「ICT×製造」で激突!米はGEやIBM、独はシーメンスやボッシュ、日本は?

連載バックナンバー「つながる工場(5)」July.2014

 モノのインターネット(IoT)で勢いづく米国のハイテク産業。国家戦略として「インダストリー4・0(第4次製造業革命)」を進めるドイツ。双方で切り口は違っても目指す方向性は同じ。その背景には“IT×製造”の新潮流をめぐる覇権争いがある。この動きに日本勢はどう向き合えばいいのだろうか。

 インダストリー4・0とは、大手から中堅・中小企業までネットでつながり、ドイツの産業全体が丸ごと一つの「工場」となること。コトは数年前に始まっていた。

 CAE(コンピューター解析)で実績を持つ電通国際情報サービス(ISID)の吉本敦取締役常務がインダストリー4・0を初めて耳にしたのは「2年前のことだった」。

 新事業のネタ探しで訪ねた米シンシナティ大学のジェイ・リー教授から「インダストリー4・0の世界がこれからやってくる。工場はもちろん、すべてのモノがインターネットにつながっている状態が当たり前となる」という熱弁を聞いた。

 当時は「そこまでいくのか」(吉本氏)と半信半疑だった。だがその後、米政府が全米の学者や産業界の有識者60人をホワイトハウスに集めて会議を開き、リー教授も招かれた。会議ではインダストリー4・0に米国として、どう対抗するか議論されたという。

 当時、米国勢は「サイバー・フィジカル」と呼ぶ概念を提唱。「フィジカル(物理的)なものが一つあれば、必ずサイバー(仮想)上にコピーをつくる。問題が生じたらサイバー空間でシミュレーションして最適化し、フィジカルな現実世界に戻す」(吉本氏)といった考え方が原点にある。

 【系列の課題】
 それから2年―。2014年3月にゼネラル・エレクトリック(GE)やIBMなど米ハイテク5社がIoT関連の標準化団体「IIC」を設立。標準化の主導権争いは今に始まったものではないが、時を同じく2、3年でビッグデータ(大量データ)技術が台頭し、IoTの価値を押し上げたことも見逃せない。

 「インダストリー4・0は日本にとって悪い話ではない」と語るのは産業競争力を研究する元橋一之東大工学系研究科教授。「生産プロセスなどもモジュール化する。それにより中堅・中小が部品をつくり、大企業が統合するという役割分担が徹底できる」という。

 インダスリー4・0は日本勢にとって取り組みやすくも見えるが、日本の強みは特定のサプライチェーンが出来上がっていること。「日本がドイツとすべて同じことをやれば過度な価格競争に陥り、中小企業が軒並みつぶれる。系列関係を緩めるのはいいが、日本の強みを生かすことが必要だ」と元橋教授は指摘する。

 【「日本版」視野】
 6月上旬。ミュンヘンで開かれた「オートマチカ国際展示会」に富士通は視察チームを派遣。シーメンスの工場も見学し、インダストリー4・0がまだ概念先行であることを確認した。一方、IoTの広がりによって技術革新が進むことも確信した。永嶋寿人ものづくりビジネスセンター長は「日本版」を視野に「自社工場でリファレンス(参照)モデルをつくりたい」と話す。日本的な現場力を生かしてグローバルで戦う―。日本のモノづくり全体に突きつけられた課題でもある。
 (おわり)

日刊工業新聞2014年07月18日 1面
IICより

明 豊

明 豊
06月06日
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インダストリー4・Oというとドイツばかりに目がいきがちだが、米国のICT分野におけるデファクトを握る力はやはりずば抜けている。インダストリー4・0はモノづくりの革新ではあるが、ベースにはICTのプラットフォーム競争がある。日刊工業新聞では今後もインダストリー4・0の連載等を継続的に掲載していく。

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やま D
やま D
06月06日
自分もドイツばかり注目していました!米国もこの分野の力があるんですね!
  

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