ソフトバンクグループの資産や強みが生かせる「仮想発電」

九州で大規模実証、AI・IoTで家庭用蓄電池制御

 ソフトバンクグループのSBエナジー(東京都港区、孫正義社長)は、小さな電源を束ねて火力発電所のように機能させる仮想発電所(バーチャル・パワー・プラント=VPP)の実証事業を九州で始めた。人工知能(AI)とIoT(モノのインターネット)を駆使して家庭の蓄電池を制御し、電力の過不足を瞬時に解消する。九州を舞台に大規模実証を展開し、早期の事業化を目指す。

 SBエナジーの事業は、経済産業省のVPP構築実証事業に採択された。新電力を中心とした8社と連携する。電力の需給調整に連携先が契約した家庭の蓄電池を使う。1000台の活用を目指しており、VPP実証としては大規模となる。

 2018年2月までの実証中、電力会社に見立てたサーバーが需給調整を依頼。要請を受けたSBエナジーが、新電力を経由して蓄電池に放電を指示する。調整が必要となる15分以内にサーバーが依頼を発信し、短時間で対応できるか試す。

 蓄電池1台は小さくても、10万台を束ねると火力発電所に匹敵する電力を供給して電力不足を解消できる。VPPが実用化されると調整力となる火力発電所への投資を抑えられ、燃料費も減らせる。

 SBエナジーの平尾宏明VPP事業推進室長は「蓄電池1000台を使って実証ができれば、技術の実用性を見て取れる」と、今回の実証への思いを語る。

 AIは蓄電池の充放電を制御する“司令塔”。常に充電残量を監視し、調整に使える蓄電池を選ぶ。AIと3G回線で通信するIoT端末を蓄電池に設置。ブロックチェーン(分散型台帳)技術も使い、蓄電池同士の機器間通信も試みる。

 SBエナジーは16年度、離島の壱岐(長崎県壱岐市)でVPP実証に取り組んだ。島内の太陽光発電所の発電が増えすぎたタイミングで、蓄電池や電気自動車に充電を指示。増えた電気を蓄電池にためることで、天候で変動する太陽光の出力を調整した。

 九州全域を舞台にした今回の実証でも、太陽光発電所3―4カ所を対象に、蓄電池を使った出力調整を試す予定。太陽光の普及が進む九州は出力調整が迫られており、本番さながらに技術を試せる。

 SBエナジーは再生可能エネルギーの大量導入を支えるインフラとしてVPPに期待する。他にも5グループが経産省の実証に採択されている。

 SBエナジーは「VPP事業推進室」を立ち上げており、今回の実証で一気に事業化へ前進させる。
                                      

(文=松木喬)

ファシリテーター・八子知礼氏の見方


 AIもIoTもブロックチェーンもフルに使って構築するVPP。技術的要素としてはできるものが揃っているものの、これまではなかなか取り組めなかったのが実際にここまでの大規模でやってしまうところがソフトバンクらしい。
 
 次世代エネルギー融通の本命なるべく大いに期待が持てる取り組み。このアーキテクチャは電力だけでなくても使えるはずなので地方で必要とされる様々なリソースの自律分散制御の視点でも注目してます。

日刊工業新聞2017年8月30日

松木 喬

松木 喬
08月30日
この記事のファシリテーター

今年の経産省の仮想発電所実証事業がスタートしました。SBエナジーのパートナーはlooopなど新電力です。新電力は日常的に過不足(インバランス)の解消が迫られており、SBエナジーとしては実証でありながら本当のニーズを探れる場です。それにしても仮想発電所の技術にはAI、IoT、ブロックチェーン、3Gが登場するため、ソフトバンクグループの資産・強みが生かせそうです。

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