“クロネコ男子”を束ねる若き生え抜きリーダーが描く物流改革

ヤマトホールディングス・山内新社長「責務はラストワンマイルとノンデリバリーで成長を実現すること」

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 前社長の木川眞会長が2013年に打ち出した経営戦略「バリューネットワーキング構想」に沿って大型物流施設に投資している。19年の創業100周年に向け、この路線を継承する。
 山内「同構想で物流をコストセンターから価値を生む手段に変え、ヤマトを世の中に新しい価値を生む企業体にする。私の責務はラストワンマイルのネットワーク事業を強化し、ノンデリバリー事業の成長を実現すること」

 稼働済みの羽田クロノゲートと厚木ゲートウェーに続き、中部と関西でゲートウェーを建設し、東京―大阪間の即日配達実現を目指す。
 山内「三つのゲートウェーの稼働でサービスエリアを拡大し、企業の負担だった流通在庫を減らし、流通加工も効率化できる。羽田クロノゲートは想定より早くスペースが埋まっている。しかし、保管型の倉庫ではないので、いかに回転率を上げられるかが課題だ。eコマース、企業間物流、アジア中心の国際物流、社会的責任の中で手がける生涯生活支援の4領域に重点を置く。ヤマトの細かなネットワークを生かして、止めない物流で付加価値をつけていきたい」

 クロネコメール便を3月末で廃止し、4月から新サービスを開始。日本郵便以外の事業者が請求書などの「信書」を送付すると、利用者が罰則を受けるためだ。
 山内「信書の基準は実にあいまい。封書の中身が信書かではなく、大きさで決める外形基準の導入を提案している。今後も規制緩和の議論に参加したい。国民の問題意識を高め、安心して使えるサービス実現に努力したい」

 90年代半ばに人事制度構築のプロジェクトに加わり、宅急便を生み出した小倉昌男元社長にピラミッド型に昇進する人事制度を提案して烈火の如く怒られた。ヤマトに必要な人材は仲間に認められ、客に信頼される人材だと強く言われ、仲間や部下が評価する制度を導入した。その教えが今も仕事に生きている。

 <昨年12月18日の社長交代会見>
 ヤマトホールディングスは18日、事業会社のヤマト運輸の社長である山内雅喜氏が2015年4月1日付で社長に就任する人事を発表した。木川眞社長は代表権のある会長に就く。社長に内定した山内氏は「ヤマト運輸の『ラストワンマイル』を基盤に、グループ全体で新たな価値を生み出していきたい」と抱負を述べた。

 ヤマトは創業100周年を迎える19年を最終年度とする長期経営計画を策定。木川氏は社長交代を就任4カ月前に決定した意図を「長期経営計画の中間地点で、経営のスピードを落とさないために、早いタイミングで社内外に発表した」と説明した。

 木川氏は11年からヤマトホールディングスの社長を務め、13年に新たな経営戦略「バリューネットワーキング構想」を打ち出し、大型物流施設「羽田クロノゲート」を開設するなど、事業基盤の拡充を進めた。
 
 【山内氏の素顔】
 社長就任の打診は2日前。「正直驚いたというのが感想」と、まさに“寝耳に水”の交代劇だった。一方で、「経営のスピードを緩めないという木川社長の思いを感じて、身の引き締まる思いがした」と話す。木川氏はバリューネットワーキング構想の実現を託すことになる山内氏について、「人望が厚く、労働集約産業では人の気持ちを束ねられるというのが非常に大事」と評価する。

 趣味は中学時代に始めたテニス。入社時、ヤマト運輸にはテニス部がなかったため、自らテニス部を創部して、初代部長も務めた。行動力とフットワークの軽さが持ち味だ。座右の銘は「至誠通天」。吉田松陰の言葉で、誠意を持って尽くせば、願いが天に通じるという意味がある。「心を込めて発する言葉は、必ず相手に通じる。社員全員に真心を大事にする気持ちをもってもらいたい」。家族は妻と息子が3人。

 山内雅喜(やまうち・まさき)1984年金沢大文卒、同年ヤマト運輸入社。08年ヤマトロジスティクス社長兼ヤマトホールディングス執行役員。11年ヤマト運輸社長、今年4月からヤマトホールディングス社長。長野県出身、54歳。
 (文=高屋優理)

日刊工業新聞2015年04月15日 建設・エネルギー・生活面の記事を一部修正

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明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

宅急便市場はヤマトHD、日本郵政、佐川急便を傘下に有するSGホールディングスの3社でシェア9割を占める。日本郵政が今年秋にも上場を予定で、豪の物流大手の買収を決めるなど攻勢を強めようとしている。ラストワンマイルではSGがローソンとの提携を発表した。ヤマトは”止めない物流”構想で、宅急便のネットワークと倉庫機能、機器保守など企業向けの拡大を狙う戦略だ。山内氏はどのようなスピード感で次ぎの戦略を打ってくるか。ニュースイッチの高屋ファシリテーターが昨年、ヤマトの長期連載を執筆した。引き続き同社のホットな動きを提供してくれるだろう。

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