日産の志賀副会長を産業革新機構のCEOに招聘した狙いは何か?

ルネサスの出口戦略で自動車業界との調整役としての期待も。官邸の意向働く?

産業革新機構の会長兼CEOになる志賀氏
 官民ファンドの産業革新機構は12日、日産自動車の志賀俊之副会長(61)を会長兼最高経営責任者(CEO)として迎え入れる人事を発表した。能見公一社長兼CEO(69)は退任し、勝又幹英専務執行役員(55)が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格する。6月30日付で就任予定。同機構は2009年7月の設立から6年経過し、人事の刷新に踏み切ることにした。

 勝又氏は金融機関や民間の投資ファンド時代の経験を生かし実務を取り仕切る。志賀氏は日産自動車の最高執行責任者(COO)などを経て、2013年から副会長を務めている。非常勤だが、日本自動車工業会の会長を務め、現在は経済同友会副代表幹事の職にあるなど産業界との幅広い窓口として期待される。

 なぜ志賀氏?

 能見社長の退任説は早くから噂されていた。能見氏は前の民主党政権時代の人事で「大株主である政府、安倍政権との関係は必ずしも良くなっかった」(経済界首脳)とも言われている。能見社長の退任は既定路線として、なぜ会長兼CEOとして外部から志賀氏を招聘したのか。

 まず考えられるのが、同機構傘下で経営再建が進む半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの出口戦略への対応。同社はリストラの効果が出始め、2015年3月期は最終利益が823億円(前期は52億円の赤字)と2010年の発足以来初めて最終利益が黒字転換した。

 ルネサス救済にあたっては、同機構のほかトヨタ自動車を始め8社の民間企業が出資した。8社は「ロックアップ」(株式を売却できない契約)の対象ではないため、今年に入ってニコンがすべて保有株式(約0・2%)を売却。69%を保有する産革機構を含め今年9月にはロックアップの期限が来る。今後、ルネサスは成長戦略に向け他社との提携なども選択肢になる。

 出口戦略でカギを握るのが、民間企業の主要株主である自動車業界の意向。当初民間8社が出資した約117億円のうちトヨタが50億円、日産自動車が30億円、デンソーとケーヒンが10億円とその比率が圧倒的に多い。自動車のエンジン制御で重要な技術であるマイコンを、ルネサスが大半を供給しているからだ。

 政府や自動車業界にとって、「日の丸半導体」会社として救済したからには、安易にルネサスが外資と組むことをよしとしないだろう。その点、志賀氏はトヨタの豊田章男社長とも良い関係を築いており、自動車業界や政府などとの調整役には適任とみられる。

 今回、志賀氏に白羽の矢を立てたのは誰か。「産革機構の人事は官房長官マター」(関係者)ともいわれており、菅義偉官房長官という可能性が高い。菅氏の選挙区は日産の本社がある神奈川県。さらに菅氏とともに安倍政権を支える甘利明経済再生相も神奈川が地元だ。

 産革機構はルネサス以外にも「日の丸液晶」会社のジャパンディスプレイの筆頭株主であり、経営危機にあるシャープと液晶事業の統合が依然燻っている。志賀氏が官邸と呼吸を合わせながら、どのような役割を演じていくのかが注目される。

 <プロフィール>
 志賀俊之(しが・としゆき)1976年大阪府立大経卒、同年日産自動車入社。00年常務執行役員、05年COO、13年副会長。和歌山県出身。

 勝又幹英(かつまた・みきひで)1983年東大教養卒、同年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。07年ニュー・フロンティア・キャピタル・マネジメント社長、10年モバイル・インターネットキャピタル社長、15年産業革新機構専務執行役員。愛知県出身。
 

 

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明豊
デジタルメディア局
局長

自動車業界を担当していた時に、志賀さんへ頻繁に取材した。ゴーン氏のトップダウン経営にあって、日本の経営者とのパイプ役は志賀さんが担っていた。自工会の活動などを通じトヨタの章男社長とも信頼関係を築いている。産業革新機構の顔として、どのステークホルダーの意向を優先していくのか。胆力が試される。

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