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被災地・女川の水産加工団地がスマートコミュニティーに生まれ変わる日

日立が技術実証。大型冷蔵庫の運転を遠隔から調整、団地全体の電力を工場のように運営
被災地・女川の水産加工団地がスマートコミュニティーに生まれ変わる日

復興が進む水産加工団地

 ★新聞にはない解説&用語説明付です。参考にして下さい。

 日立製作所は宮城県女川町の水産加工団地のスマートコミュニティー化を目指した技術実証を始めた。加工業者の大型冷蔵庫の運転を遠隔から制御するエネルギー管理システムの技術を検証する。最終的に各業者が持つ大型冷蔵庫をまとめて制御し、団地全体の電力需要を抑える。復興支援に貢献し、他の地域の水産加工団地への展開も視野に入れる。

 実証には日立産業制御ソリューションズ、東北電力グループの東北エネルギーサービスが参加し、女川町などが協力する。水産加工団地は13業者の進出を想定して復興整備が進む。日立などの構想では団地が電力会社と契約し、電力をまとめて購入して業者に配電する一括受電(※1)を計画。個別に契約するよりも電力料金を抑える。

 業者によって容量が違い、消費電力が異なる大型冷蔵庫に着目。構想ではエネルギー管理システムが減らしたい電力量に応じて大型冷蔵庫を順番に一時停止する。大型冷蔵庫の使用が同じ時間に集中しないように調整し、団地全体の最大電力需要(ピーク電力)の目標値(※2)を超過させない。

 大型冷蔵庫には遠隔から制御できる装置を取り付ける。2015年度は複数台の大型冷蔵庫で実証し、団地全体に拡大した時の効果を検討する。大型冷蔵庫の停止は短時間にとどめ、魚類の品質を保つ。
 
 実証は経済産業省の次世代エネルギー技術実証事業。参加する加工業者がメリットを共有できる運営形態の確立など、実現に向けた課題はいくつかある。水産加工業者は製氷器などエネルギーを多く使う設備があるが節電の余地が少なく、港からの入荷の時間が集中するなどピークシフトもしづらい。確立を目指すスマートコミュニティーは各地の水産加工団地共通の課題解決が期待できる。

 <解説>
 例えば大型冷蔵庫が使う電力が50kw、100kw、150kwとします。団地全体としてカットしたいピーク電力が時系列に100kw、150kw、50kwであれば、その大きさに合わせて冷蔵庫を一時停止していくことを考えています。

 ※1 マンションで増えている受電形態。通常なら入居世帯が個別に電力会社と契約しますが、一括充電はマンションが電力会社と契約します。家庭の電力料金は1キロワット時が約26円(東電の従量電灯第2段階)ですが、マンション1棟となるとオフィスビルと同じ業務用電力の1キロワット時15-20円が適用されます。つまり、まとめることで安く電力を調達して入居世帯に配電できます。水産加工団地も一括受電で購入する電力の単価を下げようと考えています。

 ※2 ピーク電力は一度に使う電力の大きさです。単位はkwです。電力の入り口の広さと考えても良く、狭い(kwが小さい)ほど電力の基本料金が安くなります。一括受電で団地が電力会社と契約するわけですかから、1業者でもピーク電力の目標を超えてしまうとアウトです。


「スマートコミュニティJapan2015」が6月17日開幕します(会場=東京ビッグサイト)
日刊工業新聞2015年06月16日 建設・エネルギー・生活面に加筆
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
派手さはありませんが、小さなイノベーションであっても地域課題の解決につながるのであれば価値があると思います。

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