頭も柔らかく身軽でしぶとい学生ベンチャー、注目サービスはこれだ!
「子育て支援ロボ」と「全身振動スピーカー」は成功するか
学生発ベンチャーが奮闘している。電気通信大学は「子育て支援ロボット」、東京工業大学は「全身振動スピーカー」を研究していた学生がベンチャー企業を立ち上げ、事業化に挑戦している。学生主体のベンチャーは教員が立ち上げたベンチャーに比べ、資金や知名度に乏しく、ゼロからの起業に近い。自ら動いて周囲を巻き込まないと会社が回らない。それを乗り越えていけば、タフな起業家が育つ可能性を秘めている。(小寺貴之)
大学発ベンチャーの多くは教員が研究成果をもとに起業する。研究室の知的財産や人脈を活用でき、外資系企業の元社長や経営コンサルタントなど、経営のプロを外部から招くベンチャーも少なくない。これに対して学生発ベンチャーは教員がサポートをするものの、ほぼゼロから会社を立ち上げる。
電通大の阿部香澄ATR連携研究員は、子育て支援ロボ「ChiCaRo」(チカロ)を事業化するためベンチャーを設立した。2018年のサービス開始を目指し、機体開発やサポート体制の構築を進めている。
子育て支援ロボは博士課程での研究テーマだった。「子どものご飯を用意する10―20分の間、誰かに面倒を見てもらえれば助かる」(阿部研究員)と自身の経験をもとに研究を始めた。離れて住む祖父母にチカロを遠隔操作して面倒を見てもうような使い方を想定する。
博士課程3年目に事業化の検討をはじめ、卒業して17年4月にベンチャーを設立。ベンチャーの社長には、保育所での実証実験に協力するバニラ(東京都渋谷区)社長の山内直子氏に就いてもらった。
実証実験では、「家庭と同様に保育所も短時間の子守ニーズがあるとわかった」(阿部研究員)と振り返る。食事の準備などの短い時間のためだけに保育士の勤務時間を増やすのは現実的でない。本部や在宅の保育士がチカロで遠隔子守ができれば負担を減らせる。家庭支援の前に保育所支援で事業化を目指す。
東工大の山崎勇祐大学院生は、全身振動スピーカー「Hapbeat」(ハップビート)の事業化のためにベンチャーを設立。大学院生と社長の二足のわらじを履く。授業と研究、経営に追われている。
ハップビートは身体に巻いたひもを通じて全身に音楽の響きを伝えるデバイスだ。VR(仮想現実)市場では視覚と聴覚の次のターゲットとして触力覚が注目されている。
ハップビートは国際学会でベストデモ賞に選ばれるなど、デバイスの完成度に手応えはあった。ただ今春に挑戦したネットを投じた少額投資の「クラウドファンディング」では目標調達額に届かなかった。山崎社長は、「触覚は実際に体験しないと良さが伝わらない」と悔しがる。
ベンチャーは長期戦に備えて、ほぼ経費のかからない体制にした。人は雇わず社長自らデバイスを作る。大学院でマーケティングや事業計画を勉強し直し、17年末に再度資金調達を目指す。
(文=小寺貴之)
大学発ベンチャーの多くは教員が研究成果をもとに起業する。研究室の知的財産や人脈を活用でき、外資系企業の元社長や経営コンサルタントなど、経営のプロを外部から招くベンチャーも少なくない。これに対して学生発ベンチャーは教員がサポートをするものの、ほぼゼロから会社を立ち上げる。
電通大の阿部香澄ATR連携研究員は、子育て支援ロボ「ChiCaRo」(チカロ)を事業化するためベンチャーを設立した。2018年のサービス開始を目指し、機体開発やサポート体制の構築を進めている。
子育て支援ロボは博士課程での研究テーマだった。「子どものご飯を用意する10―20分の間、誰かに面倒を見てもらえれば助かる」(阿部研究員)と自身の経験をもとに研究を始めた。離れて住む祖父母にチカロを遠隔操作して面倒を見てもうような使い方を想定する。
博士課程3年目に事業化の検討をはじめ、卒業して17年4月にベンチャーを設立。ベンチャーの社長には、保育所での実証実験に協力するバニラ(東京都渋谷区)社長の山内直子氏に就いてもらった。
実証実験では、「家庭と同様に保育所も短時間の子守ニーズがあるとわかった」(阿部研究員)と振り返る。食事の準備などの短い時間のためだけに保育士の勤務時間を増やすのは現実的でない。本部や在宅の保育士がチカロで遠隔子守ができれば負担を減らせる。家庭支援の前に保育所支援で事業化を目指す。
二足のわらじ
東工大の山崎勇祐大学院生は、全身振動スピーカー「Hapbeat」(ハップビート)の事業化のためにベンチャーを設立。大学院生と社長の二足のわらじを履く。授業と研究、経営に追われている。
ハップビートは身体に巻いたひもを通じて全身に音楽の響きを伝えるデバイスだ。VR(仮想現実)市場では視覚と聴覚の次のターゲットとして触力覚が注目されている。
ハップビートは国際学会でベストデモ賞に選ばれるなど、デバイスの完成度に手応えはあった。ただ今春に挑戦したネットを投じた少額投資の「クラウドファンディング」では目標調達額に届かなかった。山崎社長は、「触覚は実際に体験しないと良さが伝わらない」と悔しがる。
ベンチャーは長期戦に備えて、ほぼ経費のかからない体制にした。人は雇わず社長自らデバイスを作る。大学院でマーケティングや事業計画を勉強し直し、17年末に再度資金調達を目指す。
(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2017年6月15日