ファナック、パナソニックも注目した東大発の深層学習ベンチャーの実力
ロボットの自立的な学習を可能に。人工知能で運転技術を進化
ファナックとプリファード・ネットワークス(PFN)は10日、機械学習の一つであるディープラーニング(深層学習)技術を産業用ロボットに適用するための共同研究を始めると発表した。ロボットによる自律的な学習を可能にし、予防保全や画像認識などを高度化するのが狙い。事業化の時期は未定だが、ロボット用監視システムやビジョンセンサーなどでの応用を想定する。PFNの持つIoT(モノのインターネット)技術を活用し、複数のロボットによる協調学習も実現する。
ファナックはディープラーニング、IoTの技術を持つPFNと技術開発に関する基本合意を交わした。当面の対象事業はロボットと射出成形機で、ロボット事業本部長の稲葉清典専務は「製造業に革新をもたらす非常に大きなプロジェクト」としている。ディープラーニングは機械学習の一種で、人が他者を識別する際のパターン認識に近い手法。ロボットによる学習機能を高度化し自律性を高める技術として期待される。
製造業ではIoTを活用した予防保全やビジョンセンサーを用いた組み立て作業の自動化が加速し、データ解析や画像認識精度向上などのため、高度な学習機能が求められている。
学習内容を機械同士で共有しシステム構築(SI)を効率化することも想定され、機械間の通信にPFNのIoT技術をフル活用する方針だ。
PFNは東京大学発ベンチャーのプリファード・インフラストラクチャー(PFI、同)が母体となり2014年3月に設立。機械学習やIoTの技術に関して評価が高く、NTTも出資している。パナソニックもPFNと自動運転やIoT関連で協業することを表明している。
ファナックがプリファード・ネットワークス(PFN、東京都文京区)と組み、産業用ロボットとディープラーニング(深層学習)技術の融合に向け動きだした。工場自動化(FA)の領域で普及が加速するセンサー類を高度化させることが目的の一つ。
ロボット業界はロボ本体とセンサーなど周辺機器を組み合わせて一括提案する動きが活発で、特にビジョンセンサーの性能が競争力を左右する傾向にある。ファナックが構想する新たなセンシング技術は、FAの世界に影響を及ぼす可能性がある。
ファナック、工場自動化にイノベーション
「もはやロボット自体の性能はどのメーカーも同じになりつつある。センサーの性能、周辺と組み合わせるノウハウが差別化要因だ」。業界関係者が話すように、メーカー同士の開発競争は新たな段階に入りつつある。業界内での切磋琢磨により、溶接するための動作速度や位置決め精度といったロボット本体の性能は、限りなく高い水準まで引き上げられてきた。この先、性能面で突出したロボットが出現するとは考えにくい。
一方、ロボットの周辺機器は技術革新の余地が残されている。中でもワーク形状、位置、向きなどを認識するビジョンセンサーは需要拡大が顕著。組み立てや検査などロボット普及が期待される用途で使われることが多く、メーカー各社はロボット本体と組み合わせた提案を強化している。
ファナックは自社製のビジョンセンサーを展開し、自動車部品のバラ積みワークの仕分けで採用件数を伸ばしてきた。一方、市販のビジョンを用いロボットと組み合わせているメーカーもあり、方針は各社さまざま。キヤノンやリコーなど新規参入もあり市販ビジョンの性能向上が顕著。ファナックがPFNと提携した背景にはこうした状況への危機感もみられる。
パナソニックとは先進運転技術などで協力
パナソニックはプリファード・ネットワークス(PFN)と共同で、自動運転やIoT(モノのインターネット)関連のソフトウエア開発を始める。「ディープラーニング(深層学習)」など人工知能関連技術の開発を手がけるPFNの協力を得て、3年後をめどに自動車の先進運転支援システム(ADAS)や、監視カメラなどの高度化に役立つソフトウエアの開発を目指す。
パナソニックは2018年度の車載事業の売上高目標2兆1000億円のうち、ADAS関連で4700億円(15年度目標はセンシングデバイスなどで3100億円)を稼ぐ計画。高シェアの車載カメラやセンサーなどの同デバイスを生かしたシステムを自動車メーカーに提案するため、不足する技術や知見を他社との協業やM&A(合併・買収)で補う方針だ。
ディープラーニングは人間の脳の神経回路による重層的な認識の仕組みを使った機械による学習の手法。PFNは、ビッグデータ(大量データ)処理技術などを手がける東京大学発ベンチャーのプリファード・インフラストラクチャー(東京都文京区、西川徹社長)が、14年10月に機械学習技術の事業化を目的に設立した。PFNにはNTTも出資している。
