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菊池製作所が装着型の歩行支援ロボット、東工大と共同開発

医療機器認定へ来年に臨床試験用を提供。パーキンソン病患者や高齢者の転倒予防効果を検証
菊池製作所が装着型の歩行支援ロボット、東工大と共同開発

歩行支援ロボ「ウォークメイト」でパーキンソン病患者の歩行支援やリハビリ目指す

 菊池製作所は東京工業大学の三宅美博教授と共同で、歩行支援用の装着型ロボット「ウォークメイト」を開発した。パーキンソン病患者などの転倒予防やリハビリ効果を狙い2015年度中にドイツで臨床試験用のデータ収集を始める。ドイツのパートナー企業と連携し、医療機器認定を目指す。産学連携と福島県の開発助成事業の後押しを受け、金属加工からスタートした企業が医療ロボットメーカーを目指して第一歩を踏み出す。

 福島県の「ふくしま医療福祉機器開発事業費補助金」を活用し、装着型ロボを開発した。肩と腰に二つずつモーターを配置し、腕と脚を振る動作をリズムに合わせて支援する。人間の歩行リズムに同調するように支援するタイミングを制御する。早足気味の人やゆっくりな人など人に合わせて支援できる。

 

 今回、両腕両脚のタイプも開発した。実証実験では腕だけの支援と腕脚両方の支援を試し、歩行の安定性を評価する。腕の支援だけでも安定することを実証し、腕のみのタイプを製品化する。腕の支援は脚よりも小さな力ですむため、装置の軽量化と稼働時間を延ばすことにつながる。また急に急ぎ足になるなど、タイミングがずれても転倒しにくい利点がある。

 パートナー企業と連携しドイツと日本の医療機関で、臨床試験の計画を決める基礎データの収集を始める。短期的にパーキンソン病患者や高齢者などの転倒予防効果を検証し、長期的には装着によるリハビリ効果を検証する。

 転倒による骨折は高齢者が寝たきりになる主要原因の一つ。運動器症候群(ロコモティブシンドローム)の患者予備群は日本に4700万人いると推計されている。

 パートナー企業とは福島県の助成事業を通し知り合った。ドイツで試験を実施する医療研究者や病院が決まり、臨床試験に向けた計画作りを進めている。菊池製作所は16年には臨床試験用などに試作機の提供を始める予定。
日刊工業新聞2015年06月05日 1面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
菊池製作所はこの春から福島県南相馬の工場で本格的にロボット開発を始め、マッスルスーツやドローンなどのロボットの量産を始めた。どれも大学の研究成果を形にしたもので、菊池製作所がロボット実用化のインキュベーションセンターの役割を果たしている。もともと試作加工がメーンの同社が「ロボットを次の事業の柱にする」と言い始めた時は、事業の未来に懐疑的な人もいたが、有言実行で進めてきた成果がいよいよ大きく育ちそうだ。

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