メモリ売却で焦る東芝、上場維持の執念は正しいのか

実態的には債務超過にあらず。誤解や無知を改める時

 東芝の半導体メモリー事業の売却手続きが難航している。5月30日には入札の意思を表明している産業革新機構が、正式決議を見送った。債務超過回避のため売却先の選定を急ぎたい東芝と、公的資金を投入する意義を探る政府側に齟ごが生まれ始めている。事態を複雑化させているのが、なかなか実態の見えてこない「日米連合」だ。他の入札者からは深まる混迷にいら立つ声も出ている。

姿見えぬ「日米連合」


 「ファンドと事業会社ではそもそも出資に対する考え方が違う。最初からそれを無視して、数字がまとまればいいと進めたことに無理があったのではないか」―。革新機構の幹部はいらだちを隠さない。

 東芝は19日にメモリー子会社「東芝メモリ」への2次入札を締め切った。投資ファンドの米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)や同ベインキャピタル、通信用半導体などを手がける米ブロードコム、台湾・鴻海精密工業の4陣営が応札し、東芝が希望する2兆円以上の提示額もあるという。2次入札の時点で意思表明をしていない新規の提案は、もう受け付けない姿勢だ。

 革新機構は「海外への技術流出を防ぐ」との経済産業省の意向を受け、資本参加の検討を始めた。KKRや日本政策投資銀行との連携を視野に、入札に参加する意思表明をしている。

 しかし出資提案の調整が長引き、正式決議には至っていない。2期連続の債務超過を避けるため2018年3月末までの売却完了を目指し、早期提案を求める東芝と、日本にメモリー技術を残したい経産省の間で、板挟みとなっている状況だ。

 革新機構にとってハードルはいくつかある。まず一つは東芝と米ウエスタンデジタル(WD)との関係だ。メモリー工場を共同運営するWDは第三者への売却は契約違反だとして、国際仲裁裁判所へ売却手続き差し止めを申し立てた。入札には参加していないものの、優先交渉権や過半出資を要求し単独での協議を続ける。

 ただNAND型フラッシュメモリー市場での両社のシェアを合わせると、33%を超える。WDの出資比率が高まれば独占禁止法の審査に時間がかかってしまい、期限内の売却完了が困難になる。東芝側は独禁法を回避するためにも、WDからの過半出資は避けたい考えだ。

 一般的には係争案件を抱えていないことが、デューデリジェンス(資産査定)の際の条件になる。しかし東芝とWDは「完全にケンカしている状態」(関係者)。革新機構側は「WDとの折り合いが付けばかなりの部分が解決する」(幹部)との見解を示す。
                    

WDとは膠着のまま


 東芝は24日に綱川智社長と、WDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)が会談した。しかし「その後も状況は変わっていない」(関係者)。

 WD側が譲歩する可能性も残っているが、経営権を握りたいとの考えは変えていないもようだ。ただしメモリー生産の大部分を担っているのは東芝のため「WDも共倒れは回避したいはずだ」(同)。

 周囲からは「これ以上話し合っても(落としどころを見つけるのは)無理なのではないか」との声も漏れる。東芝が事態打開のために繰り出す「次の一手」が注目されている。

 もう一つの大きな足かせが、国内の複数の事業会社が奉加帳方式で少額出資する「日本連合」の動きだ。日本にメモリー産業を残すべく、公的資金を導入するための“錦の御旗”に掲げられた。

 革新機構の出資提案に盛り込まれるとみられ、産業界でも「半導体は国としてやるべきだ」(財界関係者)、「メモリーは海外で戦える。国を挙げて支援すべきだ」(大手企業経営者)との声は多い。

 だがある財界関係者は「株主を説得できないだろう」と実現性に疑問を呈す。事実、その実態はなかなか見えてこない。

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(文=政年佐貴恵)

日刊工業新聞2017年6月1日

安東 泰志

安東 泰志
06月01日
この記事のファシリテーター

 東芝が半導体子会社東芝メモリの売却を急ぐ理由は、銀行からのプレッシャーと、上場維持への執念だ。しかし、東芝メモリの企業価値が2兆円内外なのであれば、東芝は実態的には債務超過ではないのだから、銀行は東芝の債務者格付けを破綻懸念先にする必要はなく、引き続き支えることができるはずた。
 また、東芝は6月の総会で決算を諮ることができないなど、そもそも上場維持できる状況にない。ここは上場維持に拘らず、内部統制を再構築した上で、まず東芝メモリをIPOさせ(この時点で東芝は債務超過を脱する)、然る後に本体も再上場すれば良いのではないか。上場廃止したら株券が紙屑にはるといった誤解や無知があるとしたら、早急に改めるべきだ。

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