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糖尿病の新しい治療法につながるか。肥満が原因の高血糖の発症メカニズムが明らかに

東京医科歯科大などがマウスで確認
 京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の小川佳宏教授(九州大学大学院医学研究院教授)らは、肥満を原因とする高血糖の発症に、肝臓内の細胞と白血球との接着が関わることを突き止めた。肥満のマウスに、肝臓内の細胞と白血球との接着を抑える薬を投与すると、高血糖が改善した。糖尿病の新しい治療法につながる可能性がある。

 大阪大学、鶴見大学などとの共同研究。成果は15日、米科学誌セル・リポーツ電子版に掲載される。

 研究チームは、肝臓内の血管と肝細胞の間にある細胞「肝類洞内皮細胞」(LSEC)に着目。白血球の一種「顆粒(かりゅう)球」が緑色の蛍光を発するように、遺伝子改変した肥満マウスを用意。肥満マウスの肝臓を観察すると、肥満でないマウスよりも血管の壁に顆粒球が多く接着していた。

 解析の結果、肥満マウスのLSECの表面に、細胞同士の接着を担う分子「VCAM―1」が多数発生。これに別の分子「VLA―4」が結合し、VLA―4を介してLSECと顆粒球が接着することが分かった。LSECと接着した顆粒球は、肝細胞と接触。その結果、肝細胞からの糖の産生が増え、高血糖になることが判明した。

 VLA―4の働きを抑える薬を肥満マウスに投与すると、LSECと顆粒球の接着が抑制され、高血糖が改善した。小川教授は「薬の投与期間中、副作用は確認されなかった。臨床応用に向けても、VLA―4を阻害する系を優先的に検討していきたい」としている。
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日刊工業新聞2017年3月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
血管の壁に顆粒球がくっつくところを想像したら、恐ろしくなりました。やはり肥満には気をつけなければならないようです。

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