守り』。攻めと守りが競い合い、競争力を上げるのがトヨタの強みだ」と強調した。
デンソーやアイシン精機などトヨタ自動車グループ各社の株主総会が本格化してきた。車両電動化や自動運転などの開発競争が激しくなっていることを受け、株主からは次世代の技術領域に関する質問が挙がった。20日にはデンソーが総会を開き、有馬浩二社長は「異業種を含めたオープンイノベーションを加速させる」と意気込んだ。
デンソーの総会には過去最高の1476人が参加。会社側は電動化分野の専門部署の設置などを報告した。子会社を含むモーター事業の方向性を聞く質問に、槇野孝和取締役専務役員は「今後は車両の電動化が加速する中、制御や電子化、モーター自体の磨き上げを進める」と答えた。
16日のアイシン精機総会には前年比34人減の493人が参加。自動変速機(AT)事業でEV時代の戦略を問われ、尾崎和久取締役は「ハイブリッド車(HV)開発で培ったモーターやインバーターの技術を転用し、EVに対応する」とした。15日の豊田合成総会でもEVへの対応策を問う声が挙がった。
一方、9日の豊田自動織機総会には過去最多515人が参加。今春買収した米、オランダの物流2社との相乗効果創出などに質問が集まった。13日のトヨタ紡織総会ではタチエスとの提携、女性幹部登用などの質問があった。
日産自動車が、資本提携する仏ルノー、三菱自動車との3社連合(アライアンス)での協業推進とともに、将来の経営人材の育成に力を入れている。各社で技術・事業基盤を共有化して、電動化など先進技術を導入した商品戦略を拡大。将来のリーダー育成のための環境整備も進める。持続的成長に向け、アライアンスの成果をより発揮できる地盤を強固にし、持続的成長への布石を打つ。
「アライアンスの今後の成否は、3社が持つ力を余すことなく発揮できるかにかかっている。その中で日産は中心的存在となる」。カルロス・ゴーン会長は27日に横浜市内で開いた株主総会で、今後の協業に気を引き締めるとともにアライアンスにおける日産の位置付けを強調した。
2016年に日産・ルノー連合に三菱自が加わったことで、3社の合計販売台数は16年に996万台まで増えた。事業規模の拡大に伴い、調達や生産などさまざまな部分でスケールメリット(規模効果)を得られる基盤を構築。日産として今後は自社が強みとする電動化などの先進技術に加え、三菱自との協業による商品開発も進める。西川広人社長は「『日産インテリジェント・モビリティ』を着実に進展させ、日産の“顔づくり”を進める」と意気込みを示した。
17年後半には、自動運転機能を搭載した新型電気自動車(EV)「リーフ」を投入するほか、電動駆動技術「eパワー」の導入車種も今後拡充する。将来は、三菱自動車の技術を活用したプラグインハイブリッド車(PHV)も商品群に追加するなどし、「電動化のパイオニアの座を強固にする」(ゴーン会長)方針だ。
また西川社長は、「日産の多様性を今後持続可能な強みとする」と強調。現在は役員の約半数が外国籍だが、外国籍社員のリーダー層が今後さらに活躍できる環境作りに取り組む。日本人に対しても、多様なマネジメント層をまとめるリーダーシップの醸成に力を注ぐことで「日本人の中から次、あるいは次の次の世代のゴーン会長のようなリーダーが育つ環境をつくる」とした。
(文=土井俊)
日刊工業新聞2017年6月28日
三菱自「益子CEO、結果で評価を」(ゴーン会長)
三菱自動車が、燃費不正問題に伴う社内改革と業績回復に向けて新たなステップを踏み出そうとしている。23日付で益子修社長兼最高経営責任者(CEO)が社長の肩書を外し、役職をCEOに統一。2016年に資本提携した日産自動車と仏ルノーを加えた3社アライアンス(連合体)による協業を加速する。問題再発防止に向けた企業風土の改善も一層進めて、国内市場での信頼回復につなげる。
「意識を新たにし、アライアンスの一員として改革とV字回復を成し遂げることに全力で取り組む」。益子CEOは23日に都内で開いた株主総会でCEOとしての決意を述べた。
同社は16年に燃費不正問題が発覚。それに伴い軽自動車の販売停止などの影響を受け、17年3月期業績は営業利益が前期比96・3%減の51億円、世界販売台数が同11・6%減の92万6000台に落ち込んだ。18年3月期は一転、V字回復の絵を描き、営業利益700億円、世界販売台数102万9000台を見込む。カルロス・ゴーン会長は「業績は来年、再来年にさらに改善する」と意気込み、20年3月期目標の営業利益率6%以上(17年3月期は0・3%)、世界販売台数125万台の確保につなげる。
目標達成への原動力となるのが、アライアンスの相乗効果の追求だ。既に日産と物流や購買、販売金融で協業しており、18年3月期は相乗効果として250億円を見込む。今後は両社の技術を相互活用して新技術・商品の開発に乗り出す。
