ニュースイッチ

東京五輪の移動はワゴン型タクシーで!『おもてなし』の出発点に

日産「NV200タクシー」は従来のイメージを一新。セダン型からの代替え本格化
東京五輪の移動はワゴン型タクシーで!『おもてなし』の出発点に

日産自動車が8日に発売したタクシー用のワゴン「NV200タクシー」

 日本のタクシーにワゴンの波が押し寄せている。日産自動車が8日タクシー用のワゴン「NV200タクシー」を発売し、セダン主流のタクシーのイメージを一新しようとしている。トヨタ自動車も次世代タクシーとしてワゴン型の試作車を打ち出している。少子高齢化や外国人観光客の増加を背景に、タクシーの“ワゴン化”の流れが本格化しようとしている。

 「(セダン型のような)従来にはなかった魅力がある」。8日に都内で開いた「NV200タクシー」の発表会で星野朝子専務執行役員はこう強調した。

 【広さが売り】
 ワゴン型の最大の売りはやはり室内や荷室空間の広さだ。後席の足元の空間はゆとりを持たせ、セダンでは2個しか積めないスーツケースは4個積むことができる。さらに自動スライドドアを採用して乗り降りをしやすくしたり、座席位置を高くして見晴らしを良くしたりといった、ワゴンならではの魅力をNV200に盛り込んだ。

 【国内25万台】
 日産によれば国内のタクシー保有台数は約25万台でこのうち1割を日産車が占める。そのほとんどがセダン「セドリック」だ。約8割を占めるトヨタ自動車も「コンフォート」などセダンが主流。日産の片桐隆夫副社長は「NV200は少なくともセドリック以上の販売を目指す」としており、セダン主流のタクシー市場のイメージを一新する考えだ。一方のトヨタも、広い室内空間と乗り降りのしやすさを売りにしたワゴン型を次世代タクシーと位置づける。商品化の時期は公表していないがコンセプトカーとして打ち出している。

 タクシーのワゴン化の背景にあるのが少子高齢化と外国人観光客の増加だ。「大人数で荷物と一緒に移動し乗り降りのしやすさを求めるニーズが高まっている」と日産の藤井一夫グローバルコンバージョン部部長は話す。

 特に2020年の東京五輪開催時やそれまでの期間に外国人観光客の増加が見込まれ、タクシー車両を供給する自動車メーカーにとっても商機となる。日産の星野専務執行役員は「NV200は旅を楽しんでもらえるような『おもてなし』の出発点として位置づける」と話す。セダンからワゴンへの代替えを狙う日産としては五輪は追い風になるだろう。

 【五輪で提供】
 8日の日産の発表会ではタクシー業界の幹部も出席。日本交通の川鍋一朗社長は「(ワゴン型のような)新しいタクシーを五輪で提供して東京のタクシーが世界で一番と思われるようにしたい」と期待を込めた。五輪が一大商機となるタクシー業界としても、高いサービスを実現する上でワゴン化の流れを歓迎する。五輪を契機に日本のタクシーの多くがセダンからワゴンに置き換わるかもしれない。
日刊工業新聞2015年06月09日 自動車面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 スーツケースのように大きな荷物を持ち運ぶ人にとって、確かに大きなタクシーは便利なのでしょう。かといって、街中が大きなタクシーだらけになると、仕事の移動などで一人で乗る場合に少し気が引けてしまうような気もします。小心者の自分だけかもしれませんが。

編集部のおすすめ