パナソニックヘルスケア、ドイツ・バイエルの糖尿病関連事業を買収
約1400億円で。ファンド傘下から成長戦略を描く
パナソニックヘルスケアホールディングスは10日、ドイツ・バイエルの糖尿病関連事業を約10億2200万ユーロ(約1425億円)で買収すると発表した。バイエル子会社のバイエルヘルスケア傘下の糖尿病患者用の血糖測定器や穿刺器具などの医療機器を手がけるバイエルダイアベティスケア(BDC)事業を買収する。
BDCは医療機関向けに血糖値測定システムを提供している。買収により、パナソニックヘルスケアは、新興国などで市場拡大が見込める糖尿病治療市場で、グローバル展開に踏み出す基盤を固める。買収は独占禁止法抵触の有無など関係当局の承認を得ることを前提に、2016年第1四半期中に完了する見通し。
パナソニックヘルスケアは、バイエル主要製品の「Contour」などのOEM(相手先ブランド)生産を手がけており、これらブランドや米国、中国、ドイツなど125カ国で展開する販売網などを引き継ぐ見込み。BDC事業の世界シェアは3―5位にあり、14年の売上高は約1200億円。従業員は約1500人(15年4月現在)。
バイエル日本法人であるバイエル薬品(大阪市北区)は「世界中の糖尿病患者の増加に伴い高品質な医療機器の提供を考える上で選択肢として、これまで共同開発などを一緒にしてきたパナソニックヘルスケアに売却した」としている。
パナソニックヘルスケアは14年3月に資産運用会社のコールバーグ・クラビス・ロバーツ・アンド・カンパニー・エルピー(KKR)がパナソニックから80%の株式を取得して経営権を握っている。山根社長は「画期的な合意は大変喜ばしい。素晴らしい事業が新たなステージとして進むことができる」とコメントした。
国際糖尿病連合(IDF)によると、2014年時点の糖尿病患者数は3億8670万人(有病率8・3%)。有効な対策を施さなければ35年までに5億9190万人に増えると予測している。14年時点で患者が最も多い国は中国で、2位がインド、4位がブラジル。新興国の経済成長や人口増加に伴い、住民の生活習慣が変化することが背景にあるとみられる。
IDFは糖尿病を発症している可能性が高いにもかかわらず、検査未受診などの理由で気付いていない人が1億7900万人いるとも指摘する。日本では14年4月から薬局やドラッグストアの店頭で自己採血による血液検査を行い、糖尿病の指標であるHbA1cを測ることが可能になった。これを受けてサカエ(東京都港区)が約6分で測定ができる装置を開発するなど、簡便な検査システムが登場しつつある。
グローバルでも早期診断の需要が高まり、積水メディカル(東京都中央区)や協和メデックス(同)といった検査薬・診断機器メーカーが海外販売を伸ばしている。ただ、日本の医療関連企業は全般的に欧米での事業展開を優先してきた例が多い。このためM&A(合併・買収)が新興国の販路を得る手段として使われている。武田薬品工業が11年5月にスイスの製薬会社ナイコメッドを96億ユーロ(約1兆1000億円)で買収することを決めたのは典型例だ。
糖尿病関連の診断事業を125カ国で展開してきた独バイエルの販売網は、パナソニックヘルスケアホールディングスにとって魅力的だったのは想像に難くない。だが、武田薬品の例でも「買収が成功したかどうかの評価には時間がかかる」(アナリスト)との指摘がある。パナソニックは取得した販売網をどれだけ早く機能させられるかが問われることになる。
BDCは医療機関向けに血糖値測定システムを提供している。買収により、パナソニックヘルスケアは、新興国などで市場拡大が見込める糖尿病治療市場で、グローバル展開に踏み出す基盤を固める。買収は独占禁止法抵触の有無など関係当局の承認を得ることを前提に、2016年第1四半期中に完了する見通し。
パナソニックヘルスケアは、バイエル主要製品の「Contour」などのOEM(相手先ブランド)生産を手がけており、これらブランドや米国、中国、ドイツなど125カ国で展開する販売網などを引き継ぐ見込み。BDC事業の世界シェアは3―5位にあり、14年の売上高は約1200億円。従業員は約1500人(15年4月現在)。
バイエル日本法人であるバイエル薬品(大阪市北区)は「世界中の糖尿病患者の増加に伴い高品質な医療機器の提供を考える上で選択肢として、これまで共同開発などを一緒にしてきたパナソニックヘルスケアに売却した」としている。
パナソニックヘルスケアは14年3月に資産運用会社のコールバーグ・クラビス・ロバーツ・アンド・カンパニー・エルピー(KKR)がパナソニックから80%の株式を取得して経営権を握っている。山根社長は「画期的な合意は大変喜ばしい。素晴らしい事業が新たなステージとして進むことができる」とコメントした。
国際糖尿病連合(IDF)によると、2014年時点の糖尿病患者数は3億8670万人(有病率8・3%)。有効な対策を施さなければ35年までに5億9190万人に増えると予測している。14年時点で患者が最も多い国は中国で、2位がインド、4位がブラジル。新興国の経済成長や人口増加に伴い、住民の生活習慣が変化することが背景にあるとみられる。
IDFは糖尿病を発症している可能性が高いにもかかわらず、検査未受診などの理由で気付いていない人が1億7900万人いるとも指摘する。日本では14年4月から薬局やドラッグストアの店頭で自己採血による血液検査を行い、糖尿病の指標であるHbA1cを測ることが可能になった。これを受けてサカエ(東京都港区)が約6分で測定ができる装置を開発するなど、簡便な検査システムが登場しつつある。
グローバルでも早期診断の需要が高まり、積水メディカル(東京都中央区)や協和メデックス(同)といった検査薬・診断機器メーカーが海外販売を伸ばしている。ただ、日本の医療関連企業は全般的に欧米での事業展開を優先してきた例が多い。このためM&A(合併・買収)が新興国の販路を得る手段として使われている。武田薬品工業が11年5月にスイスの製薬会社ナイコメッドを96億ユーロ(約1兆1000億円)で買収することを決めたのは典型例だ。
糖尿病関連の診断事業を125カ国で展開してきた独バイエルの販売網は、パナソニックヘルスケアホールディングスにとって魅力的だったのは想像に難くない。だが、武田薬品の例でも「買収が成功したかどうかの評価には時間がかかる」(アナリスト)との指摘がある。パナソニックは取得した販売網をどれだけ早く機能させられるかが問われることになる。
日刊工業新聞06月11日1& 3面