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トランプ就任100日「自らハネムーン期間を返上した」

議会との関係が極めて複雑、いばらの道が続く
トランプ就任100日「自らハネムーン期間を返上した」

トランプ公式ツイッターより

 トランプ米大統領が29日に就任100日を迎える。環太平洋連携協定(TPP)からの離脱など大統領令で可能な施策は即行動に移しているが、医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案の採決など議会との調整が必要な分野では思い通りに進んでいない。日本の識者の評価は総じて低く、重要施策である法人減税も打ち出すが及第点とは言えない状況だ。

 米国では大統領の就任100日まではハネムーン期間とされ、通常ならメディアは新大統領への批判を慎む。しかし、トランプ大統領は選挙中から激しくメディアと対立した上に、オバマケアの廃案などを含めたプラン「100日行動計画」を推進。

 有権者に実行力を示すための強引な手法で「自らハネムーン期間を返上した」(丸紅米国会社の今村卓氏)ことから、100日を待たずにメディアの批判にさらされた。

 失点が目立つのは議会との調整だ。すでにオバマケア代替法案が議会の支持を得られずにいったん撤回を強いられた。さらに選挙戦で施策の目玉に掲げたメキシコとの国境沿いに新たな壁をつくる計画について、2017会計年度(16年10月―17年9月)での予算化を強く求めるトランプ大統領に対し、議会共和党は18年度へ先送りして手を打ちたい方針。

 予算審議は共和党のみならず野党・民主党の協力も不可欠な分野だが、もとより民主党は壁建設の予算化に否定的だ。

 米上下両院は28日、5月5日を期限とする1週間のつなぎ予算を可決した。トランプ大統領の署名を経て成立する。

 現在の米国の政権と上下両院の過半数は共に共和党が占め、政権と議会のねじれがない中での政府閉鎖となれば「77年のカーター政権以来」(みずほ総合研究所調べ)。与党政権でありながら窮地に追い込まれたことで、トランプ政権と議会との関係が極めて複雑なのが分かる。

 日本企業の関心が高い税制改革については、法人税や輸出企業の国内への利益移転に供う税率、個人事業主への所得税などの引き下げを打ち出す。だが、代替財源の確保が難しいなどの問題があり、ただでさえ関係の冷え込んだ議会の同意が得られるかは不透明だ。

 当初、代替財源として輸入品に課税する国境調整税の導入が検討されていたが、米小売り業界などからの強い反発で議論はトーンダウン。最近は政権内部から、経済が成長していれば財源は企業からの税収増でまかなえるとの楽観論が浮上。財政規律に厳しい共和党の伝統的な価値観との違いが浮き彫りになっている。
                

(文=大城麻木乃)
日刊工業新聞2017年4月27日の記事に加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
通商政策では、TPP離脱は日本にとって痛手だが、選挙公約を貫いた点で米国民は評価するかもしれない。ただ、北米自由貿易協定(NAFTA)では軌道修正がみられ、当初のメキシコに高関税を課す案は聞こえなくなった。電子商取引など時代に即した内容にアップデートするとみられている。当初は今春と予想されていた交渉開始の時期も、8月ごろにずれこむ見通しで遅れが目立つ。トランプ大統領にとっては、いばらの道が続きそうだ。 (日刊工業新聞経済部・大城麻木乃)

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