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<矢島里佳の新聞clip6.11号>事業継承は時代の文脈や創業者の想いも含まれる

会社の半歩先の未来を考えると、結果的に現状の経営のヒントもたくさん隠れている
 毎週木曜日に連載中の「和える」の矢島里佳代表の新聞clip

 1週間の日刊工業新聞の記事の中から3本、気になった記事をセレクト。新聞ならではのセレンディピティー(何かを発見する能力、偶然をきっかけにしたひらめき)の楽しさを伝えて頂きます。

 みなさん、こんにちは。矢島里佳です。
 ウェブニュースは1つずつ興味のあるニュースを読める閲覧性の高さは魅力的です。
けれども、偶然に出会う記事たちが、自分の興味や人生に強く影響をあたえる面白さは、紙新聞ならでは。デジタルの時代だからこそ、アナログの面白さにも気がつく。双方の魅力を和えながらニュースと向き合っていければと思います。

 今週、選んだのはこの3本です。

 ●障害者雇用で人材不足解消(経営士の提言=6月4日付)
 ●19年度に職業訓練機関(産業競争力会議が雇用・教育一体=6月5日付)
 ●中小の事業継承で調査(後継者育成など余裕なく=6月8日付)

 伝統産業でも事業継承は問題の1つとなっています。後継者育成、私もまだ創業5年目ですが、常にイメージをしています。事業継承は単に会社を継ぐということだけではなく、時代の文脈や創業者の想いも含め継ぐことになります。

 数年での交代ではなく、中長期的に後継者の育成を考えることが重要だと思います。これは同時に、自分が離れたあとの、会社の半歩先の未来を考えることでもあり、結果、現状の経営のヒントもたくさん隠れているのではないでしょうか。

 職業訓練機関の記事についてです。最近、「楽しく働けると思った。仕事ってこんなにつらいと思わなかった」。そんな声を様々なところで聞きます。学生までのお友達との楽しさ、サークルやアルバイトの楽しさとは違う、”楽しさ”が仕事にはあると思います。その楽しさがわかれば、就職活動のあり方も大きく変わるのでは。楽しいの意味を早期から体感できるきっかけづくりにもなることを期待しています。

 <衆院経済産業調査室が中小の事業承継で調査、包括的な促進策が必要>

 中小企業の事業承継を早期から計画的に進めるには、補助金や税制上の優遇措置だけでなく、関係機関が一体となった包括的な促進策が必要な実情が明らかになった。衆議院経済産業調査室が2015年3月にかけて実施したヒアリング調査を基にまとめた報告書では、現社長の引退を連想させる「非常にセンシティブな問題」であることから、経営者の家族ですら早期の事業承継を促すことは容易ではないと指摘。経営者との日常的な接点の深い税理士や商工会議所、金融機関などが支援ニーズを顕在化させ積極的に情報提供する役割が期待されるとしている。

 【60代後半最も多く】
 衆議院経済産業調査室が実施した調査では事業承継の予定時期について、現在50代の経営者では「11年以上先」の回答割合が3割弱と最も高く、60代経営者では「今後5年以内」「今後6年から10年以内」の割合がともに3割弱だった。一方、70代経営者は5割弱が「今後5年以内」と回答している。結果、実際に事業承継を実施する経営者の年代は60代後半から70代が最も多いとみられる。

 ところが、中小企業庁による別の調査によると、60歳以上の中小企業経営者で、事業承継の準備をしているとの回答割合は約6割にとどまる。

 衆議院経済産業調査室が実施した関係者ヒアリングでも「自社株の引き継ぎは課題だが、会長が存命のうちに長い期間をかけて取り組んでいけばよい」や「後継者教育の時間的な余裕がない」といった声が相次いだ。

 【制度利用を契機に】
 2013年度の税制改正では、中小企業の後継者が現経営者から非上場株式を承継する際の相続税や贈与税を軽減する事業承継税制が見直され、経済産業相の事前確認を受けていなくても制度利用できるよう手続きが簡素化された。
 ただ、事前確認を取得すること自体が計画的な事業承継の契機となっていたとの見方もあることから、今回の報告書では「これに代わる早期の取り組みを促す仕組みが求められる」と指摘している。

 ヒアリングの中では、経営革新計画の策定を条件に、金融機関からの低利融資や商工会や商工会議所からの支援を受けられる現行制度も参考に、「事業承継計画の策定スキームを構築するのも一案」といった意見もあったという。

 【重要性の認識醸成】
 さらに、親族内承継における大きな課題である後継者の育成については、後継者が日々の業務をこなしながら体系的に学ぶ時間的な余裕がないのが現状と指摘。同報告に関わった中央大学の根本忠宣教授は、大学にファミリービジネス学科が設置されているドイツのように日本でも「社会における中小企業への理解や重要性の認識が醸成され、後継者教育もなされることが重要」と指摘している。



 
矢島里佳
矢島里佳 Yajima Rika 和える 代表
障害者雇用で人材不足解消の記事についてです。 真っ先に海外の人材確保を考える前に、国内の人材に改めて目を向けるのが大切。労働人口の減少の問題が提起されていますが、働き方を考えなおし、仕組みを作りなおすことで、実は労働人口を増やすことは可能だと感じています。

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