【連載】ベンチャーに学ぶ!大企業イノベーション(プロローグ)勇気ある挑戦者たち

text=本田知行(トーマツベンチャーサポート)イノベーションが生まれない3つの問題点

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 ●日本企業においてイノベーション創出環境が整備されていない
日本企業においてイノベーションの必要性が訴えられて久しいが、優秀な人材を有し、豊富な資金力、技術力を有する日本企業からは中々イノベーションが生み出されていない。実際、かつてはトップクラスであった日本のイノベーション創出環境(エコシステム)に対する国際的な評価は、近年著しく低下している。(図)

 なぜだろうか?
 問題は組織によって異なると考えられるが、以下の3つの問題がある場合が多いと感じる。

 ■1点目は人材育成の問題である
 企業は成長するにつれて、いかに効率的に事業を運営するかが目標となり、必然的に決まった業務を効率的にこなせる人材が求められるようになる。

 一方で、リスクをとって新規事業を起こすにはどういった人材がマッチするのだろうか?
起業家と大手企業の人材を比較すると、以下の点が必要になると考える。

 まずはマインドである。
 大手企業では仕事が与えられるケースが多いと思うが、起業家は自身の原体験に基づき、解決したい課題を見つけ、自己資金を投下し、リスクをとって事業を推進している。いわば、人生のライフワークを見つけて、それに打ち込んでいるのである。

 大手企業の人材にはそういった人はいないのだろうか?
 答えはNoである。私も様々な大手企業において新規事業の講演をさせていただくが、多くの参加者はこういったマインドを持っている。一方で、そういった視点で教育や人選が行われることは少ない。マインドを持った人材を発掘し、育成することが重要である。

 次に社内外のネットワークである。
 新規事業立上げにおいては、ビジネスモデルの構築、事業計画の策定、プロトタイプの作成、フィジビリティスタディなど様々なスキルやノウハウが必要となる。これを実際に行うには、強みを持った社内外の人材や企業を巻き込んでいく必要がある。一方で、大手企業の従業員は社内外のネットワークが不足しているケースも多いことから、事業立上げにおいてサポートが必要となる。

 最後に経営スキルである。
 大手企業にもMBAなどで経営スキルを座学で学んでいる方が多くいらっしゃる。一方で、それを実践するケースは多くはない。おそらく役員クラスになった時などではないだろうか。新規事業ではそういったMBAの知識をフルで実践することが求められる。実践できる経営するキルを身に付けているかどうか、実践しながら身に付けられるかどうかが重要である。

 ■2点目は外部活用の問題である
 オープンイノベーションが叫ばれて久しいが、未だ海外先進国に比べて、日本の大手企業の外部活用はまだ少ない。トーマツベンチャーサポートが野村證券と運営するMorning Pitchは毎回100名を超える大手企業の新規事業開発担当者が参加するイベントであり、非常にベンチャー企業を中心とした外部活用の機運が高まってきているものの、まだまだその活用は不十分である。その背景には、自前主義からの脱却ができない企業、また提携において企業文化の違いやスピードの違いの壁を乗り越えることができないケースが多い。

 ■3点目は仕組みの問題である
 上記の社内起業家が活躍できるように、また外部を活用するために情報収集したりするリソースの確保、新規事業を加速させる支援体制・制度の整備などが不十分なケースも存在する。イノベーティブな組織においては、それを可能にする仕組みが存在し、また過去の仕組みにとらわれることなく随時PDCAを高速回転させ、仕組みを変革している。イノベーティブな組織であるためには、それを支える仕組みが存在するのだ。

 ●勇気をもって挑戦し続ける社内イノベーターが存在する
 そんな日本の大手企業において、様々な壁を突破しながら、新規事業にチャレンジする社内イノベーターが存在する。彼らも新規事業を立ち上げる上で、様々な苦労を経験している。一方で、会社を変革する、お客様により良いサービスを提供するなどマインドを持った人材が、周囲を巻き込みながら成功を勝ち取っている。

 今回、ニュースイッチでは、このような社内イノベーターに焦点を当てる。どのような想いで、どうやって組織の壁を突破したかに迫ることにより、読者の皆様にも、新規事業を起こすマインドと、組織の壁を突破する巻き込み力を学び、少しでも多くのアクションにつながることにより、イノベーションが日本に生まれる手助けとなればと考えている。

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

ファシリテーターの本田さんをナビゲート役にいよいよ今日から大企業イノベーションの連載がスタートします。1回目はTBSの片岡さん。とても具体的な取り組みを語ってくれました。それを余すところ無く紹介しています。その前に本田さんが簡潔にまとめてくれた大企業におけるイノベーションのポイントを読んでから、TBS編をどうぞ。

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