普及テンポが鈍い燃料電池。京セラ「マーケットを自らつくる」

店舗向けを製品化。国内・海外同時に燃料電池文化をつくる必要あり

 京セラは、店舗のような小型ビルの電源に活用できる業務用燃料電池を製品化した。初年度から500台を販売する高い目標を掲げる。先行する家庭用燃料電池「エネファーム」は年4万台の市場規模になったが成長は鈍く、メーカーは2社だけとなった。国の燃料電池への期待は高いが、市場拡大はこれから。京セラの新規参入が起爆剤となるのか。

 京セラが発売した燃料電池は、電気を生み出す基幹部品「セルスタック」の電解質にセラミックスを使った固体酸化物型燃料電池(SOFC)。発電効率は52%、出力は3キロワットで、エネファーム4台分の電気とお湯を作る。同社の濵野太洋執行役員は「低圧でありながら、電気をたくさん使うゾーン」と狙う市場を明かす。

 具体的にあげると住宅と店舗が一体となった歯科や理髪店、他に郵便局やコンビニエンスストアなど。普通の家庭と同じ10キロワット未満の電力契約でありながら、業務でも使うため家庭以上に電気を消費する小型ビルがターゲットだ。

 家庭用以外の燃料電池としては、富士電機が出力100キロワットを製造・販売している。ビルや工場の主力電源として使える発電能力がある。

 京セラは富士電機製との競合を避けて、小型な3キロワットにした訳ではない。「エネファームのセルスタックを流用できる」(濵野執行役員)のが理由だ。京セラはアイシン精機にセルスタックを供給し、アイシン精機が貯湯タンクなどを取り付けてエネファームに仕上げている。

 京セラは3キロワットの業務用燃料電池にエネファーム4台のセルスタックを搭載。アイシン経由で市場で使われている実績があり、開発や性能評価の期間を短縮できた。3キロワット機が順調に受注ができれば、量産効果によってセルスタックのコスト削減が進み、エネファームの価格低減が期待できる。

 ただし、燃料電池市場は厳しく、「マーケットを自らつくる」(同)と意気込む。国は2030年度にエネファーム530万台の導入を見込む。

 だが、17年5月に累計導入が20万台に達したばかり。年40万台近くを設置しないと530万台に到達しない。7月には東芝グループが撤退を表明し、パナソニックとアイシンの2社になった。

 業務・産業用にも国の開発・普及計画があり、三菱日立パワーシステムズも8月、ガス発電機と複合した燃料電池を製品化した。相次ぐ参入が市場に勢いを生むのか。京セラの初年度目標500台の達成が、今後の市場を見通す試金石となる。
                        

(文=松木喬)

日刊工業新聞2017年9月6日

松木 喬

松木 喬
09月10日
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水素社会は国の方針です。エネファームの普及テンポからすると、まだまだ本腰ではなさそうな気がします。水素社会ではなく「分散電源社会」という視点から燃料電池を見ても、普及テンポは鈍い気がします。新型リーフが発表されました。燃料電池車の巻き返しはあるのか(押されている意識はないかもしれませんが)。これから、各社から業務用・産業用燃料電池が発売される予定です。国内・海外同時に燃料電池文化をつくる必要があるでしょう。ガラパゴス化させないように。

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