米国抜きの「TPP11」に悩むベトナムとマレーシアの相違点

通商政策、欧米かアジア

 米トランプ政権の通商政策がベトナムやマレーシアなど東南アジア諸国に影を落としている。米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱により、同協定で米国への輸出拡大を狙っていたベトナムとマレーシアは新たな戦略策定が待ったなしだ。日本が米国抜きの11カ国でTPP発効を目指す動きもあるなか、ベトナムやマレーシアの通商政策が注視される。

 人材紹介会社ジェイエイシー(JAC)リクルートメントグループのベトナム法人によると、2017年1―3月期の同法人に寄せられたホワイトカラーの求人数は16年10―12月期と比べ19%減少した。

 米国のTPP離脱で輸出拡大期待が後退。ドン安の影響で成長率の低下懸念が浮上した。「海外からの直接投資も減る可能性があり、企業は採用に慎重になっている」(JACグループのベトナム法人)。

 ベトナムはTPPに代わり18年にも発効する欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)に望みをつなぐが、同国の輸出先に占める米国の割合は21・8%(16年)と、欧州のオランダ(3・4%)やドイツ(3・4%)などよりも圧倒的に高い。

 最大の輸出相手である米国と2国間でFTA交渉をする可能性もあるが、国内市場の一段の開放を迫られる恐れがあり、容易ではない。

 マレーシアも米国のTPP離脱の影響を受ける。米国はTPP加盟国のGDPの約60%を占めていたため、「離脱には失望した」(マレーシアのムスタパ国際通商産業相)と嘆く。

 ただ、同国の輸出構造はベトナムとは異なり、輸出相手の上位はシンガポール(14・6%)、中国(12・5%)で、米国(10・2%)は3位。日本(8・1%)よりも米国の割合は高いものの、今の最優先事項はシンガポールや中国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に移っている。ムスタパ国際通商産業相は「目標である17年末の交渉妥結を目指したい」と意気込む。

 マレーシアとベトナムは、日本が推進にかじを切った米国抜きのTPP(TPP11)という選択肢もあるが、「交渉は難しい」(ムスタパ国際通商産業相)ようだ。

 両国とも過去のTPP交渉では世界最大の市場である米国へのアクセスを盾に国内の小売り業などの開放を示した経緯があり、米国抜きでは国内への説得材料に欠ける。
(文=大城麻木乃)

日刊工業新聞2017年5月9日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
05月14日
この記事のファシリテーター

とはいえ、将来の米国の復帰を促す目的で他の加盟国が推進を求めてくると断れない可能性もある。TPP11への対応策を早急に考える必要がありそうだ。
(日刊工業新聞経済部・大城麻木乃)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。