岡山大学の課題解決型「医工連携」は中小製造業の活性化モデルになるか!?

まず学内連携、次に県内企業と協力。開発事例も出始めて県外からも関心集まる

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ダイヤ工業が製品化したパワーアシストグローブ
 中四国地域屈指の中小製造業集積地、岡山県―。3月には県が医療機器開発に特化した推進体制「医療機器開発プロモートおかやま」を設立するなど医療を切り口とした産業振興が活発化している。これを支えるのが岡山大学の存在だ。過去、県やメディカルテクノおかやまなどと共同で先進モデル事業に取り組み実績を重ねてきた岡山大は現在、「課題解決型医工連携」への展開を加速している。
 
 岡山大の前身は約140年前に創立された岡山藩医学館。11学部7研究科、2万人の学生が学ぶ総合大学に成長した今日でも医学は同大を代表する研究領域であり、地域での新産業創出に対しても工学との連携を深めながらさまざまなプロジェクトに挑んでいる。

 そのテーマとして挙げるのが「課題解決型医工連携」だ。大学での医工連携といえば、学内の医学系と工学系とのアカデミックな範囲での協同研究を意味し、企業を巻き込み事業化する意欲は一般に希薄だった。しかしこれでは研究レベルは向上できても地域全体の活性化にはつながらない。

 同大ではこれら学内連携から歩を進め、大学発のシーズを元に具体的な課題を設定。中小のモノづくり企業と協力し、大学病院での臨床研究なども生かしながら医療機器や医療技術の実用化を図り課題解決へと導く取り組みを開始した。

 ただ、シーズを具現化し実際の治療へ利用するには地域や行政、金融機関との連携が欠かせない。この実現を図るのが同大が2014年から主催する医療展示会「メディカル・イノベーション」。15年2月に開いた第2回では中国地域に加え関東、東北、九州から参加者が集まり充実した情報交流が行われた。

 これらの活動もあって岡山大は13年、文部科学省の「研究大学強化促進事業」に採択され、14年には「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」への採択も受けた。また、13年には厚生労働省から岡山大学病院が「臨床研究中核病院」に選ばれている。いちはやく課題解決型へとカジを切った同大の取り組みは、中四国地域のみならず全国にも影響を与えそうだ。
 
 【事例/ダイヤ工業、手指不自由な人向け握力支援器具を開発】
 岡山大大学院自然科学研究科の則次俊郎教授らがダイヤ工業(岡山市南区)と共同開発した「パワーアシストグローブ」は、手指の不自由な人の握力を支援し、スプーンやペットボトルの保持やペンで字を書くことも可能にする。

 空気圧により湾曲するゴム人工筋が指を曲げる方向に湾曲する。動力源は小型の炭酸ガスボンベなので軽く携帯も容易。中小企業優秀新技術・新製品賞の産学官連携特別賞も受賞した。

 大学院医歯薬学総合研究科の公文裕巳教授らは住田光学ガラス(さいたま市浦和区)、武井医科光器製作所(東京都文京区)と共同で「極細径HIDGを使用する革新的内視鏡システム」を開発。現在は臨床研究を行っている。この世界最細レベルの内視鏡にレーザー治療器を組み合わせると、直径1・67ミリメートルの医療機器として、将来的には腎臓結石の中でも手術が困難なサンゴ状結石でも患者に身体的な負担をかけずに破砕できるという。

 岡山大病院の武田吉正准教授は大研医器と共同で、心肺停止によって脳障害が発生することを防ぐ「咽頭冷却システム」を開発した。かき氷を食べると少量でも「頭がキーンとする」現象から発案。心肺停止患者を蘇生する際、装置を喉に挿入してそこから脳に流れる血流を冷却する。心臓に負担なく脳を低温に保ち神経細胞障害を軽減する。
 
 【岡山大学研究推進産学官連携機構副機構長・尾本哲朗氏に今後の活動を聞く】
 ―中四国の研究中枢として期待されています。
 「本学と関連の深い病院を合わせると3万3000床ある。これをメガホスピタルとして考えると大規模な治験も可能だ。(国や地域から)求められているのは、我々が中心となり中四国の大学の医学研究シーズを実際の事業や治療につなげていくことだと考える。メディカル・イノベーションはその一環であり、本年度はレベル的にも分野的にも拡充していきたい」

 ―岡山は他にも中小企業振興プロジェクトが複数あります。岡山大が行う意義は。
 「これまでも他のプロジェクトと協力しながら活動してきた。ただし目的や立場はそれぞれ異なる。立場的に自由度の高い大学は県内外の企業、あるいは他府県の大学など幅広い連携が可能だ」

 ―その連携を地域に還元もできますね。
 「究極の目的は高度な医療を創出し患者へ治療を提供すること。そのために大学の自由度を最大限活用したい。それが結果的には社会貢献にも地域貢献にもつながると思っている」
(聞き手=岡山支局長・浅田一朗)

日刊工業新聞2015年06月10日 中小・ベンチャー・中小政策面

COMMENT

山口豪志
Protostar Hong Kong
董事長

岡山大学が積極的に動いているとは知らなかったし、出身地であるだけにとても嬉しく誇らしく思う。こういう取組がどんどん興ってほしい!産学連携の具体的な事例がうまれ、そして、産業化できるようにシッカリと進めて行ってほしい。

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