スマニューやグノシー創業者を輩出した“スーパークリエーター”に起業応援団
未踏ファウンデーションが和製天才プログラマーの力をさらに引き出す
情報処理推進機構(IPA)は若手IT人材を発掘・育成する未踏事業の目玉である「スーパークリエータ(スパクリ)」の認定者数人を近く決定する見通しだ。スパクリとは、未踏事業で毎年採択される研究プロジェクト案件の中から、卓越した成果を上げた人材に与える称号。未踏事業を通して輩出した研究者「未踏クリエータ」は2000年以降で延べ1600人を超え、うちスパクリは2割弱。この実績をさらに発展させるため、起業を働きかけるなどの動きが活発化し、大きなうねりとなっている。
【応援団が誕生】
未踏事業はかつては“天才プログラマー”の発掘を看板に掲げていたが、いまはイノベーションの担い手という意味を込めて全体を「未踏クリエータ」と銘打っている。採択してきた研究案件はプログラム言語やソフトウエアの開発から、エンターテインメントまで幅広い。
最近はモノのインターネット(IoT)時代を反映して、ハードウエアを絡めた融合研究が増えている。昨年開催したスパクリの成果発表会では開発者がメカニカルスーツを身にまとって登場し、話題を集めた。
未踏事業では申請した研究案件が採択された後、それぞれが約1年にわたってテーマを深掘りして成果をまとめる。プロジェクトとしてはそこがゴールであり、卒業後は研究者になったり、就職したりとそれぞれの道を歩む。起業する者もいるが、これまで正式な支援のスキームはなかった。ただ、育てただけでは宝の持ち腐れとなりかねず、「日本の頭脳となるべき有能な人材が外資系IT企業に青田買いされてしまう」といった指摘もあった。
こうした中、3月に一般社団法人未踏(未踏ファウンデーション)が旗揚げし、未踏クリエータをはじめ若手IT人材の応援団として名乗りを上げた。起業に必要な教育や啓発に加え、人脈の紹介や知的財産管理の手伝い、ベンチャーファンドとの橋渡しなどを行う。
「日本型イノベーションを自律的に発展させるための起爆剤となりたい」と語るのは、未踏ファウンデーションの竹内郁雄代表理事。未踏プロ以外にも個人会員を募り、「将来は1万―2万人規模を目指す」という。
【成功事例】
未踏クリエータの歴代をみると、国立大や有名私大の学生が多いが、14年度採択では史上最年少の中学生クリエータも誕生するなど若手の台頭が目立つ。ユニークなアイデアで「魔法使い」の異名を持つのは落合陽一氏。テレビ番組でシャボン玉を用いたディスプレーを披露して、“未踏の力”を知らしめた。
キュレーションニュースサービスの「スマートニュース」と「グノシー」の創業者はいずれも未踏スーパークリエータ出身者。“未踏対決”として注目される。未踏事業は着実に成果を積み上げているが、大きく成功するには米シリコンバレーのような仕組みが必要。未踏ファンデーションの役割が試される。
<インタビュー=早稲田大学理工学術院基幹理工学研究科表現工学専攻・鈴木遼さん>
【”読み書き”プログラミングにしたい】
未踏事業はプロジェクトマネージャー(PM)らがメンターとなって研究者を指導する。ベテランPMが「プログラマーとしての実力は世界でも数%に入る」と太鼓判を押すのが、早稲田大学理工学術院基幹理工学研究科表現工学専攻の鈴木遼さんだ。その人物像に迫る。
―siv3Dを開発した出発点は。
「小学生のとき都市育成シミュレーションゲーム『シムシティ』にはまり、自分でも作りたいと思った。高校時代にコンピューター同好会を作り、プログラム言語の『C++』を使って簡単にゲームやメディアアートを作れるライブラリ『siv3D』の開発を始めた。大学(早大)では『早稲田コンピューターエンターテイメント』というサークルをつくり、siv3Dを公開した。これが転機となった」
―具体的には。
「サークル活動を通して、自分が何かしたいのではなく、自分が作ったモノを使ってもらうことの楽しさを知った。アマチュアでもゲーム会社が使う高度な技術が手軽に使えれば、ゲームやメディアアートの開発がもっと楽しくなる」
―siv3Dの特徴は。
