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酒のニオイからAIでアルコール度数を推定、がん検出に期待高まる

物材機構が開発、食品鮮度なども計測
 物質・材料研究機構の柴弘太研究員と田村亮研究員、今村岳研究員、吉川元起グループリーダーは人工知能(AI)技術を利用してお酒のにおいからアルコール度数を推定する技術を開発した。におい成分を吸着する感応材料と高感度センサーの組み合わせと信号解析処理を機械学習で最適化した。お酒など32試料のにおいを学習させ、赤ワインとウイスキー、芋焼酎のにおいを与えたところアルコール度数を当てられた。

 においのもととなる揮発性成分は数十万種類存在する。成分一つひとつの濃度を特定するには成分ごとに精製する必要があった。今回、センサーが複数の成分に反応する信号を機械学習した。お酒の揮発性成分の中からエタノール濃度の推定に成功。食品の鮮度や熟成を表す成分や、がん細胞特有の成分などの計測が期待される。

日刊工業新聞2017年6月28日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
AIセンサーにお酒を嗅がせたように、がん患者の呼気や尿を嗅がせれば、がんを検出できるようになるかもしれません。線虫にがんを探させる研究でも、どの匂い成分をがんと線虫が感じているかわかっていないはずです。AIも線虫も、がんを見つけてくれれば成功で、精度が高ければ何に反応しているかわからなくても良いのかもしれません。今後は健康診断の尿検査用の試料はとりあえず、センサーに通してデータ化しておき、病気が見つかったらデータをAIに学習させて人類のために検査精度を上げるということもあり得るかもしれません。データが集まれば疾患の種類やステージごとに細かく学習させられます。公衆便所やオフィス、商業施設のトイレがデータの鉱脈になったら面白いと思いました。

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