自動運転のカギを握る半導体メーカー、日米欧で激突

ルネサスの技術はどこまでクルマに入る込めるか

 ルネサスエレクトロニクスは6日、自社製の半導体やソフトウエアを使った自動運転車の試乗会を都内で開いた。前方の自動車と一定の距離を保って走行したほか、信号機と通信して赤信号を検知し停止するデモなどを行った。システムが故障しても自動運転を続け、安全な場所に退避する機能も披露した。

 自動運転車には、レーダーやライダー(光検出・測距)センサー、カメラを搭載。それらの情報から周辺環境や前方の車を検知し、マイコンが動作を制御する。各処理は三つのシステムで監視しており、故障やサイバー攻撃などの不具合があっても残りのシステムで正しさを判断できる。

 2018年にはさらにカメラやセンサーなどを追加し、より高度な自動運転機能を実現する計画だ。

年初の米見本市でデモ走行していた


 2017年1月、米ラスベガスで開かれた世界最大の家電見本市「CES」。ルネサスエレクトロニクスは今回、屋外に専用スペースを設け、初めて自動運転車のデモ走行を実施した。同社のマイコンやSoC(システム・オン・チップ)からなる自動運転用システム「R―ドライブ」を二つ搭載。消費電力は計約25ワットと低い。システムの一つが故障した場合、もう一方で補完するなど安全性を重視しており、担当者は「完全自動運転の実現を早めるのがゴールだ」と意気込んでいた。

 「ウチの半導体は隣のブースの会社より消費電力が低い」。CESでは、くしくも複数の半導体メーカーから同じ言葉が聞かれた。自動車メーカーの間では自動運転の高度化で爆発的に増える情報処理量への対応が開発のネックだ。半導体メーカーはこれを商機とみて攻勢を強める。

 米エヌビディアは独アウディ、独ZF、独ボッシュなどと提携した。エヌビディアの車載人工知能(AI)用プラットフォーム「ドライブPX2」を用いて自動運転のシステムや車両を開発する。3次元地図では独ヒアや日本のゼンリンとの協業も決めた。1月4日、CES会場で基調講演に登壇したエヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「AIはSF映画の世界から現実になった。新たなモビリティーの未来に近づける」と述べた。

 ボッシュで自動運転開発の責任者を務めるミハエル・ファウステンバイスプレジデントは「レベル4(完全自動運転)の実現にはコンピューターの電力消費が課題」との見方を示す。20年以降に高速道路での完全自動運転を実現する考えで、現在は2500人体制で運転支援システムの開発を進めていく。今後は電力消費の低減以外にもセンサーの感度向上や高精度3次元(3D)地図などを強化する。
CESでルネサスが実施したデモ走行に記者も試乗

変わる車内での過ごし方


 自動運転は、クルマの中での人の過ごし方も変える。16年に約5兆円を投じて自動運転用半導体に強いオランダNXPの買収を決めた米クアルコム。CESでは米グーグルやパナソニックなどと協力して開発中の次世代車載インフォテインメント(情報・娯楽)システムを公開した。グーグルの基本ソフト(OS)を欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の車に搭載。車内モニターをスマートフォンのように操作し、地図やエアコン制御が可能。またパナソニックの技術を生かし、音楽や映像の配信などもできる。

 黎明(れいめい)期に部屋一つほどの大きさだったコンピューターの処理能力が向上し、パソコンやスマホに小型化したように、自動運転車も少しずつ高度化するとみられる。完成車メーカーを頂点とする自動車の産業構造は変わり、大小問わず部品や半導体、電機メーカーなどが得意分野を持ち寄る水平分業型への移行が進んでいる。

2017年4月7日、1月18日付け日刊工業新聞記事を再編集

杉本 要

杉本 要
04月08日
この記事のファシリテーター

自動運転でクルマに載るシステムの情報量が爆発的に増える中、それを効率的に処理できる(そして小さい)半導体の開発が加速しています。年初のCESを取材しましたが、そこで見たのは半導体メーカーの「超」がつくほど激しい競争でした。「消費電力はうちの方が小さい」「あっちの言っている公称値は信頼できない」などなど。非常に生々しかったです。

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