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ダイエット中もお米が食べたい人へ!糖分の吸収抑え、肥満を予防する「難消化米」

意外に肥満率が高い沖縄で開発
ダイエット中もお米が食べたい人へ!糖分の吸収抑え、肥満を予防する「難消化米」

開発中の難消化米(OIST提供)

 地方にある大学の研究で主要テーマの一つとなるのが、最先端分野の追求と地域ニーズへの対応の両立。沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、糖などの吸収を抑えて生活習慣病の予防につなげる「難消化米」の開発で注目を集めている。DNAシーケンサーや人工気象器を使って新品種開発の期間を短縮。肥満を気にする県民向けに、加工食品の開発も進めている。

 コメの育種では従来、より栄養価の高いものを目指してきたが、飽食の現代は事情が違う。OISTが注目したのは、消化されにくいでんぷんを多く含む難消化性のもち米「アミロモチ」だ。血中コレステロールを下げる米油の機能性成分、γ―オリザノールの含有も多い。
 70年代にある種の変異体として九州で見つかり、要因となる二つの遺伝子部分も明確だ。ただ、粒が小さいためコメとしての評価は低く、数年前に品種登録したばかり。メカニズムは分かっていないが、マウスの実験で血糖値上昇抑制や悪玉コレステロール低下効果が出ている。

 一方、沖縄では離島など稲作農家が少なくないが、本土栽培向きの品種を使うため収穫量が多くない。また健康長寿といった同県のイメージとは裏腹に、ステーキ好きなどの食生活を反映してか肥満率が全国平均を上回る。
 そこで浮上したのが「難消化米を沖縄栽培向きに品種改良し、県民の健康支援に生かそう」というプロジェクト。南西地域産業活性化センター(那覇市)が中心となり、2012年にスタートした。

 育種グループのOISTが交配対象に選んだのはアミロモチと、沖縄の気候に合った「ゆがふもち」だ。遺伝子配列の違いをDNAシーケンサーで確かめ、掛け合わせを繰り返す中で、遺伝子全体はゆがふもちでアミロモチの重要遺伝子が入ったものを選抜。「どれくらい変わったか、チェックしながら効率的に育種した」と佐瀬英俊准教授は説明する。
 受粉の10日後、胚(はい)を取り出して培養する「胚レスキュー法」により世代促進をスピードアップ。さらに日照や温度を制御した人工気象器を活用し、2年で7世代を経て新たな系統を確立した。15年2月に圃場(ほじょう)栽培試験を始め、二期作の沖縄でまもなく初収穫の予定だ。

 通常のコメより油分が多いことから、米粉にしてパンや菓子に活用する。臨床研究の結果は秋に発表する予定。事業化に取り組むOISTの山田真久シニアマネージャーは「糖尿病や脂肪肝など、薬での治療直前の人での活用が有望。食パン1日3枚で効果が出ると期待される」と説明する。健康への効果を表示できる「機能性表示食品」として16年度をめどに品種登録する考えで、県内の加工食品会社や生協と商品開発を進めている。
 (編集委員・山本佳世子)

※金曜日に掲載中の連載「探訪・先端研究」より
日刊工業新聞社2015年06月12日 科学技術・大学面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
最近注目されている「糖質制限ダイエット」。弊社でも実施中の社員が数名… お米はどうしてもおいしいので、ダイエット中でも少しは気兼ねなく食べれるのはよいですね。

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