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今日はAKB総選挙!キャプテンとチームマネジメントについて考える

さっしーはセンターでリーダーか?サッカーW杯の歴代優勝国のキャプテンはほとんど“守備の人”だった
今日はAKB総選挙!キャプテンとチームマネジメントについて考える

さっしー(左から2人目)はボランチ型のゲームキャプテン!?

 ちょうど1年前、サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会開幕直前に日刊工業新聞電子版のオリジナルコンテンツとして「キャプテンからみえるワールドカップの景色」という記事を掲載した。キャプテンのポジションから優勝国を占うというものだ。結果は外れたが、法則は正しかった(優勝はドイツでキャプテンはラーム選手)。

 ちょうど同じころ、AKBの総選挙があり、このアイドルグループにおけるキャプテン論とチームマネジメントも比較対象に取り上げている。今日は総選挙。AKBスタート時から、絶対的なキャプテンとしてチームをまとめてきた高橋みなみが今年卒業、後任に指名したのは、今やAKBグループの顔で今回も総選挙1位の最有力候補である指原莉乃ではなく横山由依だった。リーダーの資質は?条件は?・・。
 
 <キャプテンからみえるワールドカップの景色>

 日頃、企業経営者に会っているため、どうしてもチームリーダーに注目してしまう。日本代表のキャプテンは長谷部誠。ザッケローニ監督の発言をみると長谷部に対する信頼は相当に厚いようだ。今シーズンの後半はケガのため、所属チームでほとんどプレーできなかったが、よほどのことがない限り23人のメンバーに入れただろう。前回の南アフリカ大会。長谷部はゲームキャプテンであり、チームキャプテンは川口能活だった。今回、長谷部は正真正銘のリーダーとして挑む。
 
 浦和レッズ時代の長谷部は、もっと攻撃的な位置で結構自分勝手なプレーをしていた印象がある。いつ頃から「心を整える」ようになったのだろうか。ドイツに移籍して厳しい環境下で鍛えられたこともあるだろうが、ポジションがやや守備的なボランチの位置になり、全体を目配せできる力と献身性が身に付いたように感じる。プレー中の行動は、日常のキャプテンシーまで養うのだろう。
 
 リーダーは守備者が適役

 日本代表を含む出場32カ国のキャプテンをみると、圧倒的に守備的なポジションが多い。ゴールキーパー(GK)5人、ディフェンダー(DF)8人、守備的ミッドフィルダー(MF)9人、攻撃的MF2人、フォーワード(FW)8人。FWの場合、実績のあるスターがキャップテンになっている。

 では1970年以降の優勝国のキャプテンのポジションを振り返ってみよう。70年ブラジル・アウベルト(DF)、74年西ドイツ・ベッケンバウアー(DF)、78年アルゼンチン・パサレラ(DF)、82年イタリア・ゾフ(GK)、86年アルゼンチン・マラドーナ(FW)、90年西ドイツ・マテウス(DF)、94年ブラジル・ドゥンガ(MF)、98年フランス・デシャン(MF)、02年ブラジル・カフー(DF)、06年イタリア・カンナバーロ(DF)、00年スペイン・カシージャス(GK)。驚くことに、マラドーナ以外、キャプテンはすべて”守備の人”である。
 
 出場32カ国のキャプテンのポジションは?

 86年メキシコ大会のアルゼンチン代表は、当時の監督がマラドーナをキャプテンに指名し、すべて彼中心のシステムを作り上げた。歴代最高のサッカー選手といわれるマラドーナと比較されるメッシ。今回のアルゼンチン代表もメッシによるメッシのためのチームである。以前はクラブチームのバルセロナで爆発的な得点力を発揮するが、代表ではまったく活躍できなかった。ところがこの1年はそれが真逆になり、今は代表でしか輝けていない。マラドーナ以来となる「FWキャプテン」チームが優勝し、それが同じアルゼンチン、そしてメッシとなれば、実によくできたストーリーではないか。
 
