蓄電池の進化が促す電力需給の調整

NECが遠隔制御技術、エナリスは新サービス

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 家庭やビルにある蓄電池を電力需給の調整に使うビジネスが生まれそうだ。NECは蓄電池100万台以上を遠隔から同時制御する技術を開発した。予想以上に電力使用量が増えたり、電力系統に再生可能エネルギーの電力が急激に流れ込んだりしても蓄電池が変動を瞬時に吸収する。電力ベンチャーのエナリスは3月までに1万台の蓄電池をビルなどに配備し、電力調整サービスの提供を始める計画だ。

 NECスマートエネルギー研究所の工藤耕治主任研究員は「新技術で蓄電池を調整力にできる」と力説する。調整力とは電力不足に備えて待機している火力発電所を指す。蓄電池1台の出力が3キロワットでも100万台集まると火力発電3―6基分に相当する出力となる。再生エネの発電量が急増しても、蓄電池の充電で需給を調整できる。
 太陽光発電の電力の充電などで普段から利用している蓄電池を調整力にしようというのが新技術の狙いだ。火力発電の増設や需給調整用蓄電池の投資を減らせて「社会全体で資産を有効に使える」(工藤研究員)という。
 新技術はクラウド上から蓄電池に指示を出すが、同じ指示を一斉に出す訳ではない。クラウドは電力系統の周波数変動の大きさによって調整に必要な電力量を計算し、数十分間隔で見直しをかける。蓄電池の充電残量も常に見定め、秒以下の単位で充電や放電の量を「1台1台に振り分ける」(同)。充電残量に応じて蓄電池の対応力が異なるためだ。充放電の繰り返しによる劣化を抑える制御も採り入れ、蓄電池の寿命を延ばす。
 需給バランスが崩れると周波数が乱れ、機器に故障を引き起こす。新技術は変動の不規則性に適応できる処理も加え、電力会社と同様に周波数変動を瞬時に吸収するという。計算は複雑そうだが「サーバー1台で100万台の蓄電池に対応できる」(同)。

 NECは電力小売りが全面自由化される2016年以降に電力事業者への採用を目指す。複数の需要家に節電を要請し、実績に応じて電力会社から報奨金を受け取るデマンドレスポンス(DR、需要応答)事業者もターゲットの一つだ。
 エナリスは同社が遠隔地から蓄電池を制御するサービスを始める。新電力(PPS)が契約する需要家に蓄電池1万台を配備し、同社がPPSに代わって蓄電池を制御する。PPSは電力不足が生じた時に電力会社に支払うペナルティーを回避できる。大量の蓄電池を使った電力調整サービスは初めてだ。

日刊工業新聞2015年01月28日 建設・エネルギー・生活面

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

今後の電力システム改革によっては蓄電池の電力も市場取引で売買の対象になるかもしれません。蓄電池の電力が売れるようになれば需給調整のインセンティブになります。

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