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宅配貨物の急増、製造業にどのような変化をもたらすか

主力の「紙」生産が停滞する中、段ボールは特異な動き
 最近、ニュースやワイドショーなど、いろいろな場面で人手不足という言葉を耳にするが、その中でも特に注目を集めているのが「宅配貨物量」の急増を背景とする配達員の不足ではないだろうか。

 今回は、第3次産業活動指数と生産動態統計調査から、宅配貨物運送業の動向とその影響が産業間のつながりを通じて「意外なところ」に出てきている状況を見ていきたい。

 まず、第3次産業活動指数を使って宅配貨物運送業の推移を見てみます。ここでは宅配貨物運送業が、宅配貨物運送業を除く貨物運送業(その他の貨物運送業)と比較してみた。

 2010年以降の動きをみると、一貫して宅配貨物運送業の動きが強い傾向に変わりはないが、注目すべきは2015年、2016年の動きだ。

 2015年は、それまで上昇していたその他の貨物運送業が低下に転じた一方で、宅配貨物運送業は前年比2.1%と変わらず上昇を続けている。

 さらに、2016年については2年連続で低下となったその他の貨物運送業に対して、宅配貨物運送業は前年比6.4%と上昇幅を拡大させ、急上昇している。
                       
             
 宅配貨物運送業が急上昇している主な要因について、インターネットの普及に伴うネット通販の影響が大きいという話がよく聞かれる。大手通販企業が、注文してから短い時間で商品が届くサービスを開始し、話題となったことは記憶に新しいことと思う。

 そこで、生産動態統計調査を用いて段ボール原紙の「通販・宅配・引越用」加工への投入数量の動向を確認してみたい。

 まず、段ボール原紙の「通販・宅配・引越用」加工への投入数量は、ここ数年の間、一貫して増加していることが分かる。2016年も、前年比6.3%と力強い動きとなっており、良く目にする通販用の段ボール箱の生産に勢いがあることが分かる。
                
            
 さらに、製箱用の段ボール全体に占める「通販・宅配・引越用」加工への投入数量の構成比をみると、2010年の3.2%から2016年は4.9%、2017年第1四半期には5.4%と確実に存在感を増している。
              
          
 実は、鉱工業指数における紙・パルプ・紙加工品工業の生産活動は、電子化の進展に伴うペーパーレス化のため、主力の「紙」生産が停滞している(2016年は3年連続の低下)。

 紙の生産が停滞する中で、段ボール、特に、「通販・宅配・引越用」の段ボールの生産は特異な動きを見せていると言えるだろう。

 インターネット通販の急増によって、宅配貨物運送業が大きく上昇しており、その影響は段ボールの用途別生産の変化にも明確に表れている。

 宅配業界では、宅配貨物量の増大に伴う配達員の不足が大きな課題となっており、最近では、宅配ボックスの導入促進やドローン宅配の導入など、宅配業界に新たなイノベーションが巻き起ころうとしている。宅配事業におけるイノベーションが、この先、製造業にどのような意外な変化をもたらすのか、注目していきたい。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
実は原燃料費の高騰が、製紙業界の業績を圧迫している。特に大きく影響しているのが古紙相場の上昇。中国向けの輸出価格に引っ張られる格好で、2017年初めから過去最高値水準で高止まりし、5月以降、再び上昇する動きとなっている。日本の紙は、原料に占める古紙比率が約6割。中国では環境規制の強化で廃業に追い込まれる製紙会社が出ている一方で、インターネット通販市場の拡大などで段ボールや古紙の需給が逼迫している。中国向け古紙輸出の増加が日本の相場上昇を招き、「コストアップの追い打ちを受けている」(馬城文雄日本製紙連合会会長=日本製紙社長)状況だ。

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