トヨタが打ち出した“脱ベア春闘”の果実

異質の合わせ技で金額以上の効果は出るか

 大手とそれ以外の賃金格差の改善は、2017年春闘でも大きな課題の一つになった。16年に改善をみたトヨタ自動車グループの賃金格差の流れは、17年もグループ主要企業を中心に一段と進む。

 製造系で127組合が加盟する全トヨタ労働組合連合会(全トヨタ労連)。16日までの集計では78組合のうち、トヨタのベースアップ(ベア)1300円を超える額を獲得したのは34組合と4割に上る。

 16年に「トヨタ超え」となったのは9組合にとどまっていた。トヨタ超えのベアを16年に実施した部品メーカーの幹部は「従業員の士気向上などの点で金額以上の効果があった」と実感する。

 格差是正はサプライチェーンの裾野まで行き渡る力強い動きになるのか―。労使交渉の終盤で全トヨタ労連の佐々木龍也会長は「昨年以上に親会社や関係先を意識している経営者が多い」と語った。

 今年はまだ中小企業の組合の多くが回答を出していない。従来以上に、大手や中堅企業の回答を見ながら自社の回答を決める企業が増えそうだ。

 一方、トヨタは今春闘で“合わせ技”を用いた異質の回答をした。賃金の一律引き上げ分1300円と、効果が4年間限定の「ワンショットベア」1100円の合計2400円が、ベア相当の賃金制度改善分という回答だ。

 「できることは泥臭く、何でもやろうとして出した結論」。上田達郎常務役員はこう話す。1100円は家族手当の拡充前倒し分。21年1月までに段階的に上げる予定だった子育て世代への手当を17年4月に一気に引き上げる。

 トヨタは今春闘の当初から、ベアだけに焦点を当てる労使交渉を脱却する意向を打ち出していた。給与水準は既に日本企業の中で最高位の一角。また17年3月期は業績の下振れが予想される中、前年の1500円を上回るベアは難しいとの判断も働いた。

 この動きにグループ主要各社も追随。デンソーやアイシン精機、豊田自動織機、トヨタ車体の4社がワンショットベア実施を回答した。

日刊工業新聞2017年3月17日

杉本 要

杉本 要
03月19日
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ただ、こうした手厚い手当は、中小企業が実施するのは簡単ではない。変わる大手の春闘に、中小企業経営者は新たな対応が迫られている。

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