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五輪会場のない東京・文京区が考える「レガシー」とは

ARなど先端技術駆使し、文化の魅力発信
五輪会場のない東京・文京区が考える「レガシー」とは

文京シビックセンター25階の展望ラウンジ

 東京都文京区は、23区のほぼ中心に位置する。森鴎外や夏目漱石といった文豪たちゆかりの地であり、東京大学や東京医科歯科大学など知の文化にあふれる。2020年東京五輪・パラリンピックの競技場はなく、ソフト面のレガシー(遺産)に比重を置く。そこで先端技術を駆使して、知的文化都市を目指す。

 五輪はスポーツだけでなく、文化的側面も世界に発信する。同区は17年度新規事業として、AR(拡張現実)を活用した多言語観光アプリケーションを制作し、同区の魅力を発信する。同事業に約1600万円を計上。同区役所の所在する文京シビックセンター25階の展望ラウンジや東京ドーム、根津神社など区内観光スポットなどを楽しめる。

 17年度はアプリシステム構築とともに、区内の寺社仏閣、文人ゆかり史跡、庭園などの魅力を伝えるコンテンツを作成。「18年度にすぐオープンできるようにしていきたい」(横山尚人同区アカデミー推進部オリンピック・パラリンピック推進担当課長)と意気込む。観光客が区内周遊を楽しみ、再来訪が増え、一層の観光振興と地域活性化につなげる。

 また、同区は新規事業として、小・中学生を記者とした「突撃・応援!オリンピック・パラリンピックこども新聞」をはじめ、五輪・パラリンピックをテーマに年2―3回「区報ぶんきょう特集号」を発行し、五輪教育と広く区民に向けた機運を醸成していく。

【記者の目/先端技術で知的文化都市へ】
 競技場がない区は文京区だけではない。「どこの区も2020年を迎えるにあたり、悩んでいるはず」と同区担当者はいう。同区はARに着目し、既存の独自文化との共生を図る。文化資源を生かすだけでなく、先端技術を突破口にし「未来へのレガシー」をつくる手法は、新たな街づくりのビジネスモデルと言える。
(文=茂木朝日)
日刊工業新聞 2017年6月6日
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 東京五輪の競技場こそありませんが、文京区には日本サッカー協会や全日本柔道連盟(全柔連)などのスポーツ団体が本部を構えています。また東京大学や東京医科歯科大学、順天堂大学、筑波大学など大学の立地の多さも文京区の特徴です。これらを組み合わせて、例えば「スポーツ団体と大学と区内中小製造業が連携して、アスリートの練習を補助する器具を共同開発する」といった取り組みが実現できれば、文京区ならではの活動として内外に発信できるのではないでしょうか。

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