復活の兆しが見え始めたルネサス。インダストリー4.0はさらに後押しになるか!?
“つなげる半導体”を産業用途に広める。「1社に限定せず各分野で強い企業と組んでいく」
ルネサスエレクトロニクスが、モノのインターネット(IoT)分野を対象とした産業機器向け半導体で攻勢を掛ける。高速データ処理を実現する独自の半導体を核に、他社との連携によりアプリケーション(応用ソフト)をセット提供するソリューションを展開。次世代の製造業モデル「インダストリー4・0」の需要を取り込む。ルネサスの屋台骨は自動車向け半導体だが、産業機器向けや家電向けなどの非車分野が売上高の6割を占める。“つながる”をキーワードに成長を狙う。
【“子ども”が自律】
「子どもが独立すると、親は楽ができますよね。つながる工場において、“子ども”を自律させるのが、当社の半導体です」―。ルネサスの傳田明第二ソリューション事業本部産業第一事業部長は、独自の回路技術「R―INエンジン」を組み込んだ半導体をPRする。同エンジンは、中央演算処理装置(CPU)によるソフト処理の一部をハードウエアで担う機能が特徴で、処理能力を5―10倍向上させた。
インダストリー4・0では、工場の末端の製造装置に無数のセンサーを取り付けデータを収集。それをクラウド上のサーバーで分析し、生産の効率化などにつなげる。この際、重要なのが、どうサーバーの負担を抑えるか。「ここで役立つのがR―IN」と傳田部長は説明する。
【サーバー負担減】
R―IN半導体を搭載し製造機器の性能を高めることで、サーバーの負担を減らせる。例えば機器同士が情報をやり取りし、重要データだけクラウドに上げるようにするといった自律的な機能を付加するイメージ。傳田部長は「I4・0の高度化のための要素技術としてR―INの需要は高まる」と強調する。
もう一つ、ルネサスが重視するのが他社との連携によるソリューション展開だ。IoTは、デバイスからアプリまでシステム構成が幅広く、半導体だけを提供しても顧客ニーズには十分応えられない。半導体に、いかに付加価値を付けるかが重要で、それを実現するにはソリューションが不可欠だからだ。
具体的な取り組みとして4月には、R―INに対応するアプリや基本ソフト(OS)、開発環境などの事業者を組織する「R―INコンソーシアム」を立ち上げた。製造機器メーカーなどの顧客にとっては、ワンストップで情報を得られたり、開発支援を受けられたりするのが利点。現在、参加は国内約30社だが、「年度内には国内外で100社まで増やす」(横田善和執行役員常務)方針で、ソリューションを充実させる。
【選択と集中加速】
ルネサスはこの2年間、事業の選択と集中を加速させてきた。車向け以外では、産業・家電、オフィス機器(OA)・情報通信技術(ICT)にフォーカスし、製品ラインアップも大幅に絞り込んだ。今後は、残った看板製品を拡販していくことが重要になる。
将来は家庭やオフィス内でも、つながるをキーワードとしたサービスの普及が見込まれる。ルネサスが、先行してインダストリー4・0向け半導体で存在感を示せれば、IoT時代を勝ち抜く上で大きなアドバンテージになる。
【ルネサスエレクトロニクス執行役員常務・横田善和氏に聞く】
―構造改革は一段落しました。2015年度からの取り組みは。
「以前と注力分野は変わらない。15年度は成長に向けギアチェンジし、主力製品をもっと強くしてシェア拡大を図る。ここ数年、減少していた売上高を、早ければ来年度から反転させたい」
―具体的方策は。
「市場へのアプローチを変える。顧客の課題を理解し、それを半導体で解決するという発想が原点。デバイス単品ではなく、ソリューション提供にこだわっていく」
―他社との連携が重要になってきますね。
「特にIoTビジネスは自前での展開には限界があるので、非常に重視している。特にアプリ関連の事業者との連携を積極的に模索したい」
―出資まで踏み込んだ連携は。
