どうするホンダ!国内生産36年ぶりの低水準、輸出戦略の見直し必至

「国内で作って国内で売りきる」モデルが決壊。八郷次期社長は地産地消にメスを入れるのか?

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今月末に社長に就任する八郷隆弘氏(左)
 ホンダが5月までに、2015年度の4輪車国内生産を計83万台程度とする計画を複数の主要サプライヤーに伝えたことが分かった。計画通りなら1979年度以来、36年ぶりの低水準となる。国内販売の低迷が続くと見て4月から鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の稼働率を下げることが響く。過剰在庫も背景にあるようだ。生産の現地化で輸出も減少しており、国内生産の縮小が深刻化している。

 生産計画は年初は90万台程度を計画していた。複数のサプライヤーによれば、軽自動車市場の環境悪化で軽を中心に下方修正。軽の生産拠点である鈴鹿製作所は4月に2本あるラインの1本を昼夜操業の2直から1直にした。

 1直体制は年内いっぱいは続ける。「一時より改善したが3月末時点でも在庫は適正水準を越えていた」(サプライヤー幹部)との声もあり在庫圧縮も下方修正の背景にありそうだ。鈴鹿製作所の年産能力は53万台。寄居工場(埼玉県寄居町)、狭山工場(同狭山市)は2直を続ける。

 一方でホンダの国内生産は生産の現地化を進めたことで輸出が減り、国内販売の成否が国内生産に直結する構図になっている。15年度の国内販売は軽の市場環境悪化だけでなく、消費増税の影響や新車投入も少ないことで低迷する見通し。前期比3%減の74万台を計画する。国内販売減が生産に響く。今夏以降欧米向けの小型車「フィット」の日本での生産を始め輸出を立て直す計画だが、年5万台と小規模で15年度の国内生産への寄与は小さい見込み。

 長く100万台を超えてきたがリーマン・ショック以降は東日本大震災直後を除き90万台超を維持してきた。14年度はフィットの相次ぐリコールで新車発売が遅れ、販売が失速した一方で国内生産に占める輸出の割合は、業界最低の3%まで縮小。

 年度当初に約105万台を計画していた国内生産は震災直後の11年度と同水準の87万台だった。現時点で15年度はこれよりさらに4万台程度下回る計画。ホンダの国内の年産能力は約100万台。モノづくりの基盤となる国内生産の立て直しが急務だ。

 【解説】
 国内で作って国内で売りきる―。国内生産100万台・国内販売100万台を目指してきたホンダだが、主力車種「フィット」の相次ぐリコールで、その理想的な事業構造の実現は遠のいた。国内生産の縮小が深刻化し、輸出の立て直しと国内販売の回復が求められている。

 為替リスクの耐性をつけるために、生産を現地化するのは正攻法だ。現地化で輸出を減らし、国内で生産・販売を完結する自立した事業構造は、安定的な収益力強化につながる。だが、その実現には国内販売が高水準で持続することが大前提だ。14年度、寄居工場が本格稼働し、新型フィットなどの新車攻勢で国内生産・販売100万台は手に届くところまで来た。

 目算が狂ったのはフィットの相次ぐリコールだ。品質チェックを強化せざるを得ず、後の新車投入が計画より遅れた。販売が失速し、輸出を絞ったことが裏目に出た。「販売が減少した際に生産を持続するための輸出モデルがなくなった。リスクへの備えが不十分だった」(岩村哲夫副社長)。生産調整を余儀なくされ、採算は悪化した。
 
 これを教訓に今夏以降、欧米向けフィットの生産を日本で始め、輸出モデルを確保する。国内生産に占める輸出の割合を現在の3%から1割程度に引き上げる考えだ。販売不振に陥った際のリスクを回避する体制づくりが求められている。
 
 何よりも優先すべきは国内販売の回復だろう。相次ぐリコールで岩村副社長は「ブランドが毀損(きそん)している」と打ち明ける。ホンダ車離れが起きている可能性も否定できない。消費増税の影響が長引き、ただでさえ厳しい市場環境で販売回復への道は険しい。
(池田勝敏)

 <関連記事=子会社八千代は、軽から特装車に軸足>
 八千代工業は26日、四日市製作所(三重県四日市市)の完成車生産ラインの生産能力を縮小する一方、ダンプトラックなどの特装車の生産を強化する方針を明らかにした。同社はホンダの軽自動車を受託生産している。かつては1日1000台規模で生産していたが、ホンダが軽の自社生産を始めたため、現在は日産150台に減少。今後数年かけて生産能力を150台レベルに落とし能力の余剰を解消する。

 軽スポーツカー「S660」をはじめとする少量品や特殊品に特化した生産体制に転換する。現在、特装車は同製作所の敷地内の別の建屋で年間約3000台生産している。完成車生産ラインの縮小で空いたスペースを特装車生産に充て、特装車の生産能力増強と効率化を進める。

日刊工業新聞2015年05月27日 3面/06月01日 1面&自動車面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

ホンダは今年度中にメキシコや英国から「フィット」の生産を国内に戻し、輸出比率を前期の3%から10%弱にまで引き上げる方針という。一方で新興国の通貨安も不安材料。レアルなどの下落で1000億円以上の営業利益の下振れ要因になる。現地生産が定着し調達先が世界に広がり、米ドル建てで部品を買う新興国の工場の採算が悪化するためだ。八郷氏は、購買や鈴鹿製作所長、米国や欧州、中国と世界各地域に駐在した経験があり、世界を俯瞰できる能力を生かしてほしい。

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