益子CEOは日刊工業新聞社などの取材で、「(商品開発などの)進化したアライアンスにチャレンジできることは持続的成長を実現する上で大きな力になる」と力を込めた。ゴーン会長も今後のEV開発で「共通のモーターとバッテリーを採用する」と、幅広い分野での協業に意欲を示した。
また燃費不正問題の再発防止については、4月1日までに全31項目の不正防止策を実施。ただ益子CEOは「一応のけじめはつけたが、社会からの信頼回復はまだ長い期間を要する。継続的にフォローしたい」と強調。問題を風化させないために国内拠点に関連の展示物を設置するなどし、社員教育に生かす方針だ。
一方、株主総会では燃費不正問題に関して株主から「益子さんは責任を取って辞任すべきだ」などの厳しい声が相次いだ。益子CEOは「持続的成長に向けて最大限の努力をすることと、信頼回復を目指すことが私の責任」と説明し、カルロス・ゴーン会長も「三菱自動車が自分たちで再生する上で適した人物。結果を評価してほしい」とした。
日刊工業新聞2017年6月26日
三菱重工「MRJは日本全体の宝」
三菱重工業は22日、都内で定時株主総会を開き、株式併合など5議案を決議した。株主からは国産小型ジェット旅客機「MRJ」の開発動向や、日立製作所と協議している南アフリカ共和国での火力発電所建設の損失問題などの質問が出た。
5度の納入延期となったMRJ事業について宮永俊一社長は、「国際的なルールがどんどん変わり、世界に通用する安全性の証明に大変苦労している」と説明。その上で「MRJ事業を伸ばしていけば、日本全体の宝になる」と強調した。
日立に対して7600億円の請求をしている南ア案件については「詳細なデータの調査や整理に時間がかかっているが、今後も誠実に話をして解決に向けて努力する」(小口正範取締役常務執行役員)とした。株主総会は所要時間1時間55分、入場株主は1102人。発言株主は11人で、質問は21だった。
日刊工業新聞2017年6月23日
日本郵政「負の遺産を一掃」
日本郵政は22日、横浜アリーナ(横浜市港北区)で定時株主総会を開いた。傘下の豪物流大手のトール・ホールディングス(HD)の業績不振で、「のれん」代など計4003億円を一括減損処理し、2017年3月期に民営化後初の連結最終赤字に転落したことについて、長門正貢社長は「大きな損失を招き大変重く受け止めている」と陳謝した。その上で「負の遺産を一掃した」とし、業績回復に努める意気込みを示した。
質問した株主は13人。野村不動産HDの買収計画について、原口亮介専務執行役は「現時点で(買収計画を)検討している事実はない」とした。その上で「有効活用できる土地は持っており、今後、不動産事業を柱の一つに育てたい」と回答するにとどめた。
議案は、植平光彦かんぽ生命保険社長ら新任2人を含む取締役15人の選任に関する議案1件で原案通り承認・可決された。出席者は前年比356人減の838人、所要時間は同16分短い1時間33分だった。
日刊工業新聞2017年6月23日
ソフトバンク、孫さんが会長兼務
ソフトバンクグループは21日、都内で株主総会を開き、孫正義社長は半導体設計の英ARMホールディングスの買収について「後に人生を振り返り、カギになった買収を1社だけあげるとすればARMになるだろう」と述べた。IoT(モノのインターネット)の進展などにより「ARMはすごい勢いで伸びる」と強調した。また、11人の取締役選任など全議案を承認した。
株主からは孫社長の後継者問題について質問があった。孫社長は「私とともに5―10年重要な経営の役割を担っており、同じ方向で経営を引っ張ってくれる能力や人格に優れた者を指名する。10年かけて課題として取り組む」と説明した。出席者は2189人。所要時間は1時間53分。
また、総会後に21日付で孫社長が会長職を兼任すると発表した。
日刊工業新聞2017年6月22日
シャープ「(戴社長に)一日でも長くにいて下さい」
シャープは20日、台湾・鴻海精密工業の傘下に入って初めての株主総会と株主向けの経営説明会を堺市内の本社で開いた。戴正呉社長は株主との質疑応答で「来年は必ず配当できるよう頑張る」と述べ、2018年3月期の当期黒字化、復配に意気込みを示した。
東証1部復帰については「6月29日か30日に申請する予定」と明かした。復帰時期は未定だが「復帰後は社長を辞めるが、(20年3月期までの)中期経営計画は責任を取る。会長になって日本人の次期社長を育てる可能性もある」とした。中国や米国で同時に投資計画を進める液晶事業は「技術開発や亀山工場の設備に投資する」として積極姿勢を改めて強調。海外拠点では賞与体系を見直し国内同様に「信賞必罰」の報酬制度導入を進める。
総会は経営陣や鴻海への不信感が噴出した昨年と打って変わり、終始穏やかな雰囲気で進行。株主からは業績を大幅改善させ、株価を5倍近くに上げた戴社長の手腕を評価する声が多く「一日でも長くシャープにいて下さい」「他社にない商品(の発売)を大いにやってほしい」との声も上がった。