「当社は800社を超える顧客基盤が強み。どこか1社に限定せず、各分野で強い企業と組んでいく」
―重視する地域は。
「日本、欧州に加え中国を伸ばしたい。中国での白物家電のインバーター化が進んでいる。この波をとらえ、モーター周辺の半導体需要を開拓していきたい」
(聞き手=後藤信之)
【“子ども”が自律】
「子どもが独立すると、親は楽ができますよね。つながる工場において、“子ども”を自律させるのが、当社の半導体です」―。ルネサスの傳田明第二ソリューション事業本部産業第一事業部長は、独自の回路技術「R―INエンジン」を組み込んだ半導体をPRする。同エンジンは、中央演算処理装置(CPU)によるソフト処理の一部をハードウエアで担う機能が特徴で、処理能力を5―10倍向上させた。
インダストリー4・0では、工場の末端の製造装置に無数のセンサーを取り付けデータを収集。それをクラウド上のサーバーで分析し、生産の効率化などにつなげる。この際、重要なのが、どうサーバーの負担を抑えるか。「ここで役立つのがR―IN」と傳田部長は説明する。
【サーバー負担減】
R―IN半導体を搭載し製造機器の性能を高めることで、サーバーの負担を減らせる。例えば機器同士が情報をやり取りし、重要データだけクラウドに上げるようにするといった自律的な機能を付加するイメージ。傳田部長は「I4・0の高度化のための要素技術としてR―INの需要は高まる」と強調する。
もう一つ、ルネサスが重視するのが他社との連携によるソリューション展開だ。IoTは、デバイスからアプリまでシステム構成が幅広く、半導体だけを提供しても顧客ニーズには十分応えられない。半導体に、いかに付加価値を付けるかが重要で、それを実現するにはソリューションが不可欠だからだ。
具体的な取り組みとして4月には、R―INに対応するアプリや基本ソフト(OS)、開発環境などの事業者を組織する「R―INコンソーシアム」を立ち上げた。製造機器メーカーなどの顧客にとっては、ワンストップで情報を得られたり、開発支援を受けられたりするのが利点。現在、参加は国内約30社だが、「年度内には国内外で100社まで増やす」(横田善和執行役員常務)方針で、ソリューションを充実させる。
【選択と集中加速】
ルネサスはこの2年間、事業の選択と集中を加速させてきた。車向け以外では、産業・家電、オフィス機器(OA)・情報通信技術(ICT)にフォーカスし、製品ラインアップも大幅に絞り込んだ。今後は、残った看板製品を拡販していくことが重要になる。
将来は家庭やオフィス内でも、つながるをキーワードとしたサービスの普及が見込まれる。ルネサスが、先行してインダストリー4・0向け半導体で存在感を示せれば、IoT時代を勝ち抜く上で大きなアドバンテージになる。
【ルネサスエレクトロニクス執行役員常務・横田善和氏に聞く】
―構造改革は一段落しました。2015年度からの取り組みは。
「以前と注力分野は変わらない。15年度は成長に向けギアチェンジし、主力製品をもっと強くしてシェア拡大を図る。ここ数年、減少していた売上高を、早ければ来年度から反転させたい」
―具体的方策は。
「市場へのアプローチを変える。顧客の課題を理解し、それを半導体で解決するという発想が原点。デバイス単品ではなく、ソリューション提供にこだわっていく」
―他社との連携が重要になってきますね。
「特にIoTビジネスは自前での展開には限界があるので、非常に重視している。特にアプリ関連の事業者との連携を積極的に模索したい」
―出資まで踏み込んだ連携は。
「当社は800社を超える顧客基盤が強み。どこか1社に限定せず、各分野で強い企業と組んでいく」
―重視する地域は。
「日本、欧州に加え中国を伸ばしたい。中国での白物家電のインバーター化が進んでいる。この波をとらえ、モーター周辺の半導体需要を開拓していきたい」
(聞き手=後藤信之)
日刊工業新聞2015年06月10日 電機・電子部品・情報・通信面