なぜ腕時計は売れているのか? セイコーHD社長が選択した集中戦略

半導体事業を分社し時計の「SEIKO」際だたせる。インバウンド需要に海外販売は円安で上積み

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グランドセイコー(GS)を生産する盛岡セイコー工業
 主力の腕時計事業が好調なセイコーホールディングス。訪日外国人増に伴うインバウンド需要や個人消費が堅調な北米経済などにより、着実に販売量を伸ばしている。また、第2の柱である電子デバイス部門については、年内に半導体事業を分社化することを決定。新会社はM&A(合併・買収)なども視野に、競争力確保への道筋を探る。セイコーグループとしては、精密部品など同部門の他事業をいかに成長軌道に乗せるかも重要テーマだ。中村吉伸社長に展望を聞いた。

 ―腕時計の販売は好調を維持しています。
 「国内はインバウンド需要が引き続き追い風。今の為替状態が続けば訪日旅行者数はもっと増えるだろう。ただインバウンド向けは国内販売の10―15%程度。影響は大きいが、それ以外の日本人による消費も伸びている。海外は総じて安定している。需要そのものはほぼ横ばい、そこに円安効果が上積みされている状況だ。国別では多少バラつきがあるが、米国、ドイツ、フランスなどの好調さが目立っている」

 ―今後の戦略は。
 「腕時計事業へ集中的に投資していく。例えば前期は広告宣伝にかなり力をいれたが、今期はそれ以上の投資規模にする予定だ。グランドセイコー、アストロン、プロスペックスの戦略3ブランドを引き続き拡販するほか、中国などで脚光を浴びる機械式時計の強化にも力を注ぐ」

 ―一方で電子デバイス部門は中期目標に達していません。
 「半導体は好調だが、カメラ用シャッターやハードディスク駆動装置(HDD)部品は依然として厳しい。それでも近年の採算改善に向けた取り組みにより、ようやく黒字化しつつある。また、工作機械など精密機械関連をもっと伸ばしていきたい」


 ―日本政策投資銀行と共同で半導体事業の新会社を立ち上げます。
 「半導体は大がかりな投資が必要な事業。我々だけの資本力では競争力を維持しづらくなる可能性がある。それにセイコーインスツル(SII)の1事業だった今までは、時計製造など他事業と投資のバランスを取らないといけなかった。これからは思い切って投資できる体制になる」

 【記者の目/攻めの経営期待】
 腕時計事業はシェア拡大を狙う中・高価格帯でどれだけブランド力を高められるかがポイント。特にアジア圏ではインバウンド需要の取り込みにもつながることから、積極的な宣伝活動がみられそうだ。

 一方、半導体事業は電源用集積回路(IC)や記憶素子(メモリー)の「EEPROM」など、特定領域における技術力が強み。特に品質については高い評価を得ている。今後は大規模投資やM&Aなど、攻めの経営に期待したい。
(聞き手=藤崎竜介)

日刊工業新聞2015年06月05日 機械・ロボット・航空機面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

アップルウオッチが出たことで伝統的な腕時計の価値が再認識されているのではないか。

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