総会の所要時間は1時間7分で過去最長だった昨年の3時間23分から大幅に短縮。元堺ディスプレイプロダクト取締役の王建二氏や元NHK理事の西山博一氏を含む新任取締役5人の選任などを決議して終了した。
日刊工業新聞2017年6月21日
日本電産「2兆円体制が出来上がった」
日本電産は京都市内で開いた定時株主総会で、車載事業を統括する吉本浩之副社長執行役員と、家電産業事業を統括する大西徹夫副社長執行役員の2人を新たに取締役に選任した。成長の柱に位置付ける2事業の責任者を取締役に加えて経営体制を強化。総会後の会見で永守重信会長兼社長は「副会長2人と(事業担当の)副社長4人の全員がボード(取締役会)メンバーになった。これで(2020年度の売上高)2兆円体制が出来上がった」と力を込めた。
永守会長は30年度に売上高10兆円とする目標について触れ、同年度に「車載」「家電・商業・産業用」の2事業で7兆円を目指すと示した。
吉本副社長の選任理由では「若い頃から全体の経営もやっている。車載事業を引っ張っていく」と説明。日本電産トーソクを短期間で再建した手腕を高く評価した。大西副社長についてはシャープで経理畑を歩んだ経歴を評価した。
出席者は1037人で前回より79人増加。株主20人から質問があり、所要時間は2時間11分だった。
日刊工業新聞2017年6月19日
トヨタ「新しいライバル」意識
トヨタ自動車は14日、愛知県豊田市の本社で定時株主総会を開き、取締役報酬額改定など4議案を決議した。過去最多だった昨年を上回る5227人の株主が出席した。手元資金の活用法を株主に問われて豊田章男社長が「M&A(合併・買収)なども含めあらゆる選択肢を考える」と答えるなど今後の事業戦略を説明した。
取締役の報酬は月額から年額に改め、従来の月額1億3000万円以内から賞与を含めて年額40億円以内に大きく増額した。報酬総額が高い外国人取締役が将来増えても、支障が出ないようにする。
競争が激しい自動運転技術の質問には、伊勢清貴専務役員が他社との協業例も挙げつつ「この世界では絶対に負けないつもり」と強調した。
シェアの低い欧州についてはディディエ・ルロワ副社長が「市場環境は厳しい。一歩一歩成長していく」と発言した。モノづくりでは技能職出身の河合満副社長が「課題は匠の技能の伝承」と認識を示した。
質問は9人の株主から14問あった。所要時間は昨年と同じ1時間53分だった。
章男社長「トヨタらしいやり方で未来に」
豊田章男トヨタ自動車社長の株主総会での発言から、背景にある危機感やメッセージを探った。
「グーグルやアップル、アマゾンに共通するのは『世の中をもっとよくしたい』というベンチャー精神だ」。
豊田社長はIT大手の社名を挙げ「新しいライバル」と表現。その上で「トヨタらしいやり方で未来に向けた取り組みを進める」とした。具体的には人工知能(AI)開発子会社の設立や社内カンパニー制、他社との連携を挙げた。
「来年の株主総会で、少しでも『明日を生き抜く力を備えることができました』と言いたい」。
トヨタは競争力確保に向け、設備投資や研究開発投資、株主還元をいずれも年1兆円規模で続ける。一方「それだけでは十分ではないかもしれない」と話し、M&A(合併・買収)を含む大きな事業再編も示唆した。
「自動織機を作った佐吉も自動車事業を興した喜一郎も、始まりはイミテーション(模倣)。謙虚に学び、自分たちの手で必死にカイゼンした」。
トヨタが創立80年を迎えることを念頭に、イノベーションにも言及。模倣に始まり、カイゼンし、技術革新につなげるとの持論を語った。「新事業を『攻め』とすると、80年間鍛えてきたビジネスは『守り』。攻めと守りが競い合い、競争力を上げるのがトヨタの強みだ」と強調した。
グループは「オープンイノベーション加速」
デンソーやアイシン精機などトヨタ自動車グループ各社の株主総会が本格化してきた。車両電動化や自動運転などの開発競争が激しくなっていることを受け、株主からは次世代の技術領域に関する質問が挙がった。20日にはデンソーが総会を開き、有馬浩二社長は「異業種を含めたオープンイノベーションを加速させる」と意気込んだ。
デンソーの総会には過去最高の1476人が参加。会社側は電動化分野の専門部署の設置などを報告した。子会社を含むモーター事業の方向性を聞く質問に、槇野孝和取締役専務役員は「今後は車両の電動化が加速する中、制御や電子化、モーター自体の磨き上げを進める」と答えた。
16日のアイシン精機総会には前年比34人減の493人が参加。自動変速機(AT)事業でEV時代の戦略を問われ、尾崎和久取締役は「ハイブリッド車(HV)開発で培ったモーターやインバーターの技術を転用し、EVに対応する」とした。15日の豊田合成総会でもEVへの対応策を問う声が挙がった。
一方、9日の豊田自動織機総会には過去最多515人が参加。今春買収した米、オランダの物流2社との相乗効果創出などに質問が集まった。13日のトヨタ紡織総会ではタチエスとの提携、女性幹部登用などの質問があった。
日刊工業新聞2017年6月15日/21日