東工大の黒い壁は「電力地産地消」の象徴!

太陽光はどこまで自給自足を促すのか

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 太陽光発電の導入が急ピッチで拡大し、各地で電力系統の負担増加による大規模停電が懸念されるようになった。解決策の一つが太陽光の電力を地域で使うエネルギーの地産地消だ。東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)にあるビルは太陽光の電力を使いながらエネルギーを自給自足し、余った電力を他の建物に融通するキャンパスでの地産地消で系統への負担を抑えられている。

 鉄道の線路の目の前に立つ“黒い壁”が、エネルギーを自給自足するビルだ。黒く見えるのは太陽光パネル。7階建てビルの南と西の壁面、屋上に合計4570枚の太陽光パネルが取り付けられている。このビルは2012年2月に完成した環境エネルギーイノベーション棟だ。
 ビルの入り口の画面で各設備の運転状況を確認できる。11月の晴れた日の正午、太陽光発電244キロワット、受電電力マイナス72キロワット、燃料電池106キロワットと表示されていた。燃料電池は一定運転するので、約100キロワットの電力をビルに供給し続ける。電力会社の系統からの受電電力がマイナスなのは、ビルで使い切れなかった余剰電力を別の建物に送電しているため。天候が良く太陽光の発電が多いので発電量がビルの電力需要を超えている。太陽光の出力が低下し、燃料電池だけの電力で不足すると電力会社からの受電で補う。その時、受電はプラス表示される。

 ビルの建設を指揮した伊原学准教授は「エネルギーをほぼ自給自足できている」と成果を語る。太陽光の年間発電量は42万キロ―45万キロワット時。ビルの電力需要に占める太陽光の比率は30%以上となり、太陽光も主力電源の一つとなった。ただし「系統が必要なくなることはない。系統とのやりとりを少なくしたい」(伊原准教授)という。

 各地で再生可能エネルギーの新規契約が中断されている。使用量を超える電力が太陽光や風力から大量に流れ込むと系統の需給バランスが崩れ、停電が起きるからだ。逆に太陽光、風力の発電が急停止しても系統に負担がかかる。

 このビルは太陽光でつくった電力を自家消費し、余剰電力も他の建物に融通して消費する。再生可能エネルギーの地産地消がキャンパスで行われているため系統に流れ込む電力がなく、負担を減らしている。
 「1日の中でも平準化できる」(同)のも特徴だ。太陽光パネルの設置が屋上だけだと太陽光の位置によって朝、夕は発電量が少なく、正午付近が多くなる。このビルは南面、西面、屋上それぞれのパネルが時系列で発電するので発電量の増減が緩やかになり、日中の受電量の変動による系統側の負担を和らげる。ビル自体が系統を安定化するスマートグリッド(次世代電力網)の役割を果たしているのだ。

 ビルに装備したエネルギー管理システム(EMS)「エネスワロー」は発電や電力需要、水使用量、換気、燃料電池からの温水の流量や熱量など「何千―何万件のデータを計測している」(同)という。そのデータを見ながら設備に微調整をかけて効率的な運転も追求し、ビルの省エネルギー化を進めてきた。
 エネスワローは空調や照明など設備のメーカーが違っても接続、制御でき、実用性が高い。伊原准教授はビルのエネルギーシステムを「エネルギー問題解決の選択肢の一つとして世の中に提案したい」と話す。

日刊工業新聞2014年12月10日モノづくり面

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