※プリファード・ネットワークスの西川徹社長は6月17日に開催される「日刊工業新聞創刊100周年記念シンポジウム「見えてきた近未来のスマートコミュニティ×ロボット~人工知能やIoTでコミュニケーション、コミュニティが変わる!~」に登壇します。
ファナックはディープラーニング、IoTの技術を持つPFNと技術開発に関する基本合意を交わした。当面の対象事業はロボットと射出成形機で、ロボット事業本部長の稲葉清典専務は「製造業に革新をもたらす非常に大きなプロジェクト」としている。ディープラーニングは機械学習の一種で、人が他者を識別する際のパターン認識に近い手法。ロボットによる学習機能を高度化し自律性を高める技術として期待される。
製造業ではIoTを活用した予防保全やビジョンセンサーを用いた組み立て作業の自動化が加速し、データ解析や画像認識精度向上などのため、高度な学習機能が求められている。
学習内容を機械同士で共有しシステム構築(SI)を効率化することも想定され、機械間の通信にPFNのIoT技術をフル活用する方針だ。
PFNは東京大学発ベンチャーのプリファード・インフラストラクチャー(PFI、同)が母体となり2014年3月に設立。機械学習やIoTの技術に関して評価が高く、NTTも出資している。パナソニックもPFNと自動運転やIoT関連で協業することを表明している。
ファナックがプリファード・ネットワークス(PFN、東京都文京区)と組み、産業用ロボットとディープラーニング(深層学習)技術の融合に向け動きだした。工場自動化(FA)の領域で普及が加速するセンサー類を高度化させることが目的の一つ。
ロボット業界はロボ本体とセンサーなど周辺機器を組み合わせて一括提案する動きが活発で、特にビジョンセンサーの性能が競争力を左右する傾向にある。ファナックが構想する新たなセンシング技術は、FAの世界に影響を及ぼす可能性がある。
ファナック、工場自動化にイノベーション
「もはやロボット自体の性能はどのメーカーも同じになりつつある。センサーの性能、周辺と組み合わせるノウハウが差別化要因だ」。業界関係者が話すように、メーカー同士の開発競争は新たな段階に入りつつある。業界内での切磋琢磨により、溶接するための動作速度や位置決め精度といったロボット本体の性能は、限りなく高い水準まで引き上げられてきた。この先、性能面で突出したロボットが出現するとは考えにくい。
一方、ロボットの周辺機器は技術革新の余地が残されている。中でもワーク形状、位置、向きなどを認識するビジョンセンサーは需要拡大が顕著。組み立てや検査などロボット普及が期待される用途で使われることが多く、メーカー各社はロボット本体と組み合わせた提案を強化している。
ファナックは自社製のビジョンセンサーを展開し、自動車部品のバラ積みワークの仕分けで採用件数を伸ばしてきた。一方、市販のビジョンを用いロボットと組み合わせているメーカーもあり、方針は各社さまざま。キヤノンやリコーなど新規参入もあり市販ビジョンの性能向上が顕著。ファナックがPFNと提携した背景にはこうした状況への危機感もみられる。
パナソニックとは先進運転技術などで協力
パナソニックはプリファード・ネットワークス(PFN)と共同で、自動運転やIoT(モノのインターネット)関連のソフトウエア開発を始める。「ディープラーニング(深層学習)」など人工知能関連技術の開発を手がけるPFNの協力を得て、3年後をめどに自動車の先進運転支援システム(ADAS)や、監視カメラなどの高度化に役立つソフトウエアの開発を目指す。
パナソニックは2018年度の車載事業の売上高目標2兆1000億円のうち、ADAS関連で4700億円(15年度目標はセンシングデバイスなどで3100億円)を稼ぐ計画。高シェアの車載カメラやセンサーなどの同デバイスを生かしたシステムを自動車メーカーに提案するため、不足する技術や知見を他社との協業やM&A(合併・買収)で補う方針だ。
ディープラーニングは人間の脳の神経回路による重層的な認識の仕組みを使った機械による学習の手法。PFNは、ビッグデータ(大量データ)処理技術などを手がける東京大学発ベンチャーのプリファード・インフラストラクチャー(東京都文京区、西川徹社長)が、14年10月に機械学習技術の事業化を目的に設立した。PFNにはNTTも出資している。
※プリファード・ネットワークスの西川徹社長は6月17日に開催される「日刊工業新聞創刊100周年記念シンポジウム「見えてきた近未来のスマートコミュニティ×ロボット~人工知能やIoTでコミュニケーション、コミュニティが変わる!~」に登壇します。
日刊工業新聞社2015年06月11日1&3面