「プログラムの記述が簡単なこと。わずか数行で音や映像を使った双方向のアプリケーション(応用ソフト)が作れる。短時間で成果が分かるので、プログラミング教育にも適している。1日4時間、3日間の授業で中学生がゲームを作った。読み書きそろばんではなく、読み書きプログラミングにしたい」
(聞き手=斎藤実)
【応援団が誕生】
未踏事業はかつては“天才プログラマー”の発掘を看板に掲げていたが、いまはイノベーションの担い手という意味を込めて全体を「未踏クリエータ」と銘打っている。採択してきた研究案件はプログラム言語やソフトウエアの開発から、エンターテインメントまで幅広い。
最近はモノのインターネット(IoT)時代を反映して、ハードウエアを絡めた融合研究が増えている。昨年開催したスパクリの成果発表会では開発者がメカニカルスーツを身にまとって登場し、話題を集めた。
未踏事業では申請した研究案件が採択された後、それぞれが約1年にわたってテーマを深掘りして成果をまとめる。プロジェクトとしてはそこがゴールであり、卒業後は研究者になったり、就職したりとそれぞれの道を歩む。起業する者もいるが、これまで正式な支援のスキームはなかった。ただ、育てただけでは宝の持ち腐れとなりかねず、「日本の頭脳となるべき有能な人材が外資系IT企業に青田買いされてしまう」といった指摘もあった。
こうした中、3月に一般社団法人未踏(未踏ファウンデーション)が旗揚げし、未踏クリエータをはじめ若手IT人材の応援団として名乗りを上げた。起業に必要な教育や啓発に加え、人脈の紹介や知的財産管理の手伝い、ベンチャーファンドとの橋渡しなどを行う。
「日本型イノベーションを自律的に発展させるための起爆剤となりたい」と語るのは、未踏ファウンデーションの竹内郁雄代表理事。未踏プロ以外にも個人会員を募り、「将来は1万―2万人規模を目指す」という。
【成功事例】
未踏クリエータの歴代をみると、国立大や有名私大の学生が多いが、14年度採択では史上最年少の中学生クリエータも誕生するなど若手の台頭が目立つ。ユニークなアイデアで「魔法使い」の異名を持つのは落合陽一氏。テレビ番組でシャボン玉を用いたディスプレーを披露して、“未踏の力”を知らしめた。
キュレーションニュースサービスの「スマートニュース」と「グノシー」の創業者はいずれも未踏スーパークリエータ出身者。“未踏対決”として注目される。未踏事業は着実に成果を積み上げているが、大きく成功するには米シリコンバレーのような仕組みが必要。未踏ファンデーションの役割が試される。
<インタビュー=早稲田大学理工学術院基幹理工学研究科表現工学専攻・鈴木遼さん>
【”読み書き”プログラミングにしたい】
未踏事業はプロジェクトマネージャー(PM)らがメンターとなって研究者を指導する。ベテランPMが「プログラマーとしての実力は世界でも数%に入る」と太鼓判を押すのが、早稲田大学理工学術院基幹理工学研究科表現工学専攻の鈴木遼さんだ。その人物像に迫る。
―siv3Dを開発した出発点は。
「小学生のとき都市育成シミュレーションゲーム『シムシティ』にはまり、自分でも作りたいと思った。高校時代にコンピューター同好会を作り、プログラム言語の『C++』を使って簡単にゲームやメディアアートを作れるライブラリ『siv3D』の開発を始めた。大学(早大)では『早稲田コンピューターエンターテイメント』というサークルをつくり、siv3Dを公開した。これが転機となった」
―具体的には。
「サークル活動を通して、自分が何かしたいのではなく、自分が作ったモノを使ってもらうことの楽しさを知った。アマチュアでもゲーム会社が使う高度な技術が手軽に使えれば、ゲームやメディアアートの開発がもっと楽しくなる」
―siv3Dの特徴は。
「プログラムの記述が簡単なこと。わずか数行で音や映像を使った双方向のアプリケーション(応用ソフト)が作れる。短時間で成果が分かるので、プログラミング教育にも適している。1日4時間、3日間の授業で中学生がゲームを作った。読み書きそろばんではなく、読み書きプログラミングにしたい」
(聞き手=斎藤実)
日刊工業新聞2015年06月03日 電機・電子部品・情報・通信面