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IoT展示会で鼻息が荒い台湾企業、日本は商機をみすみす見逃してないか

ハードとソフトを組み合わせる得意領域で、スマホに続き敗戦も
IoT展示会で鼻息が荒い台湾企業、日本は商機をみすみす見逃してないか

30日開幕した「コンピューテックス2017」

 【台北=後藤信之】アジア最大級の情報通信技術(ICT)展示会「コンピューテックス台北」が30日、台湾・台北市で開幕した。スマートフォンやパソコンに加え、IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)関連の展示も目を引いた。先端ハードウエアとIoTの共演は、台湾産業が目指す方向を象徴する。

 「IoTは目玉。展示スペースは前回と比べ、倍ぐらいまで広げた」―。マイクロソフト(MS)台湾の簡聿秀氏はこう話す。MSのクラウドシステム「アズール」をベースにしたIoTソリューションを「産業」「ヘルスケア」「オフィス」「小売り」の四つの切り口で展示。先端の「ウィンドウズパソコン」とともに来場者の注目を集めた。

 台湾エイサーも仮想現実感(VR)ゲームなどと併せて、IoTを目玉に据えた。小売店の商品棚に小型カメラと、広告映像を流す小型ディスプレーを設置。カメラを使って客層を把握し、クラウドで広告の視聴データを分析できるソリューションなどを披露した。

 また「レゴ」のようなブロックを使ったプログラム学習用玩具(がんぐ)を展示。スマホを使って、モーターや電球を搭載したブロックを稼働させる仕組みだ。エイサーの担当者は「プログラミング技術だけでなく、IoTの概念を学べる」とアピールする。

 台湾はパソコンやスマートフォン向けの電子部品や受託製造で存在感を発揮してきたが、IoTでは米国企業などに比べ遅れている。「パソコンの祭典」として存在感を示してきたコンピューテックスも変化を迫られている。

 電子部品や受託製造で培った台湾のエコシステム(ビジネスの生態系)はIoTで生きる可能性がある。台北市コンピュータ協会(TCA)の張笠副総幹事は「台湾はIoTの“宝島”だ。サプライチェーンと人材があり、アジアのハブという地理的優位性もある」と台湾産業の特徴を指摘する。

 今回のコンピューテックスでも台湾エイスースが、VRと拡張現実(AR)の両機能を備えるスマホ「ZenFone」を初披露するなど先端ハードウエアも存在感を示した。

 台湾貿易センター(TAITRA)の葉明水秘書長は「台湾はIoTのサプライチェーンの一員。台湾の高性能なハードと組み合わせることで、ソフトやサービスが生きる」と話し、台湾企業のIoTビジネスでの成長に自信を示した。
日刊工業新聞2017年5月31日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 台湾COMPUTEXがIoTで賑わっている。PCの時代からスマフォ、そしてモノコトのインターネットと、端末の台数が増える方向に発展してきたITのロードマップの上で、IoTはスマフォより一桁多い台数がネットに繋がる未曾有のビジネスチャンスだ。  ハードウェア、ソフトウェアが現地で一通り揃うならば、あとはそれを持ってきてサービスを実現するだけだ、とも聞こえる現地側の鼻息の荒さは、本来は日本が感じて欲しい商機であったはずだ。  工場の自動化にも早くから取り組み、品質の良いモノづくりが得意で、細やかなところにも機微のある感性を重視したソフトウェアを作ってきた日本こそ本来はIoTのエコシステムを備えた国家だ、というのが商機たる理由だ。  こうしたハードとソフトを組み合わせることによっていかようにでもビジネスは作れるわけだが、依然として日本の意思決定やスピードが遅い。遅かったが故に半導体でもPCでもスマフォでも負け続け、本来ならばIoTの先駆者になるような大企業が苦渋を舐めてきたわけだ。  台湾での盛り上がりを手をこまねいて眺めているだけでなく、それらを使っても良いので先ずはやってみることだ。すでに取り組んで先行している企業はその延長でいかにモノの監視や生産性向上だけではないビジネスモデルを作るのかを検討することだ。  海外でのこのようなイベントに触発されてIoTビジネスに関するスピーディな検討が進められることを切に願っている。

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