 チームキャプテンとゲームキャプテン

 話しはそれるが、先週末に総選挙があったAKB48も、チームマネジメントを考える上で、非常に興味深い対象だ。大所帯の中にチームや姉妹グループをつくり、キャプテンを置くことで全体の底上げにつなげているようにみえる。HKT48の躍進は指原莉乃(さっしー)のリーダーシップなくしては実現しなかった。AKB48の総監督は高橋みなみだが、彼女はサッカーでいうならまさにチームキャプテン。

 それに対してさっしーはゲームキャプテンであり、しかも長短のパスを繰り出してメンバーの良さを引き出せるボランチタイプである。昨年、さっしーは総選挙で1位になったが、AKBのセンターFWはやっぱり前田敦子や大島優子なのだ。今年初めて1位になった渡辺麻友は前の2人に比べまだまだセンター(FW)として「キャラが立っていない」ように感じるが、ある意味、AKBは正常なシステムに戻った。
 
 個人よりもチームを見る米の投資家

 「ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く」の著者で、日本のベンチャー投資家の第一人者である斎藤ウイリアム浩幸氏によると、「日本はグループによる改善などは得意だが、マネジメントにおけるチーム力が足りない」という。シリコンバレーの投資家は、経営者個人の資質よりも、ベストな経営チームか?という視点を重視する。チームスポーツと企業経営を同じ土俵で論じるつもりはないが、サッカーのナショナルチームとスタートアップ(創業間もない企業)はどこか似ているように思う。

 4年間というある程度の期間で結果を出す必要があり、人(選手)の入れ替わりも多い。サイバーエージェント・ベンチャーズ代表取締役の田島聡一氏は「出来過ぎる経営者ほど人に任せらず困難が生まれる」と指摘する。若い起業家は、自分がどのポジションのキャプテンであるのかを分析してみるのも面白い。現在のサッカー日本代表は男子の長谷部、なでしこの宮間あやとも、チームマネジメントに適したすばらしいキャプテンシーを有している。

 W杯に戻ろう。日本代表は極めて難しいグループに入ったと感じている。まずキャプテン・長谷部はスタメンで起用されるのか。最近の成長ぶりから言ってザッケローニ監督は、ボランチの一角に山口をチョイスするだろう。本来なら遠藤がパートナーを組むだろうが、個人的には遠藤を温存し、後半早い時期に流れを変えるために戦術眼の高い遠藤を投入するプランを推したい。初戦は絶対に先制点を奪われないため、長谷部、山口のダブルボランチで慎重に入るのがよいのではないか。遠藤は先日のテストマッチでゲームキャプテンを務めており、長谷部と途中交代しても不安はない。
 
 優勝はブラジルかアルゼンチンか…

 起用法まで書いたからには、予想をしないわけにはいかない。初戦のコートジボワールは2―2、第二戦のギリシャは1―1と二試合続けてドローと読む。最終戦のコロンビアと予選突破を賭けて戦う。勝てば1勝2分で、おそらくグループ2位通過となり、ベスト16の相手はD組1位とみるイタリア。去年のコンフェデレーションカップで日本と激闘を演じ勝機ある。今大会、ベスト8まで進めば十分成功だとう思う。

 では優勝チームはどこか。キャプテンのポジション論からいえば、今や世界一のセンターバックと評されるチアゴ・シウバ率いるブラジルが本命となる。それではつまらない。データを覆すにはドラマ性がいる。決勝の相手はメッシ擁するアルゼンチンしかない。メッシがジュール・リメ・トロフィーを掲げれば、まさに歴史に名を刻む。開催への反対行動も多発するブラジル国内だが、聖地マラカナンスタジアムで、決勝が宿命のライバル対決となれば、いやがおうでも盛り上がる。
 (文=明豊)
日刊工業新聞電子版2014年 6月13日の記事に一部加筆・修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近もディー・エヌ・エーの南場さんや元LINEの森川さん、クックパッドの佐野さんなど注目されるリーダーと話したり、発言を聞く機会があったが、何となく共通項として感じるのは、ホスピタリティーである。

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