4月18日は「発明の日」 最新の知財動向、サクっと早わかり

 企業の研究開発活動や事業活動が急速に多様化しており、企業にとってはより高度な知財戦略の構築が必要となっている。また、研究開発や企業活動のグローバル化が進み、国内だけでなく海外での知財戦略の重要性も増している。新興国の経済的な存在感も高まっており、知財をめぐる社会情勢は大きく変化してきている。知財を取り巻く現状と方向性、国内外の動向についてまとめた。

 特許庁がまとめた「特許行政年次報告書(2016年版)」によると、日本の特許出願件数は徐々に減少する傾向にあり、2015年は前年比2.2%減の31万8721件だった。一方、特許庁を受理官庁とした特許協力条約(PCT)に基づく国際出願数は15年に4万3097件(前年比4.4%増)と過去最高を更新した。

 これまでの特許出願は国内偏重の傾向だったが、現在はPCT国際出願の活用が進んでいる。これは研究開発や企業活動のグローバル化が進み、国内だけでなく海外での知財戦略の重要性が増していることが考えられる。

 また、過去10年の推移を見ると特許出願件数や審査請求件数は減少傾向であるものの、特許登録件数は17万件前後を維持しており、出願件数に対する登録件数の割合(特許登録率)は増加傾向にある。こうしたことから、知財戦略は量から質への転換に伴い、出願人による出願の厳選が進んでいることがわかる。

海外の出願・登録状況


図1 世界の特許出願件数の推移

 世界の特許出願件数をみると、05年の170万3000件がこの10年で1.6倍に増加し、14年には268万1000件に達した(図1)。世界の出願件数の増加に伴い、登録件数も増加の傾向にある。05年には63万2000件だったが、この10年間で約1.9倍に増加し、14年には117万7000件だった。

 日本の出願人の世界での取得状況を見ると、日本から海外への特許出願件数は10年以降横ばいで推移し、14年は20万28件だった。05年からの10年間で見ると、1.2倍に増加している(図2)。このような傾向から、日本企業が事業のグローバル化に伴い、海外での権利取得に積極的に取り組んでいることがうかがえる。
図2 日本から海外への特許出願件数の推移

 特筆すべきは、日本出願人による世界全体での特許登録件数が、世界でトップを誇っていることだ。日本居住者による特許登録件数は29万7000件で1位となっており、2位の米国、3位の中国を大きく引き離している(図3)。背景には、日本出願人が国内だけでなく海外でも積極的に特許出願を行い、かつ高い割合で権利化に成功していると考えられる。
図3 出願人居住国別の世界での特許登録件数(2014年)

企業における知財活動の変化


 近年、自社での技術開発だけでなく、他社や大学など外部からの技術、アイデアを取り込みながら技術開発を促進するオープンイノベーションの活性化、イノベーション手法の多様化が進んでいる。

 製品開発や製造工程で、多くの企業や大学との協力関係や競争関係がより複雑に絡みあうようになってきた。こうした状況のもと、出願・権利化を行った上で、差別化領域である自社のコア技術をクローズ化(他社にライセンスせずに自社で技術を独占、技術を秘匿)しつつ、オープン化(他社への有償・無償ライセンス、公開)により製品関連技術を広く普及させることで、製品市場の拡大と競争力の確保を同時に実現することを目的とした「オープン・クローズ戦略」が日本企業にも浸透している。企業が特許出願を厳選しているのは、同戦略の浸透があると考えられる。

新興国における企業の知財活用


 企業活動のグローバル化は加速しており、日本企業による海外での事業活動は、先進国だけでなく新興国にも広がっている。しかし、新興国での事業活動において、模倣被害や権利侵害を懸念する企業も多い。

 その対策として、模倣・権利侵害を放置せず、被害拡大を防ぐこと、自社ブランドを守ることが挙げられる。だが、その対応は際限なくコストがかかるため、企業は対応の効果が薄いところには力を入れず、顧客の安全に関わる製品の模倣対策に経営資源を割くなどの工夫をしている。

 技術流出の対策としては、取引先の秘密保持契約や労働者との契約をしっかり締結するといった対応がある。このほか、コア技術は本国で扱い海外には出さない、技術流出の懸念から新興国への最新技術の導入を見送ったという対応も見られている。

先使用権の立証に有効


 現在、先使用権の立証のための手段として、タイムスタンプが注目されている。電子文書は容易に変更でき、改ざんの跡が見た目に残らないため、いざ係争となった時に先使用権の立証が難しい。そこでタイムスタンプを活用すれば、刻印されている時刻以前にその電子文書が存在していたことと、その時点から現在まで文書が改ざんされていないことを証明できる。

 仕組みはこうだ。企業は時刻認証業務認定事業者(TSA)の専用ソフトなどを利用して、電子文書(原本)を暗号化したハッシュ値(指紋のように固有の値)を導き出し、TSAに送信する。

 TSAが同ハッシュ値に時刻情報を加えた「タイムスタンプトークン」を企業に送り返す流れ。電子文書に変更を加えるとハッシュ値も変わる。当該文書のハッシュ値を計算して原本の値と同じであれば、改ざんされていないことになる。

 知財保護のための活用としては、先使用権の立証に有効である。先使用権を証明するためには、事業を準備、実施するに至った経緯を証明できる資料が必要。これらの資料がどの時点で発生して、時系列でつながるかを証明できるので、保有時点の立証における負担軽減効果が期待できる。

 3月末、特許庁所管の独立行政法人である工業所有権情報・研修館(INPIT)は、無償でタイムスタンプトークンを保管するサービスを始めた。民間企業が提供するタイムスタンプトークンを公的機関であるINPITが預かり、証明書を発行する。これにより証明力がさらに高まることが期待される。

 TSA1号認定を受けているアマノビジネスソリューションズは、タイムレコーダーの国内最大手・アマノを親会社に持つ。時刻配信・監査サービス事業を行っており、タイムスタンプサービスではシステムやソフトウエアを提供している。

 同社タイムビジネス事業推進部の森口亜紀部長によると「国が証明することにより、日本企業間だけでなく諸外国との係争にも有効だという期待がもたれている」という。INPITに預けたタイムスタンプトークンは10年ごとに保管期限の延長が可能。
知財活用特集は日刊工業新聞電子版で4月28日まで連載します

日刊工業新聞2017年4月18日「業界展望台」

明 豊

明 豊
04月18日
この記事のファシリテーター

特許庁は2017年度から審査の「質」に関する定量目標を設定した。審査速度はおおむね世界最速を達成したことから、今後は出願人とのコミュニケーションに重点を置き、質の高い審査対応で企業の知財活用の間口を広げる。出願人からアンケートを取り、審査官の対応などを5段階で評価。特許、意匠、商標ともに上位評価の割合で合計60%以上を目標値とする。世界の五大特許庁(日・米・欧・中・韓)で「質」に対する定量目標を設定するのは初めてという。

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