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相次ぐ事故やトラブル、JR東日本が再発防止策を徹底

弱点箇所を洗い出し、安全体制を再構築
 JR東日本が4月12日に山手線・京浜東北線の神田―秋葉原間で発生した電化柱倒壊事故を受け、工事のリスクなどを検討する新たな部署の設置など、再発防止策を進めている。本社の電気部門に設計や施工に際し、技術的な検討などを支援する「電力技術管理センター」を設置。また電気工事を施工する東京電気システム開発工事事務所と東北工事事務所に、技術審査の専門部署も新設する。JR東日本は4月29日に東北新幹線の郡山駅構内で架線が切断して一時不通となるなど事故が相次いでおり、安全体制の再構築が求められている。

 「弱点箇所を洗い出して対策を立てる」。電化柱倒壊や架線切断など事故が相次ぐJR東日本の冨田哲郎社長は今後の対応をこう述べた。倒壊した電化柱は度重なる設計変更の末、架線を引っ張る支線が通常よりも約2メートル高い位置に留められていた。さらにその強度計算をせずに施工したことが原因の一つとなった。

 柳下尚道副社長は倒壊した電化柱について「特殊な構造の設備として認識されていなかった」とし、今後は同様の設備を「特殊構造設備」として特別に管理する方針を示した。特殊構造設備の改修や施工に関しては、リスクを検討する「施工リスク検討会」を随時開催。施工リスク検討会には設計者や監督員のほか、請負会社の技術者なども参加して議論する。

 また電化柱の傾きを客観的に判断する基準を設け、傾きを認識した場合の列車停止の判断基準を設定。異常を判断する基準がなかったため、緊急性を認識できず、列車を止められなかった反省に立ったもの。判断の遅れに加え、情報伝達にも問題があったとし、電気部門と土木部門など関係者間の連絡体制も見直す。

 JR東日本は事故後、管内25万本の電化柱と8万6000カ所の支線の緊急点検を実施。倒壊した電化柱と同様に電化柱下部に支線を接続している所が247カ所あったが、いずれも傾きはなかったとした。

 郡山駅構内で発生した架線切断トラブルでは、上り線と下り線をつなぐ渡り線で、パンタグラフに電気を供給するトロリ線の1本が切れ、列車のパンタグラフにも損傷があった。冨田社長は一連のトラブルについて、「リスク管理に弱点があったと認めざるを得ない」としており、設備の設計や施工順序を検討する過程で、リスクや安全性のチェックする機能を高め、再発を防ぐ。
日刊工業新聞 2015年06月05日 建設・エネルギー・生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
山手線の電化柱倒壊事故は、休日の早朝とは言え、運行中に起きたもので、1~2分早いか遅いかで大事故となった可能性がありました。倒壊に至るまでに、何度か事態を阻止できるタイミングがあったにもかかわらず、適切な対応がなされなかったということも問題になっていて、大きな被害を出さずに済んだというのは、奇跡に近いことだと思います。誤解を恐れずにいえば、JR東日本にツキがあるということだと思うので、このツキを生かし、安全体制の構築に全力をあげなければならないと思います。

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