最高益・日立に見えてきた課題。“稼ぐ速さ”弱く、とにかくキャッシュ、キャッシュ!

主要事業で投下資金の回収期間目標を設定。戦略投資に備えGEやシーメンスなどに対抗

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事業説明会でプレゼンする情報部門担当の斉藤裕副社長
 日立製作所は11日、情報・通信システムなど主要7事業の戦略説明会を開いた。2015年度から、投下資金の回収期間を示すキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の目標値を新設。15年度に14年度比5日減の76・5日に短縮し、資金の回収速度を速めて稼ぐ力を強化する。また課題のヘルスケア事業は成長に向け、M&A(合併・買収)を通じて18年度までに売上高1000億円規模を積み上げる方向で検討する。

 日立は毎年、7事業の戦略や目標値を更新している。今回の注目点は各事業にCCCの目標値を設けたことだ。鉄道車両や発電設備など回収期間の長い事業が多く、企業買収など成長投資に使う資金が不足している。東原敏昭社長も常々「課題はキャッシュ(の創出力)。CCCにこだわる」と指摘する。手元資金を手厚くし、米ゼネラル・エレクトリック(GE)など買収攻勢を強める海外勢に対抗する。

 事業戦略では、自動車部品を製造するオートモティブシステム事業の18年度目標を公表した。達成に向けて自動運転や電動化への対応を強化するほか、20年度に全世界の営業人員を14年度に比べ10%増やす。また14―16年度の累計投資額を08―10年度比3・1倍の2800億円に拡大。日立傘下の事業会社の関秀明社長は「自動運転分野でのM&Aは否定しない」と話す。

 一方、インフラシステム事業は15年度の売上高目標1兆円を18年度に先延ばしする。円安に伴う日系企業の海外投資抑制や、原油価格の下落による原油・ガス関連事業の停滞が響いた。今後、医薬・食品や上下水道など成長市場に注力するほか、産業機器の製品力も強化し利益率を高める。「リスク案件への対応も強化する」(酒井邦造執行役専務)という。

 13―15年度の中期経営計画では売上高9兆9500億円、営業利益率6・8%を目標に設定。将来の営業利益率10%を目指し、ITとインフラ技術を組み合わせた「社会イノベーション事業」に注力している。

 社会イノベーション事業の中核を担う情報・通信事業は、国内事業の停滞などで成長が鈍化している。15年度に100億円規模の構造改革を実行し国内事業の最適化や製品の絞り込みを行う。同事業を率いる斉藤裕副社長は「国内は大丈夫という(見誤った)思いを反省し、改革でスリム化する」と語った。

 電力システム・エネルギーソリューション事業ではスイスのABBと提携した送電設備事業に関し、8月に合弁会社を設立する方針を示した。高効率の送電分野で日本市場を開拓する。20年度に高い利益率目標を掲げているが「海外の原子力発電設備事業が伸長し、利益率をけん引する」(長沢克己執行役常務)。

 昇降機など都市開発システム事業は、需要が旺盛なインドに昇降機工場を建設する方向で検討する。最大市場の中国では需要増に応じ、販売サービス拠点を拡充。保全拠点は15年度までに13年度比約20%増の700カ所に増やす。また昇降機の生産能力も現行比25%増の10万台に高める。

 ヘルスケア事業は18年度に売上高6000億円を目指しているが、15年度計画では3600億円にとどまっている。既存事業の積み上げでは目標に届かないことから、M&Aで業容の拡大を模索していく。「(目標まで)1000億円以上のギャップがあり、戦略的なアプローチを行う」(渡部真也執行役常務)と説明した。

 <英の鉄道事業人員を今後3年間で1700人体制へ大幅拡充、納入遅延防ぐ>

 日立製作所は11日の事業戦略説明会で、英国での鉄道システム事業に関し、今後3年で製造・保守要員を約1400人増やし1700人体制に拡充する考えを示した。現在、英国ダーラム州で車両工場を建設しており、2016年から都市間高速鉄道計画(IEP)向け車両などの生産を始める。鉄道生産に備えて陣容を強化する。
 
 日立は英国でIEP向け車両866両の生産・保守サービスを受注。また3月にはオランダの鉄道運行会社から通勤車両234両を受注したほか、英国の会社から173両の納入に関する優先交渉権を獲得した。今後、欧州で鉄道ビジネスが拡大することから、体制を整えて納入の遅延など事業リスクを防ぐ。製造要員、保守要員をそれぞれ700人置く。

 一方、15年中にも買収を完了するイタリアの鉄道車両メーカーについては赤字案件など既存の負債を引き継がないことが分かった。同事業のトップを務めるアリステア・ドーマー氏は同メーカーに関し「今後2年間はフル操業であり、生産能力を伸ばす」と語った。収益面は停滞しているが、工場の統廃合などリストラは行わず、事業規模を拡大し増収を図る意向だ。

 

2015年06月12日 3面& 電機・電子部品・情報・通信面

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明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

3、4年ほど前に現中西会長が社長時代から始めた抜本的なコスト構造改革「スマトラ」がマンネリ化、従来のコスト削減手法ばかりになり始めていて、先日、中西さんも「スマトラをやり直す」と話していた。スマトラはトランスフォーメーションで仕事のやり方、そのものを変えていくというものだが、社内外で数値的なものも含め確かに分かりにくさもある。その点、CCCは実践する方は意識付けしやすいだろう。ただそれ自体が「目的化」しては意味がない。各事業部門、コーポレートでその先の成長戦略とパラレルしないと。

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