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シチズンマシナリーが10年ぶりに10年後のモノづくりを披露!

自社展示会のキーワードは「つなぐ」
シチズンマシナリーが10年ぶりに10年後のモノづくりを披露!

シチズンマシナリーの自社展示会

 10年後のモノづくりを提案―。シチズンマシナリー(長野県御代田町)は、5日まで本社工場で自社展示会「CFA85」を開催した。異なる種類の部品を大量に作る「個の量産」向けの機械として自動旋盤の新製品5機種を含むコンセプトモデルを多数展示した。

 「個の量産」をかなえるキーワードを「つなぐ」とした。通信ネットワークで製造現場の稼働実績を収集し、計画の進捗(しんちょく)を可視化する技術や、工作機械を遠隔操作する技術などを披露した。また、自動旋盤とレーザーの複合機を初公開したほか、切り粉の排出を工夫する低周波振動切削加工技術(LFV)の搭載機を複数展示した。

 CFAは5年ごとの開催で、今回が4回目。前回は2011年の東日本大震災の影響で中止となり、10年ぶりに開かれた。国内外から約2000人の来場を見込む。
(日刊工業新聞2015年06月05日 機械・ロボット・航空機面を一部修正)

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 日刊工業新聞では「メイカームーブメント(製造業革命)」という言葉が話題になり始めた2013年1月に、その胎動を追った連載企画を掲載した。「個の量産」をキーワードに掲げる事例の一つとしてシチズンマシナリーを紹介している。日本のメイカーズ(モノづくりの担い手)は2年前からどのように進化しているのだろうか。
(※肩書きや社名などは当時)

 【復権!モノづくり~新たな“担い手”たち。金型産業に救世主】
 
 東京・渋谷。若者が集まる道玄坂に昨年春、ユニークな「ファブカフェ」がオープンした。レーザーカッターが置かれ、お茶をしながらデジタルなモノづくりが体験できると評判だ。定期的に開催されるイベントには、中小製造業の若手経営者やデザイナーたちが集い、新しいコラボレーションが生まている。

 その中心的存在がケイズデザインラボ(東京都渋谷区)の原雄司社長だ。昨年、3次元(3D)デジタルデータを使ってプラスチック製成型品の表面に模様や質感を作り込む「D3テクスチャー」の技術を拡大するためのコミュニティーを立ち上げた。参加者は金型メーカー、スキャナー業者、デザイン会社などバラエティーに富む。

 金型の表面加工は職人技で、熟練度によって品質に差ができてしまう。D3テクスチャーはデザインから金型製作に至るまで一貫して3Dデータを活用し、皮革製品特有のしわや縫い目模様など、意図したデザインを成型品表面に再現する。「金型加工や成形はまさに日本にマッチした技術。デジタル加飾で高品位なものを認証、普及させたい」と原社長は言う。

 日本の金型産業は顧客の海外移転が加速し、国内市場は縮小傾向だ。低価格を売りとする中国や韓国の金型メーカーとの競争も激しく、富士テクニカと宮津製作所が統合するなど企業数も減ってきている。現状打破には「各社の協調」(牧野俊清日本金型工業会会長)が欠かせない。

 ケイズデザインラボはノウハウの一定範囲を開示している。オープンソース化がインターネット業界を劇的に進化させた。今後、その波は製造業にも押し寄せるだろう。リアルの職人知識が形式知として共有されれば、日本の金型産業浮上のきっかけになる。

 メイカームーブメント(製造業革命)によって設計・試作までは「女子大生でもできるようになった」と言うのは、サッソー(東京都渋谷区)の石橋秀一代表。より大きなうねりにするには評価や量産段階での革命が欠かせない。それを支える機械加工の分野で、既存の生産モデルから脱却する動きが進んでいる。

 「個の量産」を提唱する自動旋盤メーカーのシチズンマシナリーミヤノ。20世紀のモノづくりで、自動旋盤は同じ部品を大量生産することを得意としてきた。グローバル化を背景に標準化の要請が強まっている一方、国や地域の実情に合った「個性を持つ」製品を求める動きも広がっている。杉本健司社長は「標準化と個性化という相反する概念を両立す手段が『個の量産』だ」という。

 同社は量産の効率を維持しつつ、ユーザーの好みに応じて部品をつくり分けたり、歯科用インプラントなどの医療部品を一人ひとりの体格に合わせた形状に加工できるようにした。プログラムを次々と自動旋盤に転送し、異なる部品を連続生産する仕組みだ。パナソニックでSDカードの開発者だったクレイジーワークス(東京都渋谷区)の村上福之代表は「大量生産する巨大メーカーのメリットがなくなりつつある。嗜好(しこう)が特別になればなるほど単価が高くても人は買う」と指摘する。

 顧客のアイデアや価値を理解し、製造現場に落とし込むのが、新しい時代のメイカーズ(モノづくりの担い手)。そのムーブメントは日本の産業構造にプラスに働く。世界に冠たる町工場という産業レイヤー(階層)があり、彼らを「リアルメイカーズ」と呼ぶ人もいる。不況で苦しむ中、試作から量産のギャップを埋めるツールが増えれば、階層の秩序が変わるかもしれない。
日刊工業新聞2013年01月10日 1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
先日、ある下請け加工業者の二代目に取材する機会があった。新しいMCを導入したのをきっかけにコンシューマ向けの自社製品を開発、商品化した。中堅・中小メーカーが「個の量産」ビジネスを実現させるカギはリアルな人的ネットワークだと感